会社設立にかかる費用ー株式会社と合同会社の違いを比較
会社を設立を検討しているなら、費用がどのくらい必要になるかを把握しておきたいことでしょう。また、会社の種類によって費用が変わってくるため、会社形態の選択も容易ではありません。
この記事では、主に会社設立を検討している方向けに、株式会社と合同会社の設立にかかかる費用についてご紹介します。
目次
会社の種類
日本の会社形態には、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4種類があります。会社設立を検討している方の多くは、この4種類のうち「株式会社」と「合同会社」のどちらを設立しようかと悩まれます。
会社と言えば、株式会社というイメージを持たれている方も多いことでしょう。一方、合同会社は、2006年5月にできた新しい会社形態です。(それまでは「有限会社」がありましたが、2006年5月に廃止されました。)
合同会社は、数多くのメリットがありますが、そのひとつが、(後述しますが)会社設立費用が株式会社よりも安いことです。そのため、近年、合同会社を設立する方が増えています。
では、株式会社と合同会社の設立にかかる費用を比較してみましょう。
株式会社設立にかかる費用
株式会社設立にかかる費用(法定費用)は、約210,000~250,000円です。その内訳は以下の通りです。
【紙の定款の場合】
・(公証人)認証手数料:50,000円
・謄本手数料:250円×枚数(ページ)
・収入印紙代:40,000円
・登録免許税:150,000円、もしくは資本金額の0.7%に相当する額の高いほう
【電子認証定款の場合】
・(公証人)認証手数料:50,000円
・謄本手数料:250円×枚数(ページ)
・収入印紙代:不要
・登録免許税:150,000円、もしくは資本金額の0.7%に相当する額の高いほう
【共通費用】
・実印作成代:約5,000円
・印鑑証明書代:1通450円×必要枚数
・登記簿謄本の証明書代:1通600円×必要枚数
合同会社設立にかかる費用
合同会社設立にかかる費用(法定費用)は、約約60,000~100,000円です。その内訳は以下の通りです。
【紙の定款の場合】
・(公証人)認証手数料:不要
・謄本手数料:不要
・収入印紙代:40,000円
・登録免許税:60,000円、もしくは資本金額の0.7%に相当する額の高いほう
【電子認証定款の場合】
・(公証人)認証手数料:不要
・謄本手数料:不要
・収入印紙代:不要
・登録免許税:60,000円、もしくは資本金額の0.7%に相当する額の高いほう
【紙・電子共通費用】
・実印作成代:約5,000円
・印鑑証明書代:450円×必要枚数
・登記簿謄本の証明書代:600円×必要枚数
会社設立にかかる費用について
会社印鑑作成にかかる費用
会社形態と会社名が決まったら、会社設立手続き(契約締結時や銀行口座開設時に必要)に向けて、会社用の印鑑を作成します。
会社印鑑の作成にかかる費用は、印鑑の素材によって異なります。印鑑を作成後、印鑑証明書も用意しておくことができるでしょう。印鑑証明書代は、1通あたり450円となっています。
定款にかかる費用
定款とは、会社を運営するための基本事項のことです。会社設立時に作成が求められています。定款は紙、もしくは電子で作成します。自分で作成することもできますし、代行作成してもらうことも可能です。
ただし、代行の場合は、代行業者に代行費用(別途)を支払う必要があります。相場は約5,000円程度です。なお、株式会社の場合は公証人の手数料が5万円、定款の謄本作成手数料がおよそ2,000円(1ページ250円×2冊)、収入印紙代が4万円かかります。
一方、合同会社は公証人の手数料、定款の作成手数料、収入印紙代は発生しません。
設立登記にかかる費用
会社を設立する場合、登録免許税がかかります。登録免許税は、株式会社は15万円、合同会社は6万円です。紙の場合は印紙代も必要となります。さらに、登記事項証明書を発行する際には1通あたり600円かかります。
資本金払込みにかかる費用
資本金振込にかかる費用は、法定費用ではありません。新会社法では、資本金の最低額が廃止され、株式会社は資本金1円から設立することが可能となりました。また、合同会社は0円で設立することができます。
とはいっても、資本金1円で会社を設立することは、現実的に難しいのが事実です。そのため、資本金を準備してから会社を設立するのが一般的です。
資本金の払込みは、利用する金融機関にもよりますが、約216~648円の振込手数料が発生します。払込証明書を作成する場合は、払込を証明するために通帳のコピーが必要となります。
会社設立の方法
自分で会社設立を進める場合
会社設立に必要な手続きをすべて自分で行うことが可能です。自分ですべて行うなら、費用の節約にもつながります。自分で会社を設立する場合、まず紙による申請か電子申請かを選択しなければいけません。
前述したように、紙による申請は、定款の収入印紙代40,000がかかります。一方、電子申請は不要です。なお、会社設立に関する手続きをオンライン申請する場合は、事前に準備が必要です。
それにはまず電子証明書、代表者のマイナンバーカードを取得する必要あります。またそれと同時に、ICカードリーダーライタの購入や、PDFファイルビューワー「Adobe Acrobat Reader 」をパソコンに導入する必要があります。
電子化の環境を整えるまでの事前準備が必要ですが、一度整えてしまえば、今後すべての手続きをオンラインで済ませることが可能となります。
会社設立代行業者に依頼する場合
会社設立に関する手続きを難しく感じるなら、会社設立代行業者に会社設立を依頼することができるでしょう。ただし、代行業費用が発生します。
利用する代行業者にもよりますが、株式会社の設立の相場は約20万円前後、合同会社設立の相場は6~7万円前後と言われています。会社設立代行業者に依頼する場合は、事前に費用を確認されることをおすすめします。
司法書士に依頼する場合
会社設立の手続きを司法書士に代行してもらうことも可能です。司法書士が電子定款認証に対応していれば、収入印紙代を節約することもできます。会社設立代行業者とちがい、会社設立に関する相談や手続きをすべて任せることができますが、費用もその分かかります。
会社設立にかかった費用に司法書士の報酬を費用として支払います。なお、司法書士の報酬は決まっていませんので、事前に確認するようにしましょう。
行政書士に依頼する場合
行政書士にも会社設立を依頼することは可能ですが、できる範囲が限られています。登記書類作成をすることはできません。事前に相談されることをおすすめします。
税理士に依頼する場合
税理士も行政書士同様、登記書類の作成はできません。ただし、設立登記後の税務関係の書類作成、会社設立後の経理面では、心強い味方となってくれます。
株式会社を選ぶメリットとデメリット
メリット①社会的信用度が高い
株式会社のメリットと言えば、社会的信用度が高いことです。融資を受けるときも有利になるでしょう。
メリット②広い範囲で資金調達ができる
社会的信用度が高いので、銀行からの融資はもちろん、株式や新株予約権などを発行して資金調達することも可能です。
メリット③株式上場が可能
株式会社であれば、将来、株式上場することができます。
では、株式会社を設立するデメリットもみてみましょう。
デメリット①設立費用が高い
前述したように、株式会社は合同会社よりも設立費用が高く設定されています。
デメリット②規定が多い
株式会社の場合、会社法で組織形態に関する法が定められています。組織や運営に関する規定が多いため、経営や運営に柔軟性がきかないこともあります。
デメリット③最終利益の配分は株数に応じて行わなければならない
株式会社では、最終利益の配分は持っている株数に応じて行われます。つまり、自由に配分することはできません。
合同会社を選ぶメリットとデメリット
メリット①設立時の費用が安い
合同会社は、株式会社よりも安い費用で設立することができます。
メリット②運営に自由がきく
株式会社は会社法で縛られていますが、合同会社の運営は株式会社よりも比較的自由に運営することができます。
メリット③出資者は出資額に関係なく議決権を持てる
合同会社の出資者は、出資額の金額に左右されず、議決権が当てられます。株式会社では重要事項を決める場合、総会で頭数の多数決できまりますが、合同会社は出資者が多数でなくても、重要事項も即決することが可能です。
メリット④最終利益の配分が自由
合同会社は、最終利益の配分を自由に決めることができます。
メリットの多い合同会社ですが、デメリットも考慮することは大切です。
デメリット①資金調達の範囲が狭い
株式会社と比較すると、株式や新株予約権などを発行することができないため、資金調達の幅が狭いと言えるでしょう。
デメリット②知名度・社会的信用度が低い
合同会社の設立が増えているとは言え、株式会社よりも知名度や社会的信用度がまだ低いのは事実です。
まとめ
会社設立にかかる費用についてみてきました。株式会社と合同会社の設立にかかる法定費用を比較すると、合同会社の方が低い費用で設立することが可能です。また、紙による申請と電子申請では、収入印紙代の有無が関係するため、電子申請の方が節約につながります。
いずれにせよ、会社設立には、費用はもちろん、手間や時間もかかります。自分で会社設立手続きを進めることもできますが、トータル的にみると手続きを依頼した方が手間と時間を大幅に省くことができ、他のことを行える時間が持てるなどメリットもあります。
会社設立を検討しているなら、会社形態はもちろん、会社設立の方法も考慮されることをおすすめします。
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