未収入金とは?売掛金・未収金・未収収益との違いと具体的な仕訳例 | 税理士コンシェルジュ

税理士事務所 口コミ 紹介実績

未収入金とは?売掛金・未収金・未収収益との違いと具体的な仕訳例

2020年8月26日
-

みなさんは、未収入金・未収金・未収収益・売掛金それぞれの違いをきちんと説明できますか?未収入金・未収金・未収収益・売掛金はすべて「資産」という共通点がありますが、それぞれの違いを理解しておくことは大切です。今回はこれらの違いや仕訳方法などについて分かりやすく解説していきます。

未収入金(未収金)・未収収益・売掛金とは?

「未収入金(未収金)」「未収収益」「売掛金」は、いずれも将来的に金銭を受け取る権利のある「金銭債権」という共通点があります。また、貸借対照表では、「資産」の部に計上される勘定科目である、という点でも共通しています。では、それぞれにはどのような違いがあるのでしょうか?

未収入金(未収金)とは?

未収入金(未収金)とは、企業の主たる営業取引以外の取引で発生する金銭債権で、その代金を後から受け取るときに使う勘定科目です。つまり、商品や製品以外の保有資産などを売却したときに、将来、現預金での回収する見込みのあるもののことです。

未収金を使う具体的な例には、車両や機械などの固定資産や、保有している有価証券を売却した場合などが挙げられます。ただし、未収入金と計上するためには、決算期後、1年以内に回収予定のあるものだけ計上できます。

なお、未収入金は、未収金とも言われており、双方は同じ意味を指しますが、財務諸表における正式な名称は「未収入金」です。ちなみに、本業の売上となる商品や製品の代金を受け取る場合は、「売掛金」勘定科目で会計処理をします。

未収収益とは?

未収収益も未収入金同様、企業の主たる営業取引以外の取引で発生する金銭債権のことです。未収収益は、継続してサービスを提供する場合、その代金を後から受け取るときの勘定科目として使われています。

未収収益を使う具体的な例には、金銭を貸し付けたときの利息を後払いで受け取るときや、不動産の貸し付けたときの家賃を後払いで受け取るときなどが挙げられます。企業の多くは、未収収益を使用せずに未収入金(未収金)で会計処理している傾向にありますが、企業会計原則上では、両者を区別するよう定めています。

売掛金とは?

売掛金も未収入金・未収収益同様、企業の主たる営業取引から発生する金銭債権のことです。ただし、売掛金には時効があり、サービスの内容によって期間が異なります。定められている時効の間に、現預金での回収が見込まれるものが売掛金に該当します。

なお、宿泊費や飲食費などの売掛金は1年、商品や製品の販売したときは2年、建築代金は3年、という時効が設定されています。売掛金の具体的な例には、商品を売却したときや、メンテナンスなど継続的なサービスを提供したときなどが挙げられます。

未収入金(未収金)と未収収益の違いとは?

「未収入金(未収金)」と「未収収益」は、言葉がよく似ていますが、その意味は大きく異なっています。未収金は、商品や製品などのモノを引き渡した時点で代金を受け取ることが確定します。それぞれを単発の取引として考えます。そのため、取引をした時点が、計上時期となります。

一方、未収収益は、継続してサービスを提供したりする場合に使用する勘定科目です。そのため、時の経過とともに、収益も比例して上がっていきます。したがって、未収収益は、決算日など一定の計上時期に、その期間分の金額を計算しなければいけません。

このように「未収入金(未収金)」は、商品や製品などのモノを引き渡しサービスを提供した時点で取引が終了しているのに対し、「未収収益」は、取引が途中経過の状態であるため、収益を見越して計上するもの、という違いがあります。

未収入金(未収金)・未収収益・売掛金の3つの違いとは?

前述したように、未収入金(未収金)・未収収益・売掛金は、貸借対照表の資産の部に計上され、将来回収見込みのある金銭債権であるという共通点がありますが、会計処理をする上では大きな違いがあります。では、3つの違いについてみていきましょう。

相違点①勘定科目が使われる取引の性質の違い

未収入金(未収金)・未収収益・売掛金の三者の違いのひとつとして、それぞれの勘定科目が使われる取引の性質が違うことが挙げられます。主たる営業取引、もしくは主たる営業取引以外の取引、のどちらに該当し、どのような取引内容かによって見極めていきます。

・主たる営業取引
商品や製品などのモノの売買取引の場合:売掛金
継続してサービスを提供する場合:売掛金

・主たる営業取引以外の取引
商品や製品などのモノの売買取引の場合:未収入金(未収金)
継続してサービスを提供する場合:未収収益

相違点②貸借対照表上の表記の違い

前述したように、未収入金(未収金)・未収収益・売掛金の三者とも貸借対照表の左側の借方に表示される「資産」の部に計上される勘定科目です。そもそも資産とは、企業が保有している財産や、利益を得るために利用できる権利などのことです。

企業は資産を利用して儲け、つまり利益を上げます。貸借対照表上の資産の部は、「流動資産」「固定資産」「繰延資産」の3種類に分類されています。それぞれは次のような特徴があります。

【流動資産】
流動資産とは、通常、1年以内に現金や費用などへ換金できる資産のことです。販売のために1年を超える期間を要する商品だとしても、流動資産に該当するものがあります。

流動資産には、現金や銀行預金などの「現金預金」、売上代金のうちまだ現金預金として回収しておらず、現金預金を受け取る権利のある「売上債権」、売買するための「棚卸資産」などがあります。

前述したように、未収入金(未収金)・未収収益・売掛金は、流動資産の「売上債権」に該当します。

【固定資産】
固定資産は、通常の営業取引の過程で生じた資産ではなく、1年以上継続的に保有される資産や、商品を販売するために1年を超えて利用される資産などが該当します。つまり、1年以内に換金することを想定していない資産のことです。

なお、固定資産は、土地や建物など物理的に存在している「有形固定資産」、商品券や特許権など物理的に存在していない「無形固定資産」、資金運用のための定期預金や長期保有の有価証券などの「投資その他の資産」の3種類に分類されています。

【繰延資産】
繰延資産とは、支出時に一括で費用をすべきものを貸借対照表へ計上したものです。これには利用することも販売することもない特別な資産が該当します。具体的には、株の発行に関わる「株式交付費」、社債の発行に関わる「社債発行費」、会社の設立に関わる「創立費」などが挙げられます。

では、未収入金(未収金)・未収収益・売掛金の三者は、どの資産に属するのでしょうか?

・未収入金(未収金)
未収入金(未収金)は、資産の部の「流動資産」と「固定資産」に表示されます。どちらに表示されるかは、期間が関係しています。

具体的には、入金期限が貸借対照表の日付の翌日から1年以内に受け取る未収入金の場合は「流動資産」に表示します。しかし、回収が1年を超える場合は「長期未収入金」として「固定資産」の「投資その他資産」に表示します。

・未収収益
未収収益は、資産の部の「流動資産」に表示されます。「未収収益」もしくは「その他流動資産」で計上します。

・売掛金
売掛金は、資産の部の「流動資産」に表示されます。1年を超える長期滞留債権があったとしても、流動資産に表示します。

相違点③相手勘定の違い

損益計算書では、営業利益に営業外損益を加減算して経常利益を計算しなければいけません。企業の主たる営業取引以外の取引で発生する未収入金(未収金)と未収収益は、損益計算上では営業外損益に計上します。つまり、相手勘定が異なる、ということです。

・未収入金(未収金)の場合
相手勘定科目:資産+営業外損益(売却損益)
なお、売却する資産は流動資産と固定資産があり、売却益もしくは売却損失が発生する。

・未収収益の場合
相手勘定科目:営業外損益(受取利息などで発生する利益)

・売掛金の場合
相手勘定科目:売上高

未収入金(未収金)の決算処理で注意したい3つこと!

未収入金(未収金)は、将来、現金預金として回収する予定の売上債権です。売却したものによっては、大きな金額になることもあるため、決算処理をする際には、注意が必要です。ここでは、未収入金(未収金)を決算処理する際、注意すべきいくつかの点をみていきましょう。

注意点①会計処理は発生主義で行うこと

発生主義とは、現金預金の支出もしくは支払いに関係なく、支出もしくは収入の必要性が発生したときに計上する会計処理のことです。通常、売掛金に関しては、発生主義による収益認識や債権管理を行うのが一般的です。実際、多くの企業では、販売管理システムなどを活用し、発生主義管理を行っています。

しかし、未収入金(未収金)に関しては、売掛金同様、売上債権にもかかわらず、収益を現金などの入金時に計上し、費用を現金預金の出金時に計上する現金主義で会計処理をしている企業もいます。決算時には、売却先への納品書や請求書などを精査しなければいけません。

しかし、現金主義で会計処理をすると、資産の売買に伴う売却損益や売却先への債権残高を把握することが難しくなります。ですから、未収入金に関しても、売掛金のように発生主義による会計処理を行う必要があります。

注意点②経過勘定処理をすること

企業の中には、未収収益を未収入金(未収金)として管理しているところもあります。しかし、未収収益は「経過勘定」のひとつです。したがって、未収収益を未収入金(未収金)として管理している場合は、決算時に経過勘定の会計処理が必要です。では、経過勘定とどのような会計処理のことでしょうか?

【経過勘定】
経過勘定とは、すでにサービスの提供を受けたり、それとは逆ですでにサービスの提供を行ったりしたものに対し、お金のやり取りがされていないときに行う会計処理です。当期損益を正確に計上するために、「損益の見越し」と「損益の繰り延べ」という勘定科目で、貸借対照表へ表示します。

未収収益の場合は、「収益の見越し」として表示させます。なお、見越しとは、当期の収益や費用を、次期以降にお金を受け取る、もしくはお金を支払うため、収益や費用に計上していないときに、当期の収益や費用にすることを意味します。

注意点③回収予定経過残高状況を確認すること

未収入金(未収金)の残高の管理をすることは、とても大切です。確認する際には、回収予定を過ぎた未収入金(未収金)がないか、を決算期にしっかりチェックする必要があります。

特に取引先相手の資金事情により、お金の支払いが遅れている場合は注意が必要です。回収予定金額をすべて回収できるかどうか、相手先の資金繰り状態も確認するようにしましょう。もし予定通り回収することができないようであれば、貸倒引当金の計上を検討する必要がでてきます。

未収入金(未収金)・未収収益・売掛金の仕訳方法

では、未収入金(未収金)・未収収益・売掛金の実際の仕訳例についてみていきましょう。

商品以外のものを売却した場合

例:不要になったパソコンを30,000円で売却し、後日、代金を受け取ることになっている
(借方)未収入金(未収金)30,000円   (貸方)雑収入 30,000円

本業でない商品以外のものを売却したり、サービスを提供した場合は、後日、大金を受け取るため「未収入金(未収金)」という資産が増えたと考えます。そのため、借方に未収入金(未収金)で処理します。そして、貸方には、思いがけずに得た手数料なので「雑収入」と記載します。

未収入金(未収金)を受け取った場合

例:パソコンを売却した代金が、後日、振り込まれた。
(借方)現金 30,000円  (貸方)未収入金(未収金) 30,000円

代金を受け取ったときは、「未収入金(未収金)」という資産が減少するので、借方に未収入金(未収金)を記載します。これにより、帳簿上の未収入金(未収金)は、残高がゼロになります。

法人が固定資産(車両)を売却した場合

例:法人が営業用の車両を500,000で売却した。そのときの車両の帳簿残高は300,000円だった。
(借方)未収入金(未収金)500,000円  (貸方)車両運搬具 300,000円、固定資産売却 200,000円

法人の場合は、車両の売買による損益は、損益計算上にそのまま表示されます。したがって、売却金額である500,000円は未収入金(未収金)として処理します。そして、貸方は、車両の帳簿残高の金額300,000を車両運搬具として計上し、差額の200,000円の儲けを固定資産売却として処理します。

個人事業主が固定資産(車両)を売却した場合

例:個人事業主が営業用の車両を500,000で売却した。そのときの車両の帳簿残高は300,000円だった。
(借方)未収入金(未収金)500,000円  (貸方)車両運搬具 300,000円、事業主借 200,000円

個人事業主の場合は、法人とは違い、事業で使用していた車両の売買による損益は、事業所得には組み込みません。総合譲渡所得として所得を計算し、所得税を計算する際には、事業所得などと合算します。

売却金額の500,000円は、借方に未収入金(未収金)として計上します。貸方には、車両の帳簿残高として残っている300,000円と、差額の200,000の儲けを事業主借として計上します。事業主借として計上することで、事業所得の計算に含めないことがポイントです。

なお、事業主借とは、プライベートのお金を事業用として使う場合や、事業所得と関係ないものとして区分する場合などに使われます。

法人が役員に貸し付けをし、利息をつけて返済してもらう場合

例1:法人が役員に1,000,000円を年利3%で貸し付けをし、半年後に利息と合わせて返済してもらう予定。
(借方)貸付金 1,000,000円  (貸方)普通預金 1,000,000円

お金を貸し付けた時点では、貸付金で処理するだけです。なお、個人事業主の場合は、事業としての貸し付けでなければ、貸付金の利息は雑所得になるため、貸付金ではなく「事業主貸」という勘定科目を使って仕訳処理をします。

例2:例1の貸付金が決算日を迎え、利息の計算期間が3ヶ月経過した。
(借方)未収収益 7,500円  (貸方)受取利息 7,500円

前述したように、利息のように継続期間中に収益が増えていくものは、「経過勘定」処理をする必要があります。期間計算をし、累計計算をして未収収益、もしくは未収利息として計上します。

なお、未収収益は、月割り計算で求めます。例2の場合は、貸付金1,000,000円×利率3%÷12ヶ月×経過3ヶ月=未収収益7,500円、となります。

当期の収益や費用を時期に見越した場合

例1:1月1日から貸している家賃(1カ月10万円)の半年分(60万円)を6月末・12月末の2回に分けて回収する。なお、決算日は3月31日。

・決算時3月31日の仕訳
(借方)未収収益 300,000円 (貸方)営業外利益(受取家賃) 300,000円

当期の1月から決算時3月31日まで、つまり3月分までの3ヶ月分の家賃を当期の収益として計上します。貸借対照表上では、資産の部の未収収益として表示します。

・翌期首(4月1日)の仕訳
(借方)営業外利益(受取家賃) 30,000円 (貸方) 未収収益 30,000円

翌期首4月1日になったら、「再振替仕訳」をする必要があります。

【再振替仕訳】
再振替仕訳とは、決算後の翌期首に行う仕訳のことです。前期末の費用または収益の見越しの仕訳を、決算後、決算整理仕訳を取り消すために反対に仕分けます。

つまり、再振替仕訳をすることで、前期の収益として処理している分を減らすことができます。その結果、当期の収益と前期の収益を区別できるため、適正な期間損益計算が行えます。

・家賃入金日6月30日の仕訳
(借方)現預金 600,000円  (貸方)営業外利益(受取家賃) 60,000円

家賃が入金した時点で、6ヶ月分の収益を計上します。期首(4月1日)に再振替仕訳をしたので、当期の収益が正しく計上されます。

未収入金・未収収益・売掛金の違いを把握することが大切な理由

経営者や経理業務担当者であれば、未収入金(未収金)・未収収益・売掛金の違いをしっかり把握することはとても大切です。なぜでしょうか?銀行などの金融機関から融資を受ける場合、決算書や勘定科目内訳明細書を提出する必要があります。

その際、金融機関は、回収できていない債権を細かくチェックしています。前期と比較をし、同じ取引先相手と金額を計上しているなら、回収できていない債権、と判断されてしまいます。

また、未収入金に営業債権を計上していると、未収入金の金額が大きくなってしまい、決算書の評価が下がってしまう可能性があります。さらに未収入金の金額があまりにも多いと、不正会計の疑いをかけられてしまいます。

ですから、未収入金を営業債権に間違えて計上してしまうなどのミスが発生しないよう、未収入金(未収金)・未収収益・売掛金の3者の違いを理解し、きちんと管理することはとても重要と言えます。

個人事業主必見!未収入金と未収収益は必ず使い分けるべきか?

個人事業主の場合、未収入金(未収金)と未収収益は必ず使い分けたほうがよいのでしょうか?結論から述べるなら、両者は似ているようで異なるものですので、使い分けることが望ましいと言えます。

所得税の青色申告決算書には、すでにいくつかの勘定科目が記載されていますが、貸借対照表の資産の部には、未収入金も未収収益のどちらも記載されていません。そのため、空いている行へ記載する必要があるため、使い分けることができます。

また、前述したように、銀行などの金融機関で融資を受ける際に、未収入金と未収収益が一緒になっているとトラブルを招く可能性もあります。ですから、個人事業主だとしても、未収入金と未収収益を必ず使い分けるようにしましょう。

まとめ

未収入金(未収金)・未収収益・売掛金は、将来的にお金を回収する「金銭債権」という似たような性質をもっています。そのため、使い分けることなく会計処理をしてしまう企業もありますが、貸借対照表や損益計算書などの決算書類に大きな影響を与えます。

ですから、未収入金(未収金)・未収収益・売掛金の3者の違いをしっかり理解し、正しい会計処理をしていきましょう。


税理士コンシェルジュコラム

  • 税理士とは

    税理士にこれから相談をお考えの方のために、税理士という士業を知るための基本的な知識を解説しています。相談する時の注意点や相談料が分かります。

    続きを見る
  • 税理士を探す

    税理士をつけようと思った方のために、税理士を探す時に税理士選びで失敗しないためのポイントや、上手な付き合い方を解説しています。

    続きを見る
  • 税理士の報酬

    税理士の報酬について詳しく知りたい方のために、税理士の料金が決まる仕組みや相場を解説しています。費用の仕組みを把握することで、値下げの交渉や依頼業務の整理ができるようになります。

    続きを見る
  • 税理士の変更

    税理士の紹介や変更をお考えの方のために、税理士への不満や苦情の解決方法を解説しています。スムーズに紹介を受ける方法や変更をすることで無駄な時間とストレスを最小限に抑えることができます。

    続きを見る
コラム記事一覧を読む

新着・税理士無料相談

税理士相談の一覧を見る

新着・口コミ

    税理士口コミ検索

    税理士無料相談室

    親身になってくれる税理士に
    無料で相談できます。

    新規登録(無料)する 過去の相談一覧

    口コミを投稿する

    税理士を探している方の参考になる
    口コミをお寄せください。

    口コミを投稿する

    税理士の方へ

    サイトへの掲載・案件のご紹介に関しては、
    お気軽に問い合わせください。

    税理士の方へ

    厳選税理士紹介

    面談済み税理士1000名の中から、
    あなたにピッタリの厳選税理士を
    無料でご紹介するサービス

    税理士紹介サービスはこちら