給与支払報告書とは?対象者・書き方・提出方法を解説!
所得税の支払義務のある給与支払い事業者の経理関係者は、法人や個人事業主を問わず、「給与支払い報告書」を作成し、提出しなければいけません。この記事では、給与支払い報告書の基礎的な知識とその書き方や提出方法について解説していきます。
目次
給与支払報告書とは?
給与支払報告書とは、従業員一人ひとりの年間に金額を報告する「個人別明細書」と、それらを区分してまとめた「総括表」の2つで構成されている書類です。
個人別明細書について
個人別明細書は、所得税の源泉徴収票と同じ内容が書いてある書類です。給与を受ける人の氏名、住所、生年月日、給与の金額、保険料控除に金額などが記載されています。
源泉徴収票との違いは、提出先が税務署ではなくて市区町村であることです。また、使用用途が、住民税と国民健康保険の計算であることも異なっています。
個人明細書を作成するときの注意点
個人明細書を作成する際には、以下の点に注意しましょう。
1、16歳未満の扶養親族も記入すること
2、前々年に1,000枚以上の源泉徴収票を提出した場合は、電子申告で提出すること
3、住民税を普通徴収で支払う場合は、理由を明記すること
「普通徴収」が認められている理由
特別徴収とは、会社が給与を支払っている場合、役員や従業員の給与から税金を天引きし納付する納税方法のことです。一方、普通徴収とは、役員や従業員が直接自分で納税する方法のことです。なお、原則は特別徴収ですが、以下の理由に該当する場合は、普通徴収が認められています。(特別徴収と普通徴収については、詳しく後述します。)
・総従業員の数が2名以下である。
・他の事業所で特別徴収されている。
・給与の支払いが不定期である。
・給与が少ないので税額を天引きできない。
・個人事業主の元で働く事業先住者である。
・退職者、退職予定者、休職者のいずれかである。
なお、普通徴収をする場合は、前述したように、個人明細書に普通徴収をする理由を明記します。また、「普通徴収切替理由書兼仕切書」と呼ばれる書類を添付します。(以下からダウンロードできます。)
総括表について
総括表とは、事業所全体の個人別明細書をまとめるときの表紙になるものです。その市区町村に、その会社から何人の従業員や個人別明細書が提出されたのか、退職した人は何人いるか、住民税の特別徴収や普通徴収など内訳が記載されています。
給与支払報告書と源泉徴収票の違いとは?
給与支払報告書と源泉徴収票は、基本的に同じ内容が記載されていますが、源泉徴収票は所得税のための書類、給与支払報告書は住民税のための書類、という用途の違いがあります。税務署などで用意されている源泉徴収票の用紙には、複写式になっているものがあり、給与支払報告書も同時に作成することが可能となっています。
書類に書かれている記載事項はほぼ同じですが、使用される用途の税金の種類が異なるので、書類の提出先も異なってきます。源泉徴収票は、国税である所得税に関する書類なので、給与等の支払いを受ける本人に交付することが義務付けられています。所得税は、源泉徴収や確定申告などを通して納めます。
もし所得控除に該当しているなら、納税者本人は、確定申告が必要な際に源泉徴収票を確定申告書類と一緒に税務署へ提出する必要があります。また、人によっては役職や受給額に応じて、源泉徴収票を法定調書として税務署へ提出するケースもあります。このような理由から、源泉徴収票は、給与支払いなどを受ける本人に交付されます。
一方、給与支払報告書は、地方税である住民税に関する書類です。住民税は行政側が税額を決定し、通知するという賦課課税という方式により課税されるので、事業主が支払い報告書を提出することになっています。
給与支払報告書の提出対象者とは?
給与支払者である事業主は、前年中に給与の支払いをしたすべての従業員について、翌年の1月31日までに市区町村へ、給与支払報告書を提出することが義務付けられています。すべての従業員とは、役員や正社員、パート、アルバイトなどの雇用形態を問いません。つまり、1回でも給与をもらった人は、対象者となります。
また、年の途中で退職した人も該当します。なお、前年中に退職した人の場合、前年中の給与支払いの総額が30万円を超えているなら提出することが義務付けられていますが、30万円以下だとしても適切な課税をするため給与支払報告書を提出するよう市区町村から求められています。
給与支払報告書の書き方について
給与支払報告書の個人別明細書は源泉徴収票と同じ書き方なので、ここでは総括表の書き方について解説していきます。
総括表は、市区町村ごとに独自の様式を採用しています。しかし、記載する内容は基本的には同じです。総括表には、次のような記載事項が設けられています。
・「給与支払者の個人番号又は法人番号」
総括表の一番上の欄は、給与支払者が個人事業主の場合は個人番号(マイナンバー)、法人の場合は法人番号を記入します。
・「給与支払者の氏名又は名称」
給与支払者の氏名、もしくは事業所の名称を記載します。
・「所得税の源泉徴収をしている事業所又は事業の名称」
所得税を源泉徴収している事業所などの名称を記載します。
・「受給者総人員」
翌年1月1日現在に在籍している総人数を記入します。どの市区町村に問わずすべての数を記載します。
・「報告人員」
その市区町村に対して提出する個人別明細書が、何名分あるかを記入します。この人数には、中途退職者の数も一緒に含めてください。
・「報告人員のうち退職者人員」
その市区町村に対して提出する個人別明細書のうち、退職者分が何名分あるかを記入します。
・「所属税務署名」
給与支払者の事務所を管轄している税務署を記載します。もし給与支払報告書の内容に間違いがあった場合には、市区町村から税務署へ連絡はいき、源泉所得税の修正などが行われます。
給与支払報告書の提出期限
上記でも触れましたが、給与支払報告書は1月31日までに、市区町村へ提出する必要があります。31日が土日祝日と重なる場合は、次の平日までとなります。
年末調整がスケジュール通りに終了しているなら、給与支払報告書を提出期限までに提出することは、それほど大きな負担とはならないでしょう。しかし、もし再年末調整が発生してしまった場合は、1月の事務作業は忙しくなることが予想されますので注意が必要です。
提出期限に遅れてしまうとどうなる?
では、給与支払報告書の提出が遅れてしまうとどうなるのでしょうか?本来は1年分の住民税を12ヶ月分に分割して納付することになっています。しかし、提出期限が遅れてしまった場合は、12ヶ月ではなく、遅れた期間に応じて11ヶ月や10ヶ月・・など分割回数が減ってしまいます。
そのため、1ヶ月当たりの住民税の金額が高くなります。特にペナルティはありませんが、従業員の負担が増えてしまうので、提出期限内に間に合わせるようにしましょう。
「普通徴収」と「特別徴収」について
個人住民税の納付方法には、普通徴収と特別徴収の2通りの方法があります。普通徴収とは、その年度の個人住民税を市区町村が本人へ直接通知します。その後、納税者本人は、納付書や口座振替などで6月・8月・10月・翌年1月の年4回に分けて納付します。
一方、特別徴収とは、その年度の個人住民税を市区町村が本人の勤め先や年金支払者を経由して通知します。個人住民税は、毎月の給与や年金の支給金額から源泉徴収、つまり、天引きする形で納税することになります。給与所得者の場合は6月から翌年5月までの12回、年金受給者の場合は4月から2か月ごとに6回に分割して納付します。
原則として、給与支払者は特別徴収義務者、従業員などは特別徴収となっていますが、一定の基準に該当している場合は普通徴収となります。
まとめ
給与支払報告書は、法令で義務付けられている提出書類で、従業員一人ひとりの年間に金額を報告する「個人別明細書」と、それらを区分してまとめた「総括表」の2つで構成されています。
経理担当者の方にとっては、年末調整に続き、年明けからも給与支払報告書の作成業務で忙しくなりますが、翌年の1月31日の提出期限までに書類を提出するようにしましょう。また、総括表の基本的な内容は同じですが、各市町村によって様式が若干異なっていますので、間違えないよう慎重に作成していきましょう。
給与支払報告書など書類作成を負担に感じている方は、会計ソフトを活用したり、信頼できる税理士に相談することなどもひとつの方法ですので検討してみることができるかもしれません。
なお、税理士コンシェルジュの税理士紹介サービス税理士紹介公式サイト-顧客満足NO.1【税理士コンシェルジュ】では、無料で税理士をご紹介していますのでお気軽にご相談ください。
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