基礎控除と青色申告 | 2つの法改正と変更点を詳しく解説!【最新】
税制改正により、令和2年分(2020年分)の確定申告から、「基礎控除額」と「青色申告特別控除額」が変わりました。本記事では、基礎控除の基本的な考え方、法改正の変更点などについて詳しく解説していきます。
目次
所得控除とは?
基礎控除を知るには、まず「所得控除」について理解しておきましょう。所得控除の「所得税」「控除」とは何でしょうか?「所得税」は、1月1日〜12月31日までの1年間に得た「利益」に課せられる税金のことです。
利益とは、簡単に言うなら「儲け」と言えるでしょう。つまり、収入ではなく「所得」のことです。なお、所得には給与所得を始めとし、不動産所得、事業所得などさまざまな種類の所得があります。
一般的な会社員であれば、給与所得から毎月所得税が源泉徴収、つまり天引きされていますが、あくまでも概算の税額です。そのため、年末調整で税額が調整されますが、必要な場合は確定申告をする必要があります。
一方、「控除」とは、金銭などを差し引く、という意味があります。よって「所得控除」とは、所得税から一定の金額を差し引くことです。個人的事情などを配慮し、課税の公平性を図ることを目的としています。
なお、控除にはさまざまな種類があり、その中のひとつが、これから説明する「基礎控除」です。では、基礎控除について詳しくみていきましょう。
基礎控除とは?
基礎控除とは、確定申告や年末調整において所得税額の計算をする場合に、総所得金額などから一定の金額を差し引くことです。全部で14種類ある所得控除のひとつです。なお、14種類ある所得控除は、原則として、納税者本人の事情によって適用の有無、控除額が変わってきます。
令和元年分以前の基礎控除額は、納税者本人の合計所得金額に関わらず、一律38万円が適用されてました。しかし、令和2年分(2020年分)から基礎控除額に変更が加えられました。
基礎控除の改正点
2018年度の税制改正により、令和2年分(2020年分)から基礎控除額が変更されました。変更点は以下の通りです。
・従来の一律38万円から48万円(所得が2,400万円以下の場合)へ引き上げ。
・住民税の基礎控除の額も33万円から43万円(所得が2,400万円以下の場合)へ引き上げ。
改正後、大半の方が、48万円の基礎控除が適用されることになります。しかし、年間所得が2,400万円超の場合は、所得税と住民税の基礎控除が段階的に引き下がります。所得が2,500万円を超えると0円になります。
納税者本人の所得金額と基礎控除額をまとめると、以下のようになります。
・所得金額が2,400万円以下の場合
基礎控除48万円
・所得金額が2,400万円超〜2,450万円以下の場合
基礎控除32万円
・所得金額が2,450超〜2,500万円以下の場合
基礎控除16万円
・所得金額が2,500万円超の場合
基礎控除0円
基礎控除額の変更の要約
大半の人の基礎控除額が増額
従来の基礎控除額は、全ての人に一律38万円が適用されていました。しかし、法改正により、大半の人は基礎控除額が10万円増額され48万円になります。
高所得者の基礎控除額は段階的に減額
年間合計所得金額が2,400万円を超える高所得者にとっては、法改正により、段階的に基礎控除額が引き下げられます。
個人事業主にとっては減税
控除額が増えると、課税所得が減少します。よって、個人事業主やフリーランス、自営業など個人で仕事をしている場合は、税金が少なくなります。
新設「所得金額調整控除」とは?
基礎控除額の変更により、令和2年度分(2020年分)から「所得金額調整控除」が新設されました。この制度は、給与所得控除額の改正と大きく関係しています。前述したように、基礎控除の改正で、合計所得2,400万円以下の人は控除額が10万円増えました。
しかし、上限額が設定されている給与所得控除は、2020年以降から、合計所得850万円超の人の上限額は、従来の220万円から195万円に引き下がりました。これにより、年収850万円超の人にとっては、今回の改正は大きな負担となります。よって、一定の要件を満たしている場合は、「所得金額調整控除」が適用されます。
なお、所得金額調整控除には、2種類あります。ここでの「所得金額調整控除」とは、「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」のことです。もう1種類の「所得金額調整控除」は、「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」と言います。
所得金額調整控除の適用条件
「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」の対象者は、以下の条件を満たしている人に適用されます。
・その年分の給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等に係る雑所得の金額がある給与所得者で、その合計額が10万円を超える人
一方、「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」の対象者は、以下の条件を満たしている人に適用されます。
・納税者本人が特別障害者に該当する人
・特別障害者である同一生計配偶者(婚姻届を出している)がいる人
・特別障害者である扶養親族がいる人
・年齢23歳未満の扶養親族がいる人
なお、特別障害者とは、以下のいずれかに該当する人のことです。
・精神保健指定医などから、重度の知的障害と判定された人
・精神障害者保健福祉手帳を交付されている人で、障害等級が1級の人
・身体障害者手帳を交付されている人で、障害等級が1級もしくは2級の人
・常に就床し、介護を要する人 など。
所得金額調整控除の確定申告の記載方法
「所得金額調整控除」は、令和2年分から新たに新設された控除です。よって、令和2年分の確定申告書第1表の「収入金額等」の項目に「給与」いう新たな「区分」が創設されました。
「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」に該当する場合は「1」「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」に該当する場合は「2」、両方に該当する場合は「3」と記入します。そして、所得金額調整控除後の金額を記載します。
青色申告特別控除の変更点
「青色申告特別控除」とは、確定申告で青色申告をする人に適用される控除です。2019年分までの青色申告特別控除学は65万円でしたが、税制改正により、55万円へと引き下がりました。
改正後は青色申告特別控除が55万円になりますが、「e-Taxによる電子申告」「電子帳簿保存」を行うなら、引き続き65万円の青色申告特別控除が適用されます。
65万円の青色申告特別控除を受けるための要件
65万円の青色申告特別控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
・正規の簿記の原則で記帳(複式簿記)
・申告書に貸借対照表と損益計算書などを添付
・期限内に申告
・e-Taxによる電子申告
・電子帳簿保存
前述したように、「e-Taxによる電子申告」と「電子帳簿保存」が新たな要件として追加されました。
e-Taxによる電子申告とは?
e-Tax とは、申告などの国税に関する各種手続きについて、インターネットを利用したオンライン上で電子的な手続きを行うシステムのことです。税務署にわざわざ赴くことなく、インターネット環境の下であれば、自宅や事務所など場所や時間を選ばず自由に各種手続きが行えます。(税金の納付も可能。)
改正後、65万円の青色申告特別控除を受けるためには、パソコンなどのデバイスでe-Taxを利用し、「確定申告書」「青色申告決算書」などのデータを提出(送信)する必要があります。なお、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で「確定申告書」「青色申告決算書」などのデータを作成し、e-Tax で提出(送信)することも可能です。
e-Taxによる電子申告は事前準備が必要!
e-Taxによる電子申告をするには、事前の準備が必要です。以下の4つを準備しましょう。
・パソコン
必要書類の内容を入力し、データーを送信するためにはパソコンが必要です。
なお、パソコンの利用するには、「ルート証明書」が必要です。
参照:国税庁e-Tax「平成26年1月6日以降、e-Taxを利用する場合は、新たなルート証明書の追加インストールが必要です」
・インターネット利用環境
電子申告ですので、オンライン上での手続きです。よって、インターネット環境を整える必要があります。
・マイナンバーカード及び住民基本台帳カード
e-Taxによる電子申告を利用する場合、送信の際に本人確認を行います。その際、マイナンバーカードや住民基本台帳カードが必要となります。
・ICカードリーダーライタ
マイナンバーカードや住民基本台帳カードで本人確認をする際、それらに対応したICカードリーダーライタが必要です。家電量販店やインターネット通販などで、およそ3,000円程度で販売しています。ご利用のパソコンに対応しているかご確認の上、購入しましょう。
電子帳簿保存とは?
電子帳簿保存とは、会計帳簿やその根拠となる証憑類を電子データで保存することです。つまり、従来の紙媒体ではなく、電磁記録としての保存です。
帳簿を電子データで保存するには、帳簿の備付けを開始する日の3ヶ月前までに「国税関係帳簿の電磁的記録による保存等の承認申請書」を管轄地区の税務署に提出する必要があります。
参照:国税庁「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請」
基礎控除の他に受けられる所得控除
所得税の確定申告では、基礎控除以外にも受けられる控除があります。では、確定申告で受けられる所得控除の概要をみてみましょう。
・医療費控除
医療費控除は、病気や怪我などによる担税力の低下を考慮した控除。一定の金額以上の医療費を支払った場合に控除が適用される。
・雑損控除
雑損控除も医療費控除同様、担税力の低下を考慮した控除。自然災害や盗難、横領などで、住居や家財、現金など生活用資産の災害に遭った場合に適用される。
・社会保険料控除
健康保険など社会保険料を支払った場合に考慮される控除。
・生命保険料控除
生命保険料や個人年金などを支払った場合に考慮される控除。
・地震保険料控除
地震保険料を支払った場合に考慮される控除。
・扶養控除
最低生活保障を目的とした控除。その年の12月31日現在、16歳以上の扶養親族がいる場合に受けられる。
・配偶者控除
民法の規定による配偶者の所得が38万円以下の場合に適用される控除。
・配偶者特別控除
納税者本人の所得が1,000万円以下で、民法の規定による配偶者の所得が38万越〜76万円未満の場合に適用される控除。
・ひとり親控除
ひとり親家庭に適用される控除。従来の「寡婦(夫)控除」に相当するもの。
・小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等や確定拠出年金の掛金を支払った場合に適用される控除。
・障害者控除
個人の事情を考慮した所得控除。
・勤労学生控除
納税者本人が勤労学生で、所得が65万円以下の場合に適用される控除。
・寄付金控除
国や地方公共団体、特定公益増進法人などに寄付をした場合に適用される控除。ふるさと納税も寄付金控除の対象となる。
これらの控除を受けるなら、税金が安くなります。なので、該当する控除があるなら、確定申告をしましょう。ただし、各種控除には要件がありますので、事前に確認されることをおすすめします。
さらに詳しい内容を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
「確定申告で受けられる14種類の所得控除まとめ〜物的控除と人的控除〜」
まとめ
「基礎控除」とは、14種類ある所得控除のひとつです。法改正前の基礎控除額は、すべての人に一律38万円が適用されていました。法改正後の令和2年分(2020年分)からは、基礎控除額が一律10万円引き上げとなり、48万円が適用されます。ただし、合計所得金額が2,500万円以上の高所得者には、基礎控除額が適用されません。
さらに、青色申告特別控除65万円を受けるためには、「e-Taxによる電子申告」と「電子帳保存」が新たな要件に追加されました。
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