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賞与(ボーナス)に対する賞与所得税とは?基礎知識や計算方法を詳しく解説

2021年8月5日
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賞与所得税

毎月の給与と同じようにボーナス、つまり、賞与にも所得税が課されます。しかし、賞与所得税の場合、給与のときとは異なる計算方法で所得税を算出しなければいけません。総務や経理担当者であれば、これらの計算方法を理解しておくことは大切です。

また、賞与を支給した後は、賞与に関する書類の作成や納付などの事務手続きなどの作業の流れを把握しておく必要があります。この記事では、賞与所得税の基礎知識や計算方法、それに伴う事務手続きなどについて詳しく解説していきます。

賞与とは?

賞与とは、毎月の給与とは別に支払われる給与等のことで、賞与、ボーナス、夏季手当、年末手当、期末手当などの名目で支給される臨時の支給金が該当します。通常、多くの企業では正社員の月給の倍以上を賞与として支給しますが、会社の業績によって減額されるケースもあります。

賞与は、会社側には支払の法的義務はありません。会社の賃金規定に基づいて支払われる給与の一種として扱われるため、所得税の課税対象となります。なお、支給回数が年4回以上の場合は、賞与ではなく、給与と同じ扱いになります。

給与等が賞与の性質を有しているのかどうか分からない場合は、国税庁ホームページによると、次のようなものは賞与に該当するものとみなされます。

1、純益を基準として支給されること
2、あらかじめ支給額または支給基準を定めないこと
3、あらかじめ支給期を定めないこと。ただし、雇用契約そのものが臨時のものは除く
4、法人税法第34条第1項第2号「事前確定届出給与」に規定する給与であること(他に定期の給与を受けていない者に対して継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づいて支給されるものは対象外)
5、法人税法第34号第1項第3号に規定する業績連動給与であること

賞与に関して定められているルール

賞与に関しては、次のような法律上のルールが設けられています。

1、社会保険
社会保険上では、賞与は年に3回までと限定されています。したがって、4回以上になると、給与と同じ扱いをすることになります。

2、雇用保険
雇用保険上では、給与と賞与は区別されていません。労働の対価として支払われた賃金であるか、というのみで判断されます。したがって、給与も賞与も計算方法は同じです。

3、所得税
給与と賞与では、所得税の計算方法が異なります。

4、欠勤控除など
賞与でも欠勤や遅刻、早退、休業などの不就労控除を適用する企業もありますが、その場合はあらかじめ対象となる計算期間や計算方法などを規定しておく必要があります。

賞与に対する所得税の概要

賞与から源泉徴収する所得税、及び復興特別所得税は、毎月の給与から源泉徴収する計算方法とは異なります。「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に基づいて計算します。

前月の給与(社会保険料などを控除した後の額)と、扶養親族等(源泉控除対象配偶者及び控除対象扶養親族)によって、所得税率が決められています。所得税の税率は基本、前月の社会保険料が多い、つまり給与が多いほど税率が高くなり、扶養家族が多ければ多いほど税率が低くなります。

賞与に対する所得税率には、復興特別所得税も含まれており、その税率は所得税の2.1%となっています。なお、賞与から源泉徴収されるのは所得税及び復興特別所得税だけでなく、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料)も対象となっています。

税額表の使い方について

従業員に給与や賞与などを支払うときに源泉徴収する所得税と復興特別所得税の金額は、「賞与に対する源泉徴収額の算出率の表(税額表)」と「給与所得の源泉徴収税額表(月額表・日額表)」を使います。前述したように、「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出の有無に応じて使用します。

「月額表」を利用する場合

月額表を利用するのは、次のような給与を支給する場合です。
1、月ごとに支払う場合
2、半月ごと、10日(旬)ごとに支払う場合
3、月の税数倍の期間ごとに支払う場合
などが該当します。

「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与については「甲」の欄を、その他の人に支払う給与については「乙」の欄を使って税額を求めます。

「日額表」を利用する場合

日額表を利用するのは、次のような給与を支給する場合です。
1、毎日支払う場合(日雇賃金を除く)
2、週ごとに支払う場合(日雇賃金を除く)
3、日割りで支払う場合(日雇賃金を除く)
4、日雇賃金の場合

1~3に該当する場合は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与については「甲」の欄を、その他の人に支払う給与については「乙」の欄を、の日雇賃金については「丙」の欄を使って税額を求めます。

「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を利用する場合

賞与に対する源泉徴収を計算する際に、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表を使用します。ただし、特例として前月中の給与の金額の10倍を超える場合や前月中に給与の支払いがない場合には、「月額表」を使って計算します。

では、これらの点を踏まえて、賞与に対する源泉徴収の計算方法についてみていきましょう。

賞与所得税の計算方法について

賞与の源泉徴収額の通常な場合と特殊な場合は、計算方法が若干異なっています。なお、賞与所得を計算する上で必要となる最新の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」は、国税庁のホームページで参照してください。

通常の場合

① 前月の給与から社会保険料を差し引く。
② ①の金額と、扶養親族などの数を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて、税率(賞与の金額に乗ずべき率)を求める。「給与所得者の扶養親族申告書」を提出している場合は「甲欄」、提出していない場合は「乙欄」の金額や率を使用する。
③ 賞与から社会保険料等を差し引いた金額に、②の税率を乗じて計算する。算出された金額が、賞与に対する源泉徴収税額となる。

では、上記の点を踏まえて、計算シュミレーションをしてみましょう。

例:Aさんの11月分の給与が30万円(社会保険料等を差し引いた金額)、12月の賞与が80万円(社会保険料等を差し引いた金額)、扶養家族が3人で、「給与所得社の扶養控除等申告書」を提出している場合

まず「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使って、前月の給与30万円と扶養家族などの人数3人が当てはまる、賞与の金額にかける税率を求めます。Aさんは「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出しているので、甲欄に該当します。

表を参照すると、賞与にかける税率は4.084%となっています。そして、12月の賞与(社会保険料等を差し引いた金額)80万円に、税率4.084%をかけると、80万円×4.084%=32,672円という計算式になり、32,672円が賞与所得税額となります。

特殊な場合

ケース1:前月の給与支払いがない場合(中途で入社した場合や不定期で仕事をしている場合など)

① 賞与から社会保険料等を差し引いた金額を「6」で割る。
② ①の金額を「給与所得の源泉徴収税額表(月額)に当てはめて、税額を求める。
③ ②の金額「6」倍にした金額が、賞与から源泉徴収する税額となる。

賞与を半年を超えない頻度で受け取っている場合は、賞与を「6」で割った金額が基準額となります。例えば、賞与を60万円(社会保険料等を差し引いた額)を受け取っている場合は、10万円が基準になります。それに月額税額を求め、その額に6倍に値する額が、源泉徴収税額になります。

ケース2:前月の給与から社会保険料などを差し引いた金額の10倍を超える賞与(社会保険料などを差し引いた金額)を支給する場合

① 賞与から社会保険料等を差し引いた金額を「6」で割る。
② ①の金額に前月の給与から社会保険料などを差し引いた金額を加算する。
③ ②の金額を「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめて、税額を求める。
④ ③の金額から前月の給与に対する源泉徴収額を控除する。
⑤ ④の金額を「6」倍した金額が、賞与から源泉徴収する税額となる。

賞与が前月の給与の10倍を超えるケースは、特に営業職など個人の成績が左右するボーナス形態によくあります。通常の給与よりもはるかに上回る額となりますので、計算ミスをしないよう注意しましょう。

なお、ケース1及びケース2のいずれも、賞与の計算期間が半年を超える場合は、賞与から社会保険料等を差し引いた金額に「12」で割ります。計算方法は同じです。そして、求めた金額に「12」倍した金額が、賞与から厳選徴収する税額となります。

参照:国税庁「賞与に対する源泉徴収」

賞与を支給したときの事務手続きについて

賞与を支給したときは、「賞与支払明細書」を作成し、従業員に発行します。そして、差し引いた所得税を納付するなどの事務的な手続きする必要があります。

賞与支払明細書の作成と交付について

賞与を従業員に支給した場合は、「賞与支払明細書」と「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届統括表」を作成する必要があります。賞与支払届は、賞与における社会保険料を算出し、保険料を納付するために必要な書類です。どちらの書類も、管轄地区の年金事務所もしくは事務センターに、賞与支給後5日以内に提出しなければいけません。

・「被保険者賞与支払届」
賞与支払届には、提出者である事業所の所在地、名称、氏名などの基本情報、被保険者の基本情報、賞与支払額などを記載します。

複数の事業所で社会保険に加入している場合は備考欄の「二以上勤務」に「〇」、同一月内に複数回賞与を支給した場合は「同一月内の賞与合算」に「〇」を入れてください。なお、賞与支払届の様式は、日本年金機構の公式ホームページから入手することができます。

・「被保険者賞与賞与支払届総括表」
被保険者賞与支払届総括表には、賞与の支給の有無を記入する項目があります。つまり、賞与を支給していなくても、この書類を提出する必要があります。登録された賞与支払予定月の翌月までに書類を提出しない場合は、翌々月に催告状が送付されますので注意してください。

すべての書類が揃ったら、被保険者整理番号順にそろえて、管轄地区の年金事務所、もしくは事務センターに、賞与支給日から5日以内に郵送で提出する必要があります。ただし、健康保険組合に加入している場合は、日本年金機構だけでなく、健康保険組合にも提出する必要があります。

所得税の納付について

賞与から差し引いた所得税は、支給日の翌月10日までに、毎月の給与の源泉徴収税と合わせて納付します。ただし、納期の特例事業者の場合は、7月10日もしくは翌年の1月20日までとなっています。

賞与も給与同様、「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」という納付書と一緒に納付します。この書類は、給与、賞与、退職手当などの欄が別々になっています。賞与の場合は、2段目となっていますので、その欄に賞与の金額を記載します。

節税対策のひとつ「決算賞与」とは?

決算賞与とは?

「決算賞与」とは、これまで解説してきた通常の賞与とは異なり、決算やその前後に支払われる賞与のことです。通常の賞与同様、決算賞与も損益計上が認められています。そのため、想定外に利益が上がった場合、それに比例して法人税額も大きくなってしまうため、節税対策として、従業員に決算賞与として利益を還元することが可能です。

参照:国税庁「決算賞与金の税務上の取扱いについて」

決算賞与のメリット

決算賞与を支給すると、以下のメリットが得られます。
①節税になる
決算賞与を従業員に支給することで、損益に参入できます。それにより、決算賞与分は課税対象外になるため、法人税の節税に繋がります。

②従業員のモチベーションがアップする
従業員にとって、決算賞与は臨時の収入になります。よって、モチベーションがアップし、今後の活躍を期待できます。

決算賞与のデメリット

決算賞与を支給する際には、以下のデメリットも考慮しましょう。

①会社に残るお金が減る
決算賞与を支給することで法人税の額が減りますが、お金を多く支出することになります。つまり、法人税の減少額よりも、従業員に支給する決算賞与の総額の方が多くなる、ということです。ですから、会社に多くのお金を残したいのであれば、法人税を支払うほうがいいと言えるでしょう。

②税務調査で確認される可能性が高い
決算賞与を支給し、法人税額を減らそうとしている場合、適切な手段がされているかどうか、税務署の調査が入ることがあります。なので、決算賞与を支給する場合は、きちんと記録を残しておきましょう。

③従業員から毎年期待される
決算賞与を一度支給すると、従業員は翌年も支給されるものだと期待することが考えられます。もしも翌年、決算賞与を支給しなければ、従業員のモチベーションは低下し、業績の悪化につながるかもしれません。このような事態を避けるためにも、決算賞与を支給する際には、決算賞与についてしっかり説明しましょう。

まとめ

毎月の給与から源泉徴収される所得税と、賞与から源泉徴収する所得税では、計算方法が異なっています。賞与所得税の場合は、通常、前月の給与を基準として税率が決まり、源泉徴収税額の算出率の表を使います。賞与は金額が大きいので、間違えるとその誤差も大きくなってしまうので、所得税の額を正確に計算することはとても大切です。

また、給与を支給した後は、賞与支払い明細書を作成して従業員一人ひとりに発行したり、期日までに所得税や社会保険料などをそれぞれ決められた機関へ納付をする必要があります。賞与の計算は毎月の給与計算とは異なるため、分かりにくいという方や難しさを感じている方もいるかもしれません。

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