減価償却とは?正しく理解するための基礎知識を分かりやすく解説!
経営者や経理担当者、個人事業主などが会計処理をする際、「減価償却」として計上することがあります。減価償却には、独特のルールもあるため、理解することに難しさを感じている方もおられることでしょう。今回は、減価償却とはどのようなものなのか、減価償却にまつわる基礎知識について分かりやすく解説していきます。
目次
減価償却とは?
減価償却とは、時間の経過や使用により価値が減少する固定資産を取得した際、使用できる耐用年数に応じて、少しづつ分割して費用として計上する会計処理のことです。固定資産の使用可能期間や取得価額に基づいて、減価償却として計上します。なお、減価償却の対象には、条件があります。それは、次のような条件です。
・1年以上の長期間にわたって使用する目的で取得した資産
・取得価額、つまり購入金額が10万円以上のもの
業務目的のために取得したものだとしても、減価償却の対象となる固定資産になるかどうかは、上記の条件に該当するかどうかによって決まってきます。
減価償却の目的
減価償却の目的は、費用収益対応の原則に基づき、企業の経営状況を正確にすることです。この原則では、ある会計期間に発生した費用の中でも、その期間の収益と因果関係のある費用だけを計上できるように仕組みになっています。そのため、経営状況を明瞭に分析することが可能となります。このような仕組みを取り入れることで、利害関係者が正しい評価が下せることにもつながります。
減価償却の計算方法
減価償却は、上記でみたように、耐用年数と毎年減った分の価値を経費として計上するものです。計上額を算出するためには、「定額法」と「定率法」の2通りの計算法があります。しかし、個人で事前に届けを提出していない場合は、原則、定額法になります。なお、2007年3月31日以前に取得した減価償却の対象となる資産の場合、旧定額法、もしくは旧定率法を使って計上額を算出する必要があります。
では、定額法と定率法について、さらに詳しくみていきましょう。
定額法
減価償却の定額法とは、毎年同じ額を計上していく方法です。1年の原価取得額は、取得原価に定額法の償却率を乗じて算出します。つまり、「取得価額×定額法の償却率=1年の減価取得額」という計算式になります。なお、定額法の償却率の場合、「取得原価÷年数」とほぼ一致する、という特徴があります。
例えば、耐用年数が10年のものを100万円で取得した場合、毎年10万円を減価償却費として計上することができます。しかし、最後の10年目は、帳簿上に残存額を残す必要があるため1円としなければいけません。したがって、10年目は1、計上額は10万円ではなく、残存価格1円を差引いた99,999円が計上額となります。
定率法
減価償却の定率法とは、決められた率で減価償却として計上していく方法です。保証率によって償却補償額を設定する必要がありますが、償却保証額に達するまでは、残存価格の20%など決められている償却率で金額を算出していきます。つまり、「取得価額×定額法の償却率=1年の減価取得額」という計算式になります。定率法は、取得した年が新しければ新しほど、減価償却費の計上額が大きくなるという特徴があります。
例えば、耐用年数10年のものを100万円で購入した場合、償却率は0.200%、改定償却率は0.250%、保証率は0.06552%、償却保証額が65,520円となっています。したがって、1年目の償却費の額は、100万円×0.200になるため、20万円となります。2~6年目の償却費の額は、(100万円-前年までの償却費の合計額)×0.200という算式で額を算出します。
7~10年目に関しては、償却保証額を下回るため、改定償却率を当てはめる算出します。そのため、改定取得価額×0.250という算式で額を算出します。
減価償却の会計処理
減価償却をした際には、減価償却費として固定資産を費用計上した記録を残さなければいけません。つまり、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表へのその事実を記録します。これらの書類を作成するためには、固定資産簿価や費用などの流れを、「借方」と「貸方」に分けて簿記上の取引で記録する必要があります。つまり、会計処理として「仕訳」を作業をする、ということです。
減価償却を会計処理には、「直接法」と「間接法」の2通りの仕訳方法があります。では、それぞれの方法を詳しくみていきましょう。
直接法
直接法とは、減価償却費を固定資産から直接減少される方法です。「減価償却費」という勘定科目を使って会計処理します。直接法の場合、貸借対照表上では取得原価を知ることはできません。しかし、帳簿価額を直接的に把握できるというメリットがあります。また、直接法はシンプルな方法なので、簿記が初心者の方や個人事業主、小規模企業などには向いている方法と知られています。
間接法
間接法とは、減価償却費を累積させて表示する方法です。「減価償却累計額」とい固定資産の勘定科目と使って会計処理します。間接法の場合、貸借対照表上で固定資産の取得原価減価償却費の累計額、帳簿価額を把握することが可能です。そのため、多額の設備投資を必要としている事業や、減価償却で不動産などを増やすことを検討している場合は、間接法での処理が便利と言えます。
減価償却の対象とは?
減価償却の経理処理をする場合、取得したものが減価償却の対象となる「減価償却資産」に該当するか、それとも減価償却の対象外となる「非減価償却資産」に該当するかを、正しく判断しなければいけません。そもそも減価償却資産とは、時が経過すると同時に、その価値も減少していくもの、と定義されています。
そのため、減価償却の対象となる固定資産は、「有価減価償却資産」「無形減価償却資産」「生物」の3つに分類されています。では、減価償却の対象となる固定資産には、どのようなものが該当するのでしょうか?
・有価原価償却資産
建物、構造物、機械、車両、船舶、航空機、オフィス機器、冷暖房設備、備品、工具など
・無形減価償却資産
特許権、商標権、ソフトウェア、漁業権、ダム使用権など
・生物
牛、豚、山羊、馬、綿羊、リンゴ樹、ブドウ樹など
なお、有価固定資産だとしても、時の経過や使用によって価値が減少しないものは、減価償却の対象外となります。それには、建物とは異なり経年変化がない土地、借地権、地上権などの土地に関係する権利が該当します。また、電話加入権や100万円以上の美術品なども減価償却の対象外となっています。
減価償却の耐用年数とは?
減価償却の対象となる資産には、それぞれ減価償却期間が決まっている「耐用年数」が定められています。取得した資産を減価償却するためには、耐用年数についても理解しておく必要があります。
耐用年数の概要
耐用年数とは、建物や機械などの固定資産が、本来の用途用法で使用する場合に、耐用が持続できる期間のことです。国税庁は、耐用年数に関して「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」として定めています。法律上定められているものを、「法定耐用年数」と呼んでいます。取得したものが減価償却の対象の場合は、耐用年数が経過する期間まで、毎年経費として計上できます。
資産ごとの耐用年数
耐用年数は、資産の種類や用途によって異なります。ここではその一部の耐用年数についてみていきましょう。
・建物の耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート造りなどの事務所:50年
鉄骨鉄筋コンクリート造りなどの建造の住宅:47年
鉄骨鉄筋コンクリート造りなどの建造の店舗:39年
木造の事務所:24年
木造の店舗:22年
木造の飲食店:20年
電気設備:6~15年
冷房、暖房、通風、ボイラーなどの設備:13~15年
給排水、衛生設備、ガス設備:15年
一般車両:2~6年
運送事業用、貸自動車用、自動車教習所用車両:2~5年
テーブルや椅子:5~8年
カーテンやじゅうたん:3~6年
ラジオやテレビ:5年
減価償却の影響を受ける税金
原価償却を計上すると、所得税や法人税などの税金が影響を与えます。所得税や法人税などは、所得や法人所得に対して課税されます。つまり、所得が多くなるほど、税額も増えるという仕組みになっています。そこで、原価償却費として会計処理をすることで、法定耐用年数に応じて費用を分割して計上することが可能となります。その結果、耐用年数の期間中は、経理上の課税所得が減少することになるため、所得税や法人税などの税額の減少へとつながります。
減価償却に関しての注意点
減価償却として計算する際、いくつか注意したいことがあります。それぞれ考えられる場面ごとに確認していきましょう。
不動産をローンで建築もしくは購入する場合
不動産をローンで購入する場合は、金額が大きくなるため、一般的な原価償却期間よりも返済期間が長くなります。そのため、原価償却期間が経過した後、税金の支払いが増加するケースがあります。不動産のような金額が大きなものを建築や取得する場合は、原価償却期間とローンの返済期間の関係をしっかり確認するようにしましょう。
原価償却した建物を売却する場合
原価償却した建物を売却すると、譲渡所得税が高くなる可能性があります。なぜなら、譲渡所得税は、譲渡所得に応じて課税されるため、今まで原価償却してきた累計額から差し引いて計算されます。したがって、原価償却費の額が大きくなればなるほど、譲渡所得税もそれに比例して高くなります。
法人の場合も、取得価額から累計額を差し引くことになるため、法人税が高くなる可能性があります。ですから、原価償却した建物を売却する際には、譲渡所得税や法人税のことも考慮するようにしましょう。
年の途中で購入した場合
年の途中で、減価償却の対象となるものを取得することもあります。原価償却費は基本、購入した月の翌月から、計算の対象として扱われます。したがって、年の途中で購入した場合は、購入した月から12月末までを計算し、計上することになります。
中古で購入した場合
中古で購入した場合は、同じ商品を新品の状態で購入した場合の50%を超える金額であれば、法定耐用年数を用いて計算をします。しかし、50%以下の場合は、取得した時点で、事業用としてどのくらいの年数の使用することが可能かを見積り、計算しなければいけません。
個人で判断することが難しく、原価償却費を算出することができない場合は、管轄地区の税務署に相談してみることができるでしょう。なお、見積が難しい場合は、次の簡易方法で算定した年数を適用することも可能です。
・法定耐用年数期間がすべて経過した資産については、法定耐用年数の20%に相当する期間(年数)
・法定耐用年数期間の一部が経過した資産については、法定耐用年数から経過した年数を差引いた年数に、経過年数の20%に相当する年数を数えた期間
上記の簡易方法で算出した年数に、1年未満の端数がある場合は切り捨てます。また、結果が2年に満たない場合は、2年と考えます。
処分した場合
残存している資産を処分するときは、固定資産を破棄したときに発生した損失を計上する「固定資産除去損」という勘定科目を使って処理します。例えば、100万円で取得したものを、すでに70万円分を原価償却費として計上しており、残額価格の30万円を処分したい場合は、上記で解説した、直接法か間接法の2つの方法のどちらかで会計処理することができます。
・直接法の場合
原価償却費を直接固定資産から差し引くため、次のようになります。
(借方)固定資産除去損 30万円 (貸方)備品 30万円
・間接法の場合
間接法は複式簿記で記録します。原価償却をしても、備品の価値を直接減らすことはせず、原価償却累計額として計上するため、次のようになります。
(借方)原価償却累計額 70万円
固定資産除去損 30万円
(貸方)備品 100万円
売却した場合
原価償却を売却するときも、処分したときと同じ方法で処理します。例えば、100万円で取得したものを、すでに70万円分を原価償却費として計上している備品を10万円で売却したいときは、次のように会計処理をします。
・直接法の場合
(借方)現金 10万円
固定資産除去損 20万円
(貸方)備品 30万円
・間接法の場合
(借方)
原価償却累計額 70万円
現金 10万円
固定資産除去損 20万円
(貸方)
備品 100万円
青色申告できる特例「少額減価償却資産」制度
原則、減価償却は使用可能な期間が1年以上のもので、取得価格が10万円以上という2つの条件を満たしている資産が対象となっています。しかし、青色申告をしていて、従業員数が1,000人以下の個人事業主や、資本金1億円以下の中小企業の方には、特例として「少額減価償却資産」制度が設けられています。
これは2019年3月31日までに購入した取得価格が30万円未満のものであるなら、「超額減価償却資産」として計上することが可能となる特例です。この特例を適用できれば、購入した年度に、全額を経費として計上することが可能となります。
ただし、取得価格の合計は、300万円以下までと決められています。また、取得価格が10万円以上20万円未満のものの場合は、その合計額を3年間にわたって均等償却することも可能となっています。
まとめ
減価償却を正しく理解することは、経営者はもちろん、経理担当者など会計処理を行う上で必須となる基礎知識です。青色申告の方は、購入価格が30万円未満であれば一括償却できる特例を適用することができるので、経費を一気に計上したいときに上手に活用することができるでしょう。
青色申告をしていない方は、この機会に青色申告へと切り替えることを検討してみることができるかもしれません。減価償却など会計処理での疑問点や青色申告の方法などでお困りの方は、専門家でもある信頼できる税理士にまずは相談してみましょう。
税理士コンシェルジュは、2008年サービス開始より株式会社タックスコムが運営する税理士専門の紹介サイトです。会計の実務経験を活かし、これまで1000名以上の税理士と面談し、1万件以上の相談実績がある税理士選びの専門家です。
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