取締役ってどんな人?立場や責任など会社の役員に関する基礎知識 | 税理士コンシェルジュ

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取締役ってどんな人?立場や責任など会社の役員に関する基礎知識

2020年4月15日
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会社経営のトップの呼称のひとつである「取締役」という言葉を知っていても、その立場や責任まで説明できる方は少ないのではないでしょうか?「会社における偉い人・・」というイメージしか持っていない方もいることでしょう。この記事では、取締役という立場にスポットをおきながら、今さら人に聞けない会社の役員に関する基礎知識を徹底解説していきます。

会社の役員についての基礎知識

会社の役員といっても、「どこからどこまでが会社の役員なのか分からない・・」という方も少なくありません。では、実際のところ、会社の役員とは誰のことなのでしょうか?会社には「会社法」という法律があり、会社の役員について定められています。法律上における役員とは、「取締役」「会計参与」「監査役」の3つと定められています。

なお、委員会が設置されている大企業などは、「執行役」という役員が存在していることもあります。つまり、取締役は会社の役員のひとつで、取締役会の構成メンバーのひとりということです。では、この点を踏まえて、取締役についてさらに詳しくみてみましょう。

取締役とは?

取締役という立場は、社員でもなければ役職でもない、株式会社の設立には欠かすことができない存在です。では、どのような位置づけなのでしょうか?それは、「会社の運営を取り仕切る機関」という位置づけで、会社から経営を委任された立場にいます。つまり、一言で簡単にまとめるなら、取締役には、会社の業務執行の意志決定をする役割があります。

このような立場なので、労働基準法などによる就業規則は適用されませんし、雇用保険や労災保険などにも加入も対処外となります。また、報酬については給与ではなく、役員報酬になります。つまり、一度金額が決定されると、最低1年間は変更できない、というルールが適用されます。

取締役に必要な資格

取締役になるためには、会社からの指名を受けることが前提となります。なお、自分で起業をした場合は、おそらく本人が最大の株主となるので、自分で自分と代表取締役として任命するということになります。つまり、設立時には発起人が、会社設立後は株主総会によって選出するということです。

ただし、法律上で株主になれないケースも規定されています。それは、成年被後見人や被保佐人、一定の罪を犯した過去を持つ人などは株主になれません。

取締役の任期

取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと定められています。しかし、譲渡制限会社に関しては、定款に記載することで最大10年まで延長することが可能です。

なお、現役中の取締役が自己破産をした場合は、一度解任されることになります。しかし、再度就任することができます。

取締役の人数

株式会社を設立する際には、会社法に基づいて一定の役員を置くことが義務づけられています。どのような会社形態だとしても、取締役は必ず1名は設置する必要があります。会計参与や監査役については、機関設計で義務付けられている場合は設置することが求められています。つまり、会社役員の最少人数は、取締役1名となります。

しかし、上場企業の場合は、上場の基準が設けられているため、取締役は最低3名以上、監査役も3名以上設置する必要があります。このように複数の人数を揃えることで、「取締役会」や「監査役」などの機能につながります。

取締役の責任と義務について

取締役は、会社の株主たちから経営を委任されている立場にいますから、重い経営責任を担っています。大きく分けるなら「会社に対して負う責任」と「第三者に対して負う責任」の2種類の責任と義務があります。

会社に対しての責任

取締役が会社に対して担ってる責任とは、「懈怠(けたい)責任」です。これは、会社が生じた損害を賠償する、という責任です。取締役は会社との間で「委任契約」が結ばれているので、善良なる管理者として職務に全うするよう民法上で定められています。これは法律用語では、「善管注意義務」と言われています。つまり、取締役として期待されている一般的な注意義務をもって、会社の重要な業務執行の決定をしなければならない、ということです。

このような民法上の義務に加え、会社法では「忠実義務」という責任を取締役に負わせています。忠実義務とは、善管注意義務をさらに明確にした法律です。具体的には、取締役は法令や定礎、株主総会の決議を遵守して、会社のために忠実に職務を全うするよう課せられた責任です。

取締役は会社の重要事項を決定できる権利があるため、会社に対して厳格な責任を問われる立場にいると言えます。

第三者に対しての責任

取締役は、会社に対しての責任に加え、第三者に対しての責任も担っています。後述しますが、取締役の落ち度で会社が倒産し、第三者にまで損害を被った場合は、第三者に生じた損害を賠償する責任があります。取締役は会社運営の重要な立場にいるため、それに伴う責任も大きくなります。

実際、株主が取締役に対して、法的責任を追及する訴訟が増えているのも事実です。もし取締役が常に賠償責任に対して不安を抱えながら会社を運営しているなら、経営判断がネガティブになってしまうかもしれません。

そこで、法改正が行われ、軽度な過失の場合は、その責任が一部免除されることになりました。なお、この一部免除については、株主総会の決議で決定されることになります。また、「責任限定契約」という制度も設けられることで、軽度の過失の場合は、賠償額が一定の範囲内になるという契約を結ぶことができるようになっています。しかし、重度の過失の場合は、それに対応した責任を問われることになります。

取締役に責任が発生するケースとは?

では、もし会社が倒産してしまった場合、会社が抱えていた負債などはすべて取締役に責任が課せられのでしょうか?結論から述べるなら、そのようなことはありません。なぜなら、会社組織が「法人」と呼ばれているように、法律上では、法人は人間でない別人格として認められています。

例えば、金融機関などで借入をする場合は、法人が借りた、という扱いになります。ですから、万が一会社が倒産したとしても、経営を委任されている取締役にすべての責任が及ぶことはありません。

しかし、次のようなケースの場合は、取締役に責任が問われることもあります。

ケース1:取締役に明らかな間違いがあった場合

原則、法人は別格なので取締役には責任は生じませんが、明らかに間違った事業判断を取締役がした場合は、その責任が生じることがあります。取締役は株主たちから経営を委任されており、業務をする際には「善管注意義務」を担っています。これは、管理者として善良な判断をするという責任です。

したがって、明らかに落ち度のある判断をした場合は、善管注意義務に反したとみなされ、責任を問われることになります。そして、このような間違いをした取締役には、「任務懈怠(にんむけたい)責任」という責任が生じ、会社側から損害賠償を請求されることもあります。

ケース2:第三者から損害賠償を求められている場合

会社が経営破綻や倒産などに陥ると、その損害は第三者にまで及びます。例えば、下請け会社に仕事を依頼している最中に倒産してしまう場合、すでに依頼された仕事を進めている下請け会社にとっては、大きな損害となります。そのため、未回収の費用を請求してきます。このように第三者にまで損害が及んだ場合、取締役に大きな過失や悪意があるなら責任が問われます。

倒産することが分かっていたのにも関わらず、下請け会社に仕事を依頼していたなら、悪意があったと判断されるでしょう。また、経営がしっかり行われていない、と過失を課せられることもあります。法人は別人格なので、過度の過失については第三者は責任を追及することはできませんが、重度の過失が認められる場合は責任を追及される可能性もあります。

代表取締役と社長の違い

株式会社の代表取締役とは、その会社の取締役の代表のことです。取締役の中から選任され、株式会社を代表する代表権をもっています。ほとんどの場合が、代表取締役=社長ですが、代表取締役と社長が別の会社もあるので、代表取締役=社長というわけではありません。

例えば、「代表取締役会長、取締役社長」や「代表取締役専務、取締役社長」「代表取締役社長、代表取締役専務」など、複数人が代表権を持つというケースも珍しくありません。この代表権とは、公的な最終意思を決定する権利のことです。具体的には、金融機関や他社との意思決定交渉や契約締結などが挙げられます。これらの決定権があるのは、代表権を持っている方のみが行えます。そして、それは社長ではなく、また、ひとりではなく複数人がその権利を持つことがあるということです。

では、社長とはどのような役割があるのでしょうか?社長とは、企業組織内で定めている役職名のことです。公的、また法律的には何の効力もない肩書です。企業の中には、社長という役職を設けず、「CEO」「COO」「ディレクター」「マネージャー」という肩書を使うところもあります。CEOとは最高経営責任者、COOは最高執行責任者という意味があり、どちらも会社の役職のことであり、法律上の役員のことではありません。ディレクターやマネージャーについても同様です。

ですから、「代表取締役CEO」とあるなら、役員としての代表取締役と、役職としてのCEO(最高責任者)を兼任しているという意味になります。このように、「社長」とか「CEO」という肩書をみると、会社のトップの人という印象を受けがちですが、実際には全く別もので役員ではありません。

取締役と従業員の違い

上記でみたように、取締役は、株主総会によって選ばれています。つまり、会社との間で労働契約を締結しているのではなく、会社との間で「委任契約」を結んでいる立場にいます。つまり、一般的な従業員のように労働法の保護が及ぶ「労働者」ではありません。

どんなにたくさん働いでも残業代は出ませんし、年次有給休暇も得ることができません。また、雇用保険が適用されないので、突然解任されても失業手当が給付されることもありません。労災保険にも加入することができないので、万が一業務中に事故やケガを負ったとしても保障はない上、すべて全額自己負担となります。万が一倒産し報酬の未払いがある場合は、従業員の給与のよう国の未払い賃金立替制度を利用して給与が支払われることもありません。

取締役は会社員の延長のように思われている方もいるかもしれませんが、取締役と従業員は立場や責任が全く異なっているのです。では、もし取締役を引き受ける状況になった場合は、どのような点に注意すればよいのでしょうか?

取締役の就任から退任までの流れ

・主任するまで
すでに見てきたように、取締役は、株主総会の決議によって専任され、会社との間で「委任契約」を締結します。株主会社のオーナーである株主が、「会社の経営を任せたい!」と思える人を取締役として選任するのです。たとえ社長が「この人を取締役にしたい!」と考えていても、会社の株主を持っていなければ、取締役を選任する権利はありません。

・取締役を辞めるとき
取締役を選任するときと同じように、株主が「この人にこれ以上会社を任せることができない!」と判断されたときは、株主総会の決議によって「解任」することができます。労働者を解雇するときに行う解雇予告などは、取締役の解任にはありません。だからといって、全く保護がないというわけでもありません。

例えば、「横領をした」「長期入院することになった」「経営能力がない」など解任するための正当な理由なく、解任された場合は、任期満了までの役員報酬を損害賠償することが可能です。

一方、それとは反対に、取締役のほうから「辞任」したい場合は、任期の途中だとしても自由に辞めることができます。上記でも触れましたが、取締役の人気は原則として2年ですが、民法651条には、委任契約はいつでも解除できる、と定められているので、いつでも辞任することができます。なお、任期満了で退任となりますが、任期満了ごとに株主総会の決議で再任を繰り返すことも可能となっています。

取締役の役員報酬と労働条件

取締役と聞くと、高級外車に乗って、美味しい和食の料理店で会食をし・・など贅沢な暮らしをイメージする方も多いのではないでしょうか?では、取締役はどのくらいの「役員報酬」をもらっているのでしょうか?

役員報酬の決め方

役員報酬は、会社のオーナーである株主たちが総会を開き、役員の報酬額を決めるという仕組みになっています。なぜなら、経営陣である役員たちが自分たちで報酬を決めることができると、自由に報酬額を設定することができてしまうからです。したがって、役員報酬は、株主たちが決定します。企業によっては、株主総会で役員の報酬の総額だけを決定し、取締役間の配分は取締役会で決めることにしているところもあるようです。

なお、定時株主総会は、年に1回、会社の決算日から3ヶ月以内に行われています。役員報酬も定時株主総会で決まり、原則として一度決まった報酬額は、その年度中は変更することができません。ただし、例外として、会社の資金繰りが悪化したり、取締役の経営上の責任が特殊な状況に陥った場合などは、年度の途中だとしても、臨時に株主総会を開いて、役員報酬を減額させる措置をとることができます。

取締役の報酬と平均年収

臨時に株主総会を開いて報酬額を変えるのは、報酬額を減額するときです。それとは逆に、予想していたよりも業績がよかったとしても、年度中に役員報酬を増額したり、特別に賞与を支給される、といったことはありません。このような行為は、会社の利益額を調整する脱税につながるため、税法上、損金算入が認められていないため、決められた報酬額を変更することができないようになっています。

では、取締役はどのくらいの報酬をもらっているのでしょうか?会社の株を保有していれば、配当金がでることもあるので、一概に比較することはできませんが、国の統計によると、民間の労働者の平均給与は400万円強ですが、役員報酬の平均額は600万円強となっています。特に中小企業の場合は、役員報酬も労働者の給与も、年収にするとほぼ変わらないケースも多いと言われています。

取締役でも社会保険には加入できる

取締役は、雇用保険や労働保険には加入することはできませんが、社会保険には加入することは可能です。法律上、健康保険法によると「被保険者とは事業所に使用される者」と定義されているため、取締役は対象外になります。そのため、取締役は、社会保険には加入することができませんでした。

しかし近年では、取締役も労務の対象として報酬を受けているので、法律上の「使用される者」に該当しているとみなされるようになりました。したがって、取締役だとしても、原則的に社会保険に加入することになっています。

取締役という肩書とローンの審査

では、取締役が個人でローンを組む場合、ローンの審査にどのような影響を与えるのでしょうか?おそらく多くの方が、取締役という肩書があれば、ローンの審査が有利になるのでは、と思われることでしょう。もちろんケースにもよりますが、一般的な会社員と比較すると、取締役の方がローンの審査にはマイナスに働く、と言われています。なぜでしょうか?

なぜなら、特に住宅ローンなどの長期間にわたる借入の場合、継続的な収入が最も重要な審査のポイントとなるからです。取締役の場合、たいてい2~3期分の決算書の提出を求められます。そして、会社が継続的に経営できる見通しがあるかを判断されます。したがって、源泉徴収票の役員報酬額が高いとしても、会社の経営が赤字であったり、会社を設立したばかりであるなら、審査が通らないということも珍しくありません。

まとめ

会社の役員の中でも特に「取締役」について、解説してきました。取締役とは法的に認められている役職名のことで、株主によって選任され、会社と「委任契約」を結んでいます。一方、社長や役員、専務、経営者などは、法的に認められていない役職名のことです。

今後、経営に関わっていく方は、取締役の位置付けや責任について明記しておくことは、今後の組織作りにも役立ちます。是非、基礎的なことですので、しっかり覚えておきましょう。


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