起業・会社設立時における税理士選び5つのポイント!契約するメリットから費用まで解説
起業する際に、税理士に仕事を依頼するかは悩ましいところです。仕事を依頼するということはコストが発生するので、自力で行う方もいます。
しかし、税理士は起業支援のノウハウを有しており、その後の経営にも有効なアドバイスも期待できます。
起業にあたっての諸手続は専門知識が必要で労力もかかりますし、また、起業後も決算や申告等が毎年発生することを見越して、起業のタイミングで税理士に依頼する経営者の方も多いです。
ここでは、起業時に税理士選びをする場合のポイントについて解説していきます。
目次
起業時における税理士の選び方、5つのポイント
起業時に税理士を選ぶ際には、以下のようなポイントがあります。
1:料金が明確であること
2:コンサルティングができること
3:同業種・業界の事情に詳しいこと
4:資金調達に強みを持つこと
5:サービス業の意識を持っていること
これらについて、税理士が満たしているかを基準に考えることをお薦めします。
起業時に税理士に依頼するポイント1:料金が明確であること
一般に、起業時には潤沢な資金に恵まれないことが多いものです。起業にあたっては何かと入り用になりますし、予想外の出費も発生するかもしれません。出費にはよりシビアになる時期です。
したがって「どのような業務を依頼したら、いくらかかるのか」という点について、明確に示してくれる税理士を選ぶべきでしょう。
ホームページやブログには「詳細は面談で」としている場合もありますが、面談で直接尋ねるか、面談をする時間がとれない場合はその旨を伝えメールや電話で直接確認してみるのもよいでしょう。
その際のポイントとしては「そのサービスには何が含まれていて、何は別途料金が発生するのか」という点を明確にしておくということです。仕事がある程度進んでいった段階で「ここから先は、料金に含まれていない」となっては困ることになりますし、お互いの関係性においてもよいことはありません。
起業時に税理士に依頼するポイント2:コンサルティングができること
起業時は税理士に会計業務や税務だけではなく、起業のための諸手続の手配も依頼することになります。
青色申告承認申請書や法人設立届出書等の提出期限がある書類の手配や、経営上の課題の解決、円滑に事業を回すための具体的なアドバイス等、税理士が多岐にサポートしてくれれば、起業時の経営者の方にとって大きな助けとなります。
それには、税理士が起業支援の経験を積んできていることが大切です。数多く起業支援に携わっていれば、ノウハウも蓄積していますし、何かと忙しい起業時に経営者の負担が少しでも軽くなるよう、段取りよく進めてくれるでしょう。
起業時に税理士に依頼するポイント3:同業種・業界の事情に詳しいこと
起業支援を依頼する場合は、特定の業種・業界の顧客を複数持ち、長年サポートにあたっている税理士が、より望ましいです。法律上においては起業時に必要なものは一定ですが、現実的には業種や地域によっても異なってきます。
そのため、自社と同業種・同業界について知識と経験を備えた税理士に起業支援をしてもらうと、よりスムーズに進められることが期待できます。
起業時に税理士に依頼するポイント4:資金調達に強みを持つこと
起業時には何かと資金が必要になります。また、当初の事業計画を見直してみたところ、新たな資金が必要になるおそれもあります。
したがって、資金調達に役立つ様々な制度に詳しかったり、金融機関とのやり取りに実績がある等、起業時ならではの資金需要をカバーできる税理士を選ぶべきでしょう。
起業時に税理士に依頼するポイント5:サービス業の意識を持っていること
何よりも、顧客の身になってサービスを提供できる税理士を選びたいところです。いくら能力や経験値が高くても、居丈高な態度を取ったり、話も聞いてくれないような税理士を選ぶことは得策ではありません。
残念ながら、上から目線で命令口調の税理士もいますし、ノウハウを持っていても、依頼者が聞かないと教えてくれないといった、サービス業としての意識を欠いている税理士もいます。
起業時には初めてのことばかりで、何かと不安になる場合もあるでしょう。また、あれこれと疑問も生じるはずです。そんなときに税理士が親身になってくれなければ、心底がっかりするでしょうし、実務も滞るでしょう。
起業するのに税理士は必要? 会社設立時に依頼する3つのメリット
多くの士業が起業支援を行っていますが、会社設立の登記手続きを代行できるのは、司法書士です。司法書士は登記の専門家だからです。税理士など他の士業に依頼した場合も、この部分については司法書士に依頼することになります。
ただし、顧客が司法書士に別途依頼するのではなく、事務所内の司法書士が担当する・連携している司法書士に依頼するなど、ワンストップで引き受けてもらえることがほとんどです。この点をふまえ、以下のような起業時に税理士に依頼するメリットを把握しておくとよいでしょう。
税理士に依頼するメリット1、節税対策についてのアドバイスが受けられる
税理士に起業支援を依頼した場合、事業がスタートしたあとも、そのまま会社の会計を見てもらう(顧問契約を結ぶ)というパターンも多いものです。
起業時の事業計画書作成や資金調達などを間近で見てきた税理士は、その顧問先の経営状態を明確に把握しているといえます。したがって、税理士の専門分野である節税対策についても、より実効的にアドバイスをすることができます。
節税対策に最も大切なことは、「その節税対策が、本当に顧客のためになるのか」を適切に判断することです。起業時から支援してくれている税理士であれば、その点も信頼できるといえるでしょう。
税理士に依頼するメリット2、税務調査への対策ができる
納税は、過去にさかのぼっての数字を参照しながら行うものが多いです。例えば、消費税の申告義務は売上が1,000万円を超えてから2年後に発生します。したがって、目線を現在にすると、2年前の売上がどうだったかを明らかにしないと、納税額が定まりません。
この売上1,000万円を超えるか否かで、申告の煩雑さは大きく異なります。そのため、これを機に税理士に申告を依頼する場合もあります。しかし、税理士に仕事を依頼するのにも何かと準備が必要であり、それなりの労力になります。そして、最悪のパターンは納税義務に気づかずに放置した結果、追徴課税のペナルティが発生してしまうことです。
もしも起業支援から税理士に依頼していれば、この点について随分と労力もリスクも軽減されます。改めて、税理士に依頼するための準備も必要ありません。必要な各種手続きは税理士が行ってくれます。
税務調査に関しても、日々の正しい経理税務こそが対策になりますし、もしも税務調査が入ったとしても、税理士が適切に対応してくれるでしょう。
税理士に依頼するメリット3、融資や補助金についての相談ができる
税理士は、税務会計に関する専門知識と多くの会社に接してきたという業務上の経験から、起業時に必要な資金がどれくらいなのか・それをどのように調達するのかといったアドバイスやサポートも得意としています。
例えば、融資依頼時の金融機関との面談アドバイスや同行、国や行政・自治体などが行っている補助金・助成金に活用できるものはないかを調査し、アドバイスをします。
これらについては、最新の情報を得ていることはもちろん、「適用要件をみたしているのか」「適用することで将来にどのような影響が出るのか」など、多角的な検討が必要です。ぜひ、税理士の専門知識を活かしたいところです。
起業時における税理士への依頼費用相場
税理士に起業支援を依頼した場合、それが株式会社であれば相場は約5万円です。ただし、ここに印紙代や定款認証手数料、謄本交付手数料、登録免許税といった費用が加わることに注意が必要です。これらを合わせると、設立にかかる費用としては約20~35万円程度と考えておくとよいでしょう。
合同会社設立の場合は、より低額になります。印紙代や定款認証手数料が発生しないため、資本金の額などにもよりますが10~15万円程度と考えておけば問題ないでしょう。税理士への手数料は同様である場合が多いようですが、様々なプランを用意している事務所もあるので確認してみることをお薦めします。
起業支援に関し税理士と契約するなら、チェックするべき2つのポイント
適切と思われる税理士が見つかり、いざ契約というときには、以下の2つの点に注意しておくことをお薦めします。
1:起業のサポートをすることに積極的か
2:起業と顧問契約をセットにしていないか
契約前のポイント1、税理士が起業のサポートをすることに積極的か
まず気をつけたいのは、税理士が最終的には顧問契約の獲得を目的としていて、起業のサポートは付帯的な業務として捉えている場合です。
こうした税理士は、とにかく事業をスタートさせ顧問料を得ることを重視しがちで、依頼者の起業のサポートによい影響を与えるとは限りません。
契約前のポイント2、税理士が起業と顧問契約をセットにしていないか
税理士の業務内容が、会社設立と顧問契約がセットになっているケースがあります。利用者の立場からすれば手間が省けて助かるのですが、注意も必要です。
なぜなら、会社設立はリーズナブルに依頼できても、その後の顧問契約が割高になっている場合がほとんどだからです。
しかも、契約期間にしばりが設けられており、後になって解約したくても2年間解約ができなかったり、サービスがお粗末な場合が多々見られます。手間はかかりますが、起業した後の顧問契約のサービス内容や料金がどのようであるかも詳細に確認し、必要があれば他の税理士とも比較してみたほうがよいでしょう。
特に「0円で法人設立代行」「最短、最安で起業支援」といった言葉を用いている場合には、以下の記事を参考にしながら、本当にその税理士に依頼しても大丈夫なのか、あとになって困ることにならないかを確認することをお薦めします。
会社経営で税理士を雇わない選択肢もありか?
上記のように、税理士に仕事を依頼するとメリットは大きいですが「費用がかかる」というデメリットも確かにあります。
しがたって「会社経営をする際に、必ず税理士に仕事を依頼しなければいけないのだろうか?」という疑問がわいてくるのは当然のことです。
経営にあたって、必ず税理士を雇わなければいけないということはありません。実際に、経営者の方自らが、日々の会計経理業務や申告を行っている場合もあります。また、従業員のなかに担当者を設けている場合もあります。
それで円滑に進むのであれば、問題はありません。ただし、経営者の方ご自身あるいは社内にかかる労力や、正しく遂行できるのかといった点が問題になります。
たしかに、税理士を依頼するには費用がかかります。しかし、発生する費用だけではなく、税理士に仕事を依頼したことで生まれるリソースによるプラス効果についても目を向け、費用対効果を考えてみることをお薦めします。
そのうえで、税理士に仕事を依頼するか否か、依頼する場合どのような仕事を依頼するのかを検討すると、納得のいく結果に繋げやすいのではないでしょうか。
会社設立にあたっては様々な手続が必要で、専門知識を持った人に頼りたくなるのは当然です。税務関連だけでも以下のようなものがありますが、登記や社会保険関係にも手続が必要ですし、関係者への連絡や広報、各種契約書の取り交わし等、時間がいくらあっても足りないという場合もあります。
参照:国税庁ホームページ 個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき
一方で、少しでも金銭的な負担を軽くしたいと考えるのも当然のことです。費用対効果を考えた結果、税理士に依頼することがマイナスになる・生まれるリソースを検討してもプラスに転じないという場合もあるでしょう。その場合は、最低限の支援サービスのみを活用したり、できるだけ自力でできないか検討するのも一考です。
しかし、「費用はかかるが、それでもプラスの方が大きい」と考えるのであれば、起業時に必要なノウハウを持った税理士を見つけ、その能力を存分に活かせれば、起業時、そして事業運営をより円滑に進めることができるでしょう。
株式会社タックスコム:代表取締役
会計の実務経験を活かし、これまで1000名以上の税理士と面談を行い、相談実績は1万件を超える。2017年に執筆した書籍「税理士に顧問料を払う本当の理由」は、出版から半年にわたりAmazonカテゴリ「税理士」で1位を獲得。2021年に実施した日本コンシューマーリサーチの調査では、税理士紹介サービスで顧客満足No.1を獲得。
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