合弁会社とは?合弁会社を設立するまでの手順とメリット・デメリット
みなさんは「合弁会社」をご存知ですか?現在、さまざまな形態の法人が設立されていますが、そのひとつが「合弁会社」です。特定の事業を行うことを目的とし、複数の異なる企業が出資して設立されます。
この記事では合同会社を設立するまでの手順や、メリット・デメリットについて分かりやすく解説していきます。
目次
合弁会社とは?
「合弁会社」とは、日本の会社法にはない形態で、複数の法人が出資して、共同で設立する会社のことです。それには資金をはじめとし、技術やスキル、ノウハウ、人員などの資本の共有も含まれます。そのため、「ジョイント・ベンチャー」とも呼ばれています。
合弁会社を設立する目的や理由にはさまざまですが、主な目的は、それぞれの企業が独自の強みを活かすことで、事業の拡大を目指すことです。つまり、経営戦略のひとつとして設立します。共同出資なので、事業で獲得した利益に関しては、出資額に応じて分ける仕組みになっています。
多くの場合、合弁会社は海外企業と国内企業で設立されるケースほとんどです。そのため、合弁会社は海外企業と国内企業の共同出資で設立される会社、と思われがちですが、国内の企業同士の共同出資でも合同会社として認められています。
合同会社の形態は、大きく2つに分類されています。それは次の2つです。
①複数の企業が共同出資をし、新しい会社を設立する形態
②既存の会社の一部を買収し、共同経営をする形態
この2つのうち、①の新たに会社を立ち上げる形態が一般的となっています。いずれにせよ、合弁会社とは、事業を拡大するために複数の法人が出資して設立する会社のことを指します。
合弁会社は会社法に存在しない
日本の法人には、さまざまな形態があります。その多くは「株式会社」ですが、その他にも「合同会社」「合名会社」「合資会社」「特例有限会社」があります。そして、会社を設立する場合、法律上では、それらの形態で設立しなければいけません。
合弁会社も日本の法人形態のひとつと思われがちですが、日本の会社法には合弁会社は存在していません。つまり、便宜上、複数の法人が出資した会社を「合弁会社」と呼んでいるだけであり、正式には存在していない、ということです。
では、実務上、合弁会社は、どのような法人形態で設立されているのでしょうか?合弁会社は国内企業同士で出資して設立することもできますが、海外の現地企業と共同出資して設立する傾向にあります。
また、国によっては、外国資本が入ることを禁止する外資規制がある業種もあるため、100%国内の企業だけでの出資で設立できないこともあります。そのため、「株式会社」や「合同会社」として設立するケースが多い傾向にあります。
合弁会社のメリット
合弁会社を設立することには多くのメリットがありますが、その中から主に3つのメリットをみていきましょう。
メリットその①新規事業に伴うコストとリスクを抑えることができる
合弁会社は、複数の会社が出資する形態の会社です。そのため、出資金を抑えて、低コストで新会社を設立することが可能です。また、合弁会社の経営を続けることが難しくなったとしても、出資金が少なければ、失う出資金のリスクの軽減ともなります。
実際、会社の事業を拡大するには、常にリスクが伴うのではないでしょうか?特に新規事業の場合は、失敗する可能性もあります。近年、市場の流動性は「VUCA」という言葉で表現されていることもからも近年の市場の流動性が分かります。VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性」を意味する言葉です。
つまり、市場の流動性は、常に変化をするもので、それはいつ、どのように起こるか分からない、はっきりしないものである、ということです。そのため、ひとつの企業で新規事業に取り組むことには大きなリスクが伴います。
しかし、複数の企業は資金を分担して出費するなら、投資コストだけでなく、リスクも分散することができます。そのため、新規事業に挑戦するハードルが下がることはメリットと言えるでしょう。
メリットその②提携先パートナー企業の強みを活用できる
合弁会社を設立することで、共同で設立する提携パートナー企業が持つ強みを生かして事業を展開できるというメリットが得られます。例えば、パートナー企業の持つスキルやノウハウ、ブランド力などが挙げられます。
例えば、資金や人材、スキル、ノウハウなどを一から調達することには、多くのコストと時間を必要とします。しかし、他社と連携することで、自社が不足しているものを補うことができます。つまり、双方で強みを補い合うことで強みを生かした事業を迅速に開始することが可能となります。
メリット③海外進出が容易になる
合弁会社の設立を検討する企業の多くは、海外進出を目指しています。なぜなら、合弁会社は海外進出をしやすいからです。自社だけで海外へ進出することはかなり難易度が高いです。国によって商習慣や法律が異なるため、一から現地の商習慣や法律を勉強しなければいけません。
また、外資企業のみで起業の設立を禁止している国もあります。しかし、合弁会社であれば、提携パートナー企業はサポートし、共同で運営をすることになるので、海外へ進出することが可能となります。
海外企業と提携すれば、現地での従業員の募集がスムーズに進むことや、現地企業の協力を得ることも容易となります。また現地政府機関との交渉や現地の法律やルール、トラブルの対応、情報収集などもパートナー企業のコネクションを活かすことができます。
合弁会社のデメリット
合弁会社には魅力的なメリットが多くありますが、デメリットがあることも覚えておく必要があります。
デメリット①パートナー企業を見つけるのは容易ではない
合弁会社の設立を検討しているとしても、共同出資社を見つけることは容易ではありません。特に海外企業と共同出資をしたい場合は、さらに難しいと言えるでしょう。またパートナー企業を見つけることができても、信頼できるかどうかは別問題のため、徹底的なリサーチが欠かせません。
デメリット②技術の流失の可能性
前述したように、パートナー企業の資本を活用できるのはメリットです。しかし、それはパートナー企業からしても同じことが言えます。つまり、今まで自社が培ってきたノウハウやスキル、技術などを共有するため、それらが流失する可能性が高くなります。
デメリット③トラブルが発生するリスク
共同で出資し会社を設立することには、トラブル発生のリスクが伴います。特に海外企業と合弁会社を設立する場合は、商習慣や法律、言語の違いなどで、連携経営がうまくいかない可能性があります。国内企業同士であったとしても、経営方針などで揉めるかもしれません。
経営当初や事業が軌道に乗っているならトラブルが発生することはあまりないかもしれませんが、たいてい経営が悪化しているときにトラブルが発生しやすくなります。ですから、後述しますが、合弁会社を設立する際には、契約前にトラブルが発生することを推定した対応を決めておくことは大切です。
合弁会社の設立方法
では、合弁会社を設立する際には、どのような流れで進めればよいのでしょうか?
ステップ1:パートナー企業のリサーチ
合弁会社設立の場合、パートナー企業選びが重要となります。まず合弁会社を設立するために、共に出資するパートナー企業についてリサーチをし、その後、選定します。
M&Aや合弁会社設立する際、その失敗の原因の多くは、パートナー企業の調査不足です。つまり、成功するかどうかは、パートナーとなる企業に対する事前の調査にかかっています。
ステップ2:パートナー企業と基本合意の締結
パートナー企業の情報を得たうえで選定した後は、基本合意の締結をします。基本合意とは、合弁会社の設立と運営に関する基本方針を定めることを意味します。そのためには、まず交渉を行い、基本的な戦略、ルールなどの共有を行います。
現実的な目標を掲げたり、想定されるトラブルやその対処方法についても話し合う必要があります。双方が納得することができれば、意思決定の確認として基本合意を締結します。基本合意が締結されるまでは、担当者同士が何度も打ち合わせをすることになります。
ステップ3:締結条件の確認
基本合意の後は、各種条件の協議を行います。それには、どの分野や事業にどれだけ出資するかなど出資比率の設定、利益の受け取り方、取締役の選定、少数株主の拒否権の設定、株式の譲渡制限、撤退条件などが挙げられます。
ステップ4:合弁会社設立契約の締結
最後のステップとして、合弁契約の締結をします。ステップ3の協議内容に基づき、「合弁契約」を締結します。契約書には、目的、概要、株式の保有比率、取締役会役員、重要事項、経費負担、剰余金の配当などについて記載します。これにより法的な拘束力をもつことになり、合弁会社の設立が確定します。
合弁会社の事例
では最後に、合弁会社を設立した成功事例をご紹介しましょう。
【日本電気(NEC)】
日本電気(NEC)は、日本で最初の合弁会社です。日本の技術者で実業家だった岩垂邦彦氏と、米国ウェスタン・エレクトリックで共同出資した日米合弁会社です。現在でも、中国のレノボとパソコン事業で共同しています。
【株式会社TSTエンタテインメント】
「株式会社TSTエンタテインメント」は、株式会社東急レクリエーション・株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント・東京急行電鉄株式会社の3社が設立した合弁会社です。それぞれの強みを活かし、歌舞伎町発の娯楽文化の創出を目的として設立されました。
まとめ
合弁会社とは、複数の企業が出資をして共同で経営する形態の会社です。多くの場合、国内企業と海外企業が合同で出資するケースが一般的ですが、国内企業同士で出資して合弁会社を設立することができます。
複数の企業が出資することで、資金面はもちろん、スキルやノウハウ、人材なども共有できるというメリットがある一方、自社の資本が流失する可能性もあります。ですから、合弁会社の設立を検討する際には、メリットとデメリットを理解することはとても大切です。
特に海外企業を提携パートナーとする際には、商習慣や法律なども考慮することは重要です。いずれにせよ、成功するかどうかはパートナーとなる企業が関係してきます。ですから、パートナー企業選びは、慎重に行いましょう。
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