仮想通貨の利益は雑所得!雑所得税率から確定申告まで雑所得の基礎知識
「仮想通貨」は、近年人気のある投資のひとつです。仮想通貨の取引で得た利益は「雑所得」として扱われ、確定申告する必要があります。所得は種類や額によって控除を受けることができる一方、申告をしないと受けられるはずの控除が受けられなかったり、申告漏れになることがあります。この記事では、仮想通貨で得た雑所得の計算方法や雑所得税率、確定申告の方法など雑所得について解説していきます。
目次
所得の種類は全部で10種類!
仮想通貨を投資対象としている方が増えているため、仮想通貨取引で利益を得ている方も多いことでしょう。国税庁は、仮想通貨の取引で得た利益は「雑所得」に分類され、利益が20万円を超えた場合は確定申告を行うよう定めました。つまり、給与以外の収入がない会社員だとしても、仮想通貨で所得を得ている場合は、確定申告を行い、所得額に応じて所得税を納付することが義務付けられています。
もし仮想通貨の売買で利益を得ているのに確定申告をしないなら、申告漏れとして多額の延滞税を支払う必要がでてくるので注意が必要です。では、そもそも雑所得とはどのようなものなのでしょうか?雑所得は、その名前の通り所得のひとつです。所得は、内容によって全部で10種類に分類されています。所得の種類は次のようになっています。
1、事業所得
商工業、農業、漁業などの事業で得た所得
2、利子所得
預貯金や国債などの利子による所得
3、配当所得
株式や出資の配当や、投資信託などの収益分配などの所得
4、不動産所得
土地、建物、駐車場などの不動産を貸して得た所得
5、給与所得
給料や賃金、賞与などの所得
6、退職所得
退職手当や一時恩給などの所得
7、山林所得
山林の立木などを売った際に得た所得
8、譲渡所得
土地や建物、絵画、ゴルフ会員権などを売って得た所得
9、一時所得
クイズの賞金、競馬の払戻金、生命保険契約の一時金などの営利を目的としない行為で発生した一時的な所得
10、雑所得
年金や恩給などの所得や、営業でない賃金の利子など上記の所得に当てはまらない所得
所得税は1年間に得た収入によって額が変わってきます。所得税の額は、所得の種類ごとに定められている計算方法に基づいて算出します。なお、仮想通貨は10の雑所得に分類されます。雑所得とはほかの9つの所得に分類されない課税所得すべてが該当します。
具体的にはビットコインなどの仮想通貨やFXなどの投資をはじめとし、事業規模に満たない副業による収入、アフェリエイト収入、インターネットオークション、フリマアプリでの売上金、せどり、ポイントサイトでの収入、内職、個人年金を含む年金などが雑所得として扱われます。
雑所得にかかる雑所得税率は最大45%!
雑所得にかかる所得税は、給与所得や譲渡所得、不動産所得など他の所得と合算してから税額を計算する「総合課税」の対象となっています。例えば、一般的な会社員が年間20万円の雑所得を得ていた場合は、「給与所得+20万円」の合計額に雑所得税率をかけて所得税を算出します。
さらに雑所得の場合、所得額が大きくなればなるほどそれに比例して税率も上がる「累進課税」となっています。したがって、利益が多額になると、累進課税により所得税の税率は最大45%が適用されます。それに住民税10%が加わると最大55%まで税率が上がることもあります。なお、課税される所得金額に課せられる所得税の税率と控除額は、次のようになっています。
・課税される所得金額が195万円以下の場合
税率:5%
控除額:0円
・課税される所得金額が195万円超~330万円以下
税率:10%
控除額:97,500円
・課税退職所得金額が330万円超~695万円以下
税率:20%
控除額:427,500円
・課税される所得金額が695万円超~900万円以下
税率:23%
控除額:636,000円
・課税される所得金額が900万円超~1,800万円以下
税率:33%
控除額:1,536,000円
・課税される所得金額が1,800万円超~4,000万円以下
税率:40%
控除額:2,796,000円
・課税される所得金額が4,000万円超
税率:45%
控除額:4,796,000円
この際注意したいのは、所得の範囲です。所得の範囲になるのは、収入から基礎控除や給与控除など各種控除を差し引いたあとの金額です。そして、雑所得からは必要経費を差し引くことが可能です。つまり、「収入-(各種控除+必要経費)=課税所得」という計算式で課税所得を求めます。その後、「課税所得(総所得-控除・経費)×所得税率=所得税」という計算式で所得税を算出します。
例えば、年収が400万円であっても、課税所得が100万円であれば所得税率は5%になります。したがって、所得税は5万円となります。上記でも先述しましたが、給与所得者の場合は、雑所得が20万円を超えると確定申告の対象になります。ですから、収入から必要経費を差し引き、雑所得が20万円を超えた場合は、確定申告をする必要があります。
雑所得の必要経費に計上できるものとは?
所得税法では、売上(収入や利益)を上げるまでにかかった経費を必要経費として計上することができ、確定申告のときに差引くことが可能となっています。通常、必要経費として計上できるものには、オフィスの賃貸料や水道光熱費、通信費用、文具費用などが挙げられます。では、仮装通貨投資の場合は、何が必要経費に該当するのでしょうか?
それには、情報を取得するために購入した経済新聞や購読料、投資系の雑誌、投資系のノウハウ本などを挙げることができます。また、家賃やプロバイダーの利用料金なども必要経費として計上したい場合は、プライベートとしっかり区別する必要があります。
雑所得は赤字でも損益通算は不可
前述したように、雑所得は総収入金額から必要経費の金額を差し引いて算出します。では、計算した結果が赤字だった場合は、どうなるのでしょうか?事業所得や不動産所得などは赤字が生じると、他の所得の損益通算することができます。
しかし、雑所得の場合は、赤字が生じてもマイナス0円とはならず、0円として扱われます。そのため、仮想通貨投資をしている方のほとんどは、その利益を雑所得として確定申告をすることになります。雑所得として申告する必要がある人には、次のような方が該当します。
・正社員や派遣社員などとして勤務先から生活の糧となる給与を受け取っている仮想通貨などの投資家
・役員報酬を受け取りながら、仮想通貨に投資をしている会社役員
・自ら事業を営み生計を立ててる個人事業主で仮想通貨に投資している人
・年金で生計を立てつつ、余資金を使って仮想通貨に投資している人
仮装通貨の損益を「事業所得」として申告できる例外ケース
例外として稀に、仮想通貨の損益を「事業所得」として申告できることがあります。事業所得も所得税法上の10種類の所得のひとつですが、商工業、農業、漁業などの事業で得た所得のことです。事業所得も雑所得と同じように、総収入金額から必要経費を差し引いて算出します。しかし、事業所得は雑所得と違い、事業所得が赤字の場合は、給与所得や雑所得など他の所得と損益通算することが可能です。
また、青色申告申請の届出を提出し認められれば、特別控除として最大65万円差引けるという特典が適用されます。このように雑所得よりもメリットの多く、節税効果の高い事業所得ですが、仮装通貨投資を事業所得として申告できるケースはごく稀です。なぜなら、片手間ではなく、事業として仮装通貨投資をしている必要があるからです。つまり、仮装通貨投資が、生計の主軸となっていなければいけません。
その他にも、従業員がいること、設備を備えていること、精神的また肉的に相当の労力を有していること、営利性があること、継続性・反復性があること、社会的に認知される職業や地位であること、など事業所得としての要件を満たしている必要があります。
仮想通貨で得た雑所得の具体的な計算方法
仮想通貨で利益を得ている方の多くは、1年を通じて複数回売買取引をしていることでしょう。そのような場合は、売買ごとに所得を計算して、1年分の合計金額を所得額として申告する必要があります。合計所得額の計算方法には、仮想通貨を購入する度に購入額と取得価額を算出する「移動平均法」と、1年間の購入平均レートをもとに計算した購入金額合計と売却合計金額の差額を計算する「総平均法」の2種類の計算方法があります。
利益が少なければバレないのか?
仮装通貨投資家の中には、確定申告をするのは利益が大きい場合だけが対象と思っている方がいます。実際、仮装通貨投資で利益が出ているのに確定申告をしていない方がいます。しかし、それは間違いです。すでに見てきたように、仮想通貨で20万円以上の利益が出ている場合は、確定申告の対象となっています。
国税庁は利益を申告しない人が多くいるため、2019年7月に電子商取引チームを全国に配置しました。これにより、取引所などの業者に対して情報提供の要請が可能となり、無申告者や過少申告者を効率よく税務調査が行えるようになりました。ですから、仮装通貨投資で利益を得ているのに申告をしていない方は、税務署から指摘を受ける前に、確定申告を行うようにしましょう。
確定申告をしないとどうなる?
仮装通貨で20万円以上の利益と得た雑所得のある会社員の方や個人事業主の方は、確定申告をすることが義務となっています。もし期限内に確定申告をしない場合は、無申告とみなされ、無申告加算税が発生する可能性があります。また、期限内に納税をしなかった場合は、延滞税が発生します。
確定申告の期限は、毎年2月16日から3月15日までとなっており、最終日が土日祝の場合は翌日の月曜日までが期限となっています。(なお、2020年度につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により確定申告の期間が延長しています)納税は国民の義務ですから、ペナルティーを受けないよう、利益がある場合は必ず確定申告をするようにしましょう。
雑所得が20万円以下で申告が不要な人が注意したいこと!
この記事では、雑所得が20万円以下であれば確定申告は不要である、と解説してきました。しかし、これが適用されるのは、年末調整をして所得が確定した給与所得者のみが対象となっています。つまり、年末調整をした会社員で、年間の雑所得が20万円以下の場合は、確定申告は不要です。
しかし、給与所得者(一般的な会社員)で雑所得が20万円以下だとしても、次の条件を満たしている場合は、確定申告が必要となります。それは、給与の年間収入金額が2,000万円を超えている人、医療費控除などを受けるために確定申告をする予定がある人は、給与所得者だとしても確定申告が必要です。
また、金額にかかわらず確定申告が必要な個人事業主やフリーランスの方や、同族会社の役員やその親族から貸付金の利子や資産などの賃貸料で収入を得ている人、年末調整をしていない人などは、雑所得が20万円以下だとしても確定申告が必要となります。
雑所得が20万円以下でも住民税の申告は必須
雑所得が20万円以下の場合、確定申告が不要なため、住民税の申告を忘れがちになる傾向がありますが、住民税の申告は雑所得が20万円以下だとしても必要となります。通常、年末調整や確定申告をすると、住民税は税務署から各市町村へ通知されるため、個人で申告する必要はありません。
しかし、雑所得が20万円以下の場合は確定申告をしないため、各市町村の役所で住民税の申告をする必要があります。なお、雑所得が20万円以上の場合は、税務署で確定申告をすることで、各市町村へ住民税の通知がされます。
まとめ
仮装通貨投資で得た所得は雑所得として扱われ、給与所得者の方で20万円以上の利益があるなら確定申告をすることが義務付けられています。雑所得は総合課税の対象となっているうえ、累進課税が採用されているため、利益が多ければ多いほど税率も高くなります。
税率が高いことやバレないだろう・・などの理由から確定申告を怠ると、申告漏れを指摘され、ペナルティーが課せられる可能性があります。確定申告で所得を申告し、税金を納めることは国民の義務です。仮装通貨投資で利益がある方は、決められた期間内に必ず確定申告をするようにしましょう。
税理士コンシェルジュは、2008年サービス開始より株式会社タックスコムが運営する税理士専門の紹介サイトです。会計の実務経験を活かし、これまで1000名以上の税理士と面談し、1万件以上の相談実績がある税理士選びの専門家です。
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