【市町村民税(住民税)の基礎知識】仕組みや計算方法などを徹底解説!
毎月の給与から必ず天引きされている所得税と市町村民税(住民税)は、わたしたちにとって身近な税金のひとつです。しかし、その仕組みやどのように計算されているのかをしっかり理解している方は少ないようです。今回は特に「市町村民税(住民税)」の仕組みや計算方法など、社会人であれば知っておきたい基礎知識について徹底解説していきます。
目次
市町村民税(住民税)とは?
市町村民税とは、地方自治体がさまざま行政サービスを提供するために、住民から徴収している地方税のことです。徴収した税金は、公共事業や公共施設などの行政サービスやゴミの収集、道路の改修、教育、福祉などに使われています。都道府県は徴収する「都道府県民税」と、市町村が徴収する「市町村税(東京23区のの場合は「特別区民税」)」の2つを合わせた総称を「住民税」と言います。
1月1日時点に住民票のあった市町村に、前年度に所得があった人は、住民税を納める義務があります。または、住んでいなくても、事務所や家屋敷などを持っている場合は、住民税の対象となります。所得税と同じように、住民税も収入に応じて税金の金額が決まります。しかし、所得税はその年に納税しますが、住民税は翌年に納税するという違いがあります。なぜなら、住民税は年末調整や確定申告の後に、課税額が算出されるからです。
そのため、翌年の6月~翌々年の5月頃までにかけて納付します。所得税と比較するなら、納付時期が1年も遅くなっています。また、住民税の場合は、収入金額によっては非課税になるケースもあります。住民税は、所得金額に左右されない一律の「均等割」と、所得金額によって決まる「所得割」があります。どちらも非課税になる場合もあれば、所得割だけ非課税になることもあります。
住民税の種類について
住民税には、「個人住民税」と「法人住民税」があり、給与から天引きされているのは「個人住民税」になります。
均等割
均等割とは、収入金額を問わず、1人あたりの金額が決まっている税金です。現在は、都道府県民税は1,500円、市区町村税は3,500円となっています。
所得割
所得割とは、所得金額によって税額が決まります。通常は、前年の総所得金額から所得控除額を差引いた所得金額の10%にあたる金額が住民税となっています。
均等割と所得割が課税されないケース
均等割と所得割の双方が課税されないケースは、次の要件を満たしている場合に該当します。
・1月1日現在に生活保護法による生活援助を受けている場合
・障害者、未成年者、寡婦、寡夫で、前年の合計所得金額が125万円以下の場合
・扶養親族がいない方で、前年度の合計所得金額が35万円以下の場合
・扶養親族がいる方で、前年度の合計所得金額が「35万円×(本人・同一生計をしている配偶者と扶養親族の合計人数)+21万円」以下の場合
所得割が課税されないケース
所得割が課税されないケースは、次の要件を満たしている場合に該当します。
・扶養親族がいない方で、前年の総所得金額等が35万円以下の場合
・扶養親族がいる方で、前年度の総所得金額等が「35万円×(本人・同一生計をしている配偶者と扶養親族の合計人数)+32万円」以下の場合
市町村民税の税額の決まり方
住民税は、前年の1月~12月までに所得金額によって決まります。また、上記ですでにみたように、住民税には一律に課せられる均等割と、所得金額によって決まる所得割の2種類があり、この2つを合わせたものが住民税と呼ばれています。住民税の所得割の税率は、市町村民税が6%、都道府県民税が4%で成り立っている10%(所得割)となっています。
住民税の計算方法は、基本的にどこの自治体も同じですが、各地方自治体の規定によって課税される所得額が違うことがあります。また、地方自治体独自の税金がプラスされるところもあります。例えば、環境保護のための活動財源として「環境税」や「森林税」などの税金が上乗せされる地方自治体もあります。また、震災などの災害に備えて、財源確保をするために独自の税金を課しているところもあります。
このように住んでいる地域によって住民税の加算の有無があると、「住民税の安い地方自治体の方がお得なのでは?」と考えてしまう方もいるかもしれません。実際、同じ所得金額だとしても、住民税の高い地方自治体と安い地方自治体では、1万円以上の差が年間で生じることもあります。
しかし、各地方自治体は、そこで必要とされる額だけを徴収しています。つまり、意味なく上乗せして税金を徴収しているわけではありません。各地方自治体の広報などでは、徴収した税金を何に使用したかを公表しています。自分が支払っている住民税の内訳を知りたい方は、確認してみられることをおすすめします。
住民税の支払いはいつから?
では、住民税の支払いはいつから、どのように行うのでしょうか?一般的な給与所得者の場合は、事業者側が給与から住民税を天引きし、本人に代わって納税をしています。その年の住民税を、6月から翌年の5月までの1年間の間に12回に分割して納付しています。この住民税の納付方法を「特別徴収」と呼んでいます。
一方、自営業などの個人事業主やフリーランスなどの場合、確定申告をして個人で納付する必要があります。確定申告の後、住民税が確定されます。その後、一括、もしくは四半期ごとに4回に分割して納税します。この納付方法は「普通徴収」といいます。地方自治体によっては、クレジットカードでの支払いが可能な場所もあります。
入社2年目から天引きされる
先述したように、住民税は前年の所得金額に対して課せられるので、新入社員の場合は、入社2年目の6月の給与から住民税が天引きされます。事業所側は、1月末までに管轄地区の役所などへ前年度の給与額を報告します。その後、その金額に基づいて税額が決定します。給与所得者の場合、納付書は給与支払元である事業所に届きます。
一方、自営業などの個人事業主やフリーランスの場合は、毎年2月~3月にかけて行われる確定申告の内容に基づいて税額が決定します。通常、納付書が6月頃に送付されます。
扶養内のパートやアルバイトも住民税の対象?
住民税の場合、必要控除65万円と基礎控除33万円(令和2年度以降は43万円)の合計98万円(令和2年度以降は108万円)を差引き、算出します。つまり、「給与-(所得控除65万円+基礎控除33万円もしくは43万円)×税率」という算式になります。
パートやアルバイトの場合は、収入が103万円以内であれば所得税はかかりませんが、住民税の場合は98万円から課税されます。また、住民税は、前年度の所得に対して課税されます。したがって、退職して現在収入がないという場合でも、前年度の収入があるなら住民税を納めなければいけません。
転職や退職時の住民税
では、転職や退職したとき、住民税はどうなるのでしょうか?
新卒入社したとき
新社会人1年目の場合は、給与から住民税は徴収されません。なぜなら、すでにみたように住民税は前年の所得に応じて決まるからです。そのため、2年目以降、給与から住民税が天引きされるようになります。
転職したとき
前の会社を退職した後、すぐに転職をしている場合は、12月31日までであれば、転職先の給与から住民税が引き続き徴収されることになります。しかし、1月1日以降の場合は、住民税の残額を最後の給与、もしくは退職金などで一括払いで納める必要があります。
退職したとき
結婚して専業主婦になったり、休職中、起業の準備中などの理由から12月31日までに転職先が決まらず、退職した場合は、翌年の6月頃から普通徴収へと納付方法が切り替わります。したがって、自宅に郵送された納付書にもとづき、住民税を納めます。退職をした後、再就職していない場合は、1年分の住民税を4期に分割して納付することができます。
退職した翌年
住民税は原則、実際に収入があった年度の翌年に支払うことになっています。ですから、退職した翌年に収入がないとしても、前年度に課せられる住民税を支払う必要があります。
生活スタイルが変わったときなどの住民税
引っ越しなどの生活スタイルが変わったとき、住民税はどうなるのでしょうか?
引っ越しをしたとき
引っ越しをしたとしても、住民税の金額がすぐに変わるということはありません。今まで通り、給与から住民税が天引きされていきます。住民税は1月1日時点に住んでいた自治体に納付する税金なので、引っ越し先の自治体に支払う住民税は、引っ越したあとに向かえる最初の1月1日の翌年6月からとなります。
特別徴収されないとき
一般的な会社員などの給与所得者の場合、原則として住民税は給与から徴収されます。しかし、事業所の中には、特別徴収をしないところもあるようです。そのような場合は、給与所得者だとしても、自宅に住民税の納付書が郵送されることがあります。
また、中途入社の場合、前年の所得が低いと住民税の課税のタイミングが遅くなる傾向にあります。
住民税の支払いを忘れた場合は?
住民税は、決められた期限内に支払いをしない場合は、督促状が届きます。納付期限から実際に支払うまでの期間によっては、ペナルティとして延滞税が課されることがあるので注意が必要です。
延滞税の計算方法
住民税の督促状が届いても、それを放置しておくと、催告書が内容証明郵便などで郵送されてきます。催告書は支払を催促する督促状とは異なり、決められた期限まで支払うように記載されています。この書類が届いても放置する場合は、法的な措置がとられることがあります。具体的には、給与や財産などが差し押さえられたり、裁判へとつながることもあります。
ですから、住民税に限らず、税金は決められた期限を守って支払うようにしましょう。なお、延滞税は、「税額×納付期限の翌日から1ヶ月経過する日までの日数×2.6%÷365日」という算式で算出します。
住民税の申告の有無
給与所得者や公的年金等のみの方は、住民税が特別徴収されるので住民税を申告する必要はありません。また、確定申告される方も、確定申告後に住民税が決定しますので、住民税の申告は不要です。では、住民税の申告が必要な方とはどのような場合でしょうか?それには、次のような方が挙げられます。
・パートやアルバイトで給与から住民税が天引きされていない場合
・未公開株式の配当や大口株主が受ける上場株式などの配当があったとき
・生命保険や損害保険の年金や一時金、満期払戻金などを受けとったとき
・国や地方公共団体などの団体から手当や給付金などをうけたとき
などに該当し、確定申告をしていない場合は、住民税の申告が必要となります。また、前年度中に退職した方で、事業所側が市区町村役場へ給与支払報告書を提出していない場合は、住民税を申告しなければいけません。
住民税を節税するには?
住民税の支払額をみると、「節税できる方法はないのか?」を考える方もいることでしょう。住民税を節約できる一般的な方法は、「ふるさと納税」の利用です。ふるさと納税で様々な地方自治体に納税をすると、各地の特産品を手にすることができます。約2,000円程度の負担で、それ以上価値のあるものを受け取ることができるので、住民税を上手に活用できる賢い方法と言えるでしょう。
また、「医療控除」も節税につながります。医療費を一定額以上支払った年は、医療費控除を確定申告することで、所得税だけでなく住民税も抑えることができます。入院費や通院費はもちろん、医薬品の購入や介護費用なども医療費の対象となりますので、領収書などをしっかり保管しておくようにしましょう。
まとめ
住民税は、年末調整で納付までの手続きが完了する所得税とは異なり、翌年に給与から天引きされる特別徴収での支払いをします。各市町村によって税額が変わることもありますが、ゴミの回収や道路の改修など、各地域の必要に応じた使い道がされています。自治体では、徴収した住民税の使い道を公開しているので、確認してみることができるでしょう。
また、住民税を少しでも節税したい方は、ふるさと納税を活用したり、医療費控除を申告されることをおすすめします。そして、何よりも住民税の納付書が届いたら、期限内に納めるようにしましょう。
税理士コンシェルジュは、2008年サービス開始より株式会社タックスコムが運営する税理士専門の紹介サイトです。会計の実務経験を活かし、これまで1000名以上の税理士と面談し、1万件以上の相談実績がある税理士選びの専門家です。
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