「原本」とは?抄本、正本、謄本、副本などの正確な違いを分かりやすく解説
会計をはじめとし、さまざまなシーンで使われる公的文章には、原本、抄本、正本、謄本、副本・・などさまざまな文章があります。みなさんは、それぞれの公的文章の違いをご存知ですか?おそらく多くの方が、その正確な違いが曖昧になっているのではないでしょうか?この記事では、公的文章の正確な違いについて詳しく解説していきたいと思います。
目次
日本の社会には欠かすことができない「原本」
日本では、ビジネスの取引きをはじめとし、行政サービスを受けるためには「原本」の存在が欠かせません。日本の法律で決められている日本独特の文化とも言えるでしょう。例えば、日本国籍であることを証明するためには、戸籍謄本や原本の提出を求められたり、重要な取引をする際には、実印を押すだけでなく、印鑑証明書も提出するよう求められることがあります。
このようにビジネスだけでなく、行政手続きにおいても証明書などの書類提出をすることが当たり前のように求められています。近年は、行政サービスも電子化されるほど、時代はペーパーレス化が進んでいますが、原本などの書面文書を提出する文化はそのまま残されています。
ですから、公的文章と言われている原本、抄本、正本、謄本、副本などの意味や違いをしっかり理解しておくことは、ビジネスではもちろん、日常生活でも役立ちます。では、それぞれの意味や違いについてみていきましょう。
原本(げんぽん)とは?
原本とは、すべての文章で一番最初に作成された文章のことです。つまり、その人自身が描いたオリジナル文書、すべての書類作成の基本となる世界にひとつしかない文書といえます。原本を元とし、正本や副本、謄本などを作成します。
謄本(とうほん)とは?
謄本とは、原本の全文を完全に写したコピーのことです。公証権限をもつ公務員が認めた文書のことを指します。「戸籍謄本(全部事項証明)」などの言葉としてよく使われています。
抄本(しょうほん)とは?
抄本とは、原本の一部をコピーしたものです。つまり、原本の内容のうち、一部のみを抜粋して写した文章のことです。この文章も謄本と同様、公証権限のある公務員が認めた文書のことを指しています。
謄本と抄本の違いとは?
謄本は原本を完全に写したコピーであるのに対し、抄本は一部分だけを書き写したものという違いがあります。この違いは、「戸籍謄本」と「戸籍抄本」の例を考慮するなら理解しやすくなるでしょう。戸籍謄本は「戸籍全部事項証明書」とも呼ばれています。その名前の通り、戸籍に関するすべての項目を原本から完全にコピーしています。一方、戸籍抄本は戸籍謄本とは違い、本人の戸籍情報のみが記載されている文章となっています。
もしどちらが完全コピーでどちらが一部コピーだか分からなくなってしまったら、漢字に注目しましょう。謄本の「謄」には、「原本通りに書き写す」という意味があります。抄本の「抄」には「さっと表面をすくいとる」「書物の字面を写しとる」「ぬきがき」という意味を持ちます。これらの漢字の意味を覚えておくなら、どちらが全部を書き写した文章で、どちらが一部だけを書き写した文章なのかを迷うことはないでしょう。
正本(せいほん)とは?
正本とは、謄本の一種で、複製することができる原本と同じ効力をもつ文章のことです。つまり、原本の完全コピーですが、原本と同じ効力と持ちつつ、謄本でもあるため何通でも作成することが可能な文章となっています。正本も謄本や抄本と同様、公証権限をもつ公務員が認めた文書として扱われています。
副本(ふくほん)とは?
副本とは、複製することができ、原本と同じ効力をもつ文章のことです。副本は正本を基に作成されます。そのため、謄本の一種ではありません。
正本と副本の違いとは?
正本も副本も原本と同じ効力を持ちますが、副本は正本と基に作成されるため「正本の写し」とも言えます。そのため、何らかの申請を行う場合は、原本を紛失すると大変なので、原本と同じ効力を持つ正本を作成し、印鑑を押したものを利用することが多くあります。また、正本の写しである副本は、裁判をする被告に対して提出する書類としてよく利用されています。
原本証明とは?
原本証明とは、原本のコピーを提出し、原本と内容は変わりません、という証明をするための記録のことです。コピーした文章の裏面に、「原本と相違がない」という旨を記載し、証明日、住所、印鑑を押します。原本証明は、主に原本の提出ができない書類を提出しなければならないときに使用します。具体的な例としては、会社定礎や実務経験証明書、決算報告書、雇用契約書、資格証などで使われています。
原本証明の記載方法
原本証明には、規定されている決まりはありません。そのため、どのように記載すればよいのか悩んでしまう方も少なくありません。どのようなことを記載すればよいか、そのポイントをご紹介しましょう。
・書類裏面に「この写しは原本と相違がないことを証明します」「原本と相違はありません」などの旨を記載すること。
・原本証明をした日付を記載すること。
・会社名や代表者名の印鑑を使用する場合はゴム印でも可能。
・会社実印の取扱いがあるときは、押印を取締役などの責任者がする。
原本証明が複数ある場合
書類が2枚以上あり、製本するほどでもない場合は、書類をホチキスで綴じ、綴じ目に契印を押すという押印作業を行います。そして、原本証明を最終ページの余白に記載します。原本証明する書類が複数ページある場合は、製本テープを使って押印作業を簡略化することが可能です。ひとつひとつに契印を押す作業は時間と手間がかかりますが、製本テープを使って書類を製本するなら、製本テープにまたがって契印を押すだけなので、押印作業を簡略化できます。
製本テープを使用する主な書類には、重要事項説明書、利用契約書の背表紙作成、原本証明の必要な書類の背表紙など、全ページに契印を押すことが大変な書類などが該当します。なお、製本テープは、ホームセンターや文房具店などで販売されています。製本しやすいように最初からカットされているタイプのテープと、自分でカットするタイプがあるので、使いやすい方を選ぶことができるでしょう。
定礎の原本証明
みなさんは、「定款の写しについては、原本証明が必要となります。」という指示をみたことはありませんか?特に許認可申請などを行うときに、このような指示が出されています。では、ここまで見てきた原本、原本証明などの実例として、定礎の原本証明を例とし、原本や原本証明とはどのようなものなのかを詳しくみていきましょう。
定礎の原本証明との役割とは?
会社を法人登記するためには公証人によって認証された定礎が必要となります。作成した定款の原本は、公証役場と会社でそれぞれ1部ずつ保管することが義務付けられています。そして、公証役場は、原則20年間保存しなければいけません。
一方、会社では、株主や会社債権者などがいつでも閲覧したり、謄本や抄本の交付の請求をしたりできるように、定礎を本店もしくは支店に備え付けておくよう会社法で定められています。公証役場と会社の本店や支店では、保管されている定款の原本を提出書類として指定されることがあります。
しかし、定礎原本は保存する義務があるため、定款原本そのものを提出することはせず、定礎原本をコピーしたものを提出します。定款原本をコピーしたもの、つまり、定款の写しに、「原本証明」を記載します。そうすることで、原本証明が、定礎原本と同義であることを証明してくれます。
定礎の原本証明が必要になるときとは?
定礎の原本が必要となる主な場面には、行政機関への書類申請や金融機関との取引、税務署への法人設立届出書を提出するときなどが挙げられます。
・行政機関への書類申請をするとき
許認可申請や助成金申請を行政機関へする際、申請書と一緒に定礎原本を提出するよう求めらることがあります。受付窓口で直接申請する場合は、定礎原本を確認した後、すぐに返却してもらえます。しかし、郵送申請をする場合は、定礎原本を一緒に同封することはできないため、定礎の原本証明が必要となります。
・金融機関と取引をするとき
法人口座を開設するときや一定額を超える取引を行うときなど、金融機関によっては定礎の提出を求めてくることがあります。
・税務署へ法人設立届出書を提出するとき
会社を設立登記して2ヶ月以内に、管轄地区の税務署へ「法人設立届出書」を提出することが法令で定められています。その際の必要な添付書類として、定礎の写しの提出が求められています。原則1部ですが、資本金が1億円以上の法人の場合は2部提出する必要があります。なお、原本証明が必要、とは記載されていないため写しだけでも問題ありませんが、事前に確認されることをおすすめします。
定礎の原本証明の書き方
定款の原本証明を求められた場合は、原則として公証人による認証を受けていない「現行定款」の提出が必要とされています。公証人の署名が記載されている「原始定款」の提出を求められた場合は、その指示に従い、原始定礎を提出します。なお、会社を設立してから一度も定款内容に変更が生じていない場合は、「原始定款」が「現行定款」になります。
現行定礎、もしくは原始定款の必要とされているいずれかの定礎をコピーし、作成した後は、原本証明を余白に記載します。上記でもすでに解説しましたが、次のような内容を原本証明として記載します。
例:
この定款の写しは、原本と相違ないことを証明します。
令和〇〇年〇月〇日
住所○○
〇〇(正式な会社名)
代表取締役〇〇〇〇(役職と氏名) 印
上記はの例は、原本証明の一般的な方法です。原本証明について定められているルールは特にありませんが、注意すべき点があるかどうかを原本証明を作成する前に、申請窓口で確認することができるかもしれません。
では、電子定款で会社を設立した場合は、どうすればよいのでしょうか?電子定礎の場合は、まず公証役場に定款謄本の交付の請求、つまり、「同一情報の提供」を請求する必要があります。公証役場が、電子定款によって作成されたPDFデータをプリントアウト文章を作成してくれます。
同一情報の提供なので、電磁的記録に保存されている内容と同一であることの証明となります。なお、公証役場に同一情報の提供を依頼する際には、手数料が発生します。同一情報の提供手数料は、1通700円に、20円×定款ページ数+1枚(認証文)を合計した金額がかかります。
まとめ
原本、抄本、正本、謄本、副本などの意味や違い、また原本証明についてみてきました。経営者として事業を運営する上で、公的文章の提出を求められるシーンはよくあります。その際、原本そのものは提出することができないため、原本の写しに原本証明を記載して提出することが一般的となっています。ビジネスではもちろん、普段の行政上の手続きや申請の際にも、原本証明が必要となる場面はありますので、社会人としてしっかり理解しておくようにしましょう。
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