中途退職者は確定申告は必要?退職確定申告が必要なケースと手続き方法 | 税理士コンシェルジュ

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中途退職者は確定申告は必要?退職確定申告が必要なケースと手続き方法

2020年8月17日
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年の途中で中途退職をし、年度末に就職していない場合、確定申告が必要となることがあります。確定申告をすることで、払い過ぎた税金が戻ってきたり、翌年度の住民税の額が下がる可能性があるなど、確定申告をすることでメリットが得られるケースもあります。

この記事では、年の途中で退職した方にスポットをあて、中途退職後に確定申告が必要なケースや手続き方法について紹介していきます。

中途退職者は確定申告が必要?

そもそも「確定申告」とは何でしょうか?確定申告とは、1月1日から12月31日までに1年間の収入を確定し、その年に納めるべき納税額を決定させることです。一般的な会社員などの給与所得者の場合は、事業主が「年末調整」をしてくれるため、確定申告をする必要はありません。

では、確定申告と年末調整の違いとは何でしょうか?中途退職者が確定申告が必要かどうかを判断するためには、確定申告と年末調整の違いをしっかり理解する必要があります。

確定申告と年末調整の違い

給与所得者の場合、勤務先が年末調整を行うため、基本的に確定申告をする必要はありません。なぜなら、年末調整では、その年に支払う給与額が確定した時点で、毎月の給与から天引きしてきた源泉徴収税を精算するからです。

その際、経理担当者は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と「給与所得者の保険料控除及び配偶者特別控除の申告」を参考にしながら精算し、たいてい12月の給与支払時に、税金を納め過ぎた場合は還付、不足している場合は追徴します。

つまり、年末調整とは、勤務先が個人の代わりに確定申告をしている、ということです。このように年末調整は12月の給与支払い後に行われるため、12月時点で勤務していない場合は年末調整が行われない、ということです。

ただし、給与所得者だとしても、各種控除を受けたい場合は、確定申告をする必要があります。また、12月の最後の給与をもらう前に中途退職をし、その年に再就職しなかった場合も、確定申告が必要となります。

中途退職者が確定申告が必要な理由

では、なぜ中途退職者は確定申告が必要となるのでしょうか?中途退職者の中でも、確定申告が必要となるのはその年度に再就職をしなかった場合です。なぜなら、中途退職をし、その年に就職していない場合は、勤務先で年末調整を受けることができません。

つまり、税務署は、会社を退職したという事実を把握していません。また、中途退職をした方の中には、再就職をせずに自営業を始めたり、アルバイトやパートなどで収入を得る方もいます。そのため、中途退職後、正しい所得税を精算するためには、どうしても確定申告が欠かせません。

一方、中途退職をしても、その年に再就職をしている場合は、新しい勤務先で年末調整の対象者となります。そのため、退職した勤務先の分も含めて、新しい勤務先で年末調整をしてくれます。そのため、中途退職をしてもその年度内に再就職をしているのであれば、確定申告は不要となります。

ただし、新しい勤務先で年末調整を受けるためには、再就職先で同じ年の12月31日まで勤務していなければいけません。まとめるなら次のようになります。

【年の途中で退職し、年内に再就職した場合】
年の途中で退職し、その年に別の会社に再就職し、12月の給与が支払われる場合は、新しい勤務先の年末調整の対象者となります。そのため、退職した会社で発行された「源泉徴収票」を新しい勤務先に提出し、年末調整をしてもらえるため、所得税の精算・納税は完了します。したがって、確定申告をする必要ありません。

【年の途中で退職し、年内に再就職しなかった場合】
年の途中で退職し、その年中に再就職をしなかった場合は、所得税の精算が済んでいません。したがって、確定申告をすることで、所得税が還付されることがあります。そのためには、退職した翌年の2月16日~3月15日の確定申告期間に行うことができるでしょう。

では、なぜ還付される可能性があるのでしょうか?結論から述べるなら、年の途中で退職し、その後収入がない場合は、退職するまでの給与で所得税を多く納め過ぎている可能性があるからです。

そもそも毎月の給与や賞与で天引き(源泉徴収)されている所得税額は、扶養家族の人数や社会保険料などを参考にしながら、年税額で暫定的に計算し、毎月の給与から天引きしています。

したがって、収入がなくなっている状態であれば、所得税を納め過ぎている可能性があるので、確定申告をすべきと言えます。なお、所得税を還付してもらえる申告期限は、退職した翌年以降5年以内と定めています。

確定申告に欠かせない「源泉徴収票」

源泉徴収票とは?

源泉徴収票には、事業主が従業員に対して、1年間に支払った給与支払い額や控除した社会保険料の額、特別徴収した所得税の額などが記載されている確定申告には欠かせない重要な書類です。正社員だけでなく、パートやアルバイトなど雇用形態を問わず、事業主が従業員に対して「年末調整」を行い、毎年の給与支払い額が確定すると「源泉徴収票」が発行されます。

源泉徴収票をみれば、1年間に支払われた給与額と天引きされた源泉徴収税額が一目で把握することができます。したがって、この書類は確定申告の際に必要となります。

前職の源泉徴収票は大切に保管しておくこと!

年度の途中で退職した場合、年末調整を受けることができないため、「自分で確定申告をする」、もしくは「転職先(12月31日時点の)で前職分もまとめて年末調整をしてもらう」のどちらかをする必要があります。

前述したように、前者は退職後まだ次の就職先が決まっていない場合、後者は退職した後に再就職をした場合です。どちらのケースにせよ、「源泉徴収票」を必ず必要とするため、大切に保管しておきましょう。

源泉徴収票はいつもらえるか?

源泉徴収票は、1年間に支払れた金額が決定した時点で、該当年の税額も決定します。したがって、基本的に12月の給与や賞与の額が確定し、年末調整が終了した12月、もしくは1月に交付されるのが一般的です。

ただし、年の途中で退職した場合は、年末調整が行われません。そのため、通常、退職してから1ヵ月以内に勤務先から送付されることになっています。もし勤務先から源泉徴収票が発行されず、届かない場合は、勤務先に連絡をして発行を依頼されることをおすすめします。

なお、所得税法第226条によると、「事業者側は、従業員が中途退職した場合、退職後1ヵ月以内に源泉徴収票を2通発行しなければならない」と定められています。そして、そのうち1通は退職者、もう1通は税務署へ提出する義務があります。

前職で源泉徴収票を交付してくれないときは?

法律上で源泉徴収票を交付するよう定められていても、企業の中には、何度発行を依頼しても交付してくれないところもあります。もし依頼しても応じてもらえない場合は、税務署や労働基準監督署にその旨を相談されることをおすすめします。税務署や労働基準監督署から直接指導が入り、交付してもらえるでしょう。

それでも交付してもらえない場合は、「源泉徴収票不交付の届出書」を管轄地区の税務署に提出してください。税務署から税務指導が入り、源泉徴収票が交付されることでしょう。

また、前職が倒産したなどの理由で、連絡をとることが難しくなった場合は、「源泉徴収票不交付の届出書」を税務署へ提出してください。いずれにせよ、年度の途中で退職し確定申告が必要な場合は、早めに源泉徴収票を準備しておきましょう。

失業給付は収入として申告をすべき?

退職後、再就職先がなかなか決まらないときは、雇用保険で失業給付を受けられます。中途退職者の中には、「確定申告のとき、失業給付は収入として申告するのだろうか?」と疑問に思われている方もいることでしょう。

実は、失業給付は、収入とみなされていません。あくまでも再就職先が決まるまでの生活保障として給付されているため、収入ではありません。そのため、確定申告をする際には、失業給付を申告する必要はありません。

退職金を受け取った場合の確定申告は?

会社を中途退職する際、退職金を受け取ることもあります。このような場合、事前に勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているなら、所得税などが源泉徴収された金額の退職金が支払われます。そのため、確定申告をする必要はありません。

退職金を確定申告をする必要がある理由

では、なぜ退職金を確定申告をする必要があるのでしょうか?それは、一般的な所得に課せられる税金と、退職所得に課せられる税金は計算方法が異なるからです。退職金の場合、中途退職で受け取る退職金だとしても、長年の勤務に対する報酬、として退職金が支払われます。

そのため、一般的な所得に課せられる税金よりも負担が軽くなる仕組みとなっています。特に「退職所得」の場合は、勤続年数に応じて「退職所得控除」が適用されます。退職所得控除の計算方法は、次のようになっています。

・勤続年数が20年以下の場合
退職所得控除=40万円×勤続年数

・勤続年数が20年以上の場合
退職所得控除=800万円×70万円×(勤続年数-20年)

退職所得の確定申告が必要となるケースとは?

前述したように、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出している場合は、確定申告は不要です。つまり、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していない場合は、確定申告が必要となります。

未提出の場合は、退職手当から20.42%が源泉徴収されます。しかし、確定申告をすることで、源泉徴収された所得税と復興特別所得税が還付されます。

対象となる退職所得

退職所得には、退職をすることで勤務先から受けられる所得すべてが含まれます。それには退職金をはじめとし、社会保険制度から支給されるもの、生命保険会社から受け取る退職一時金、解雇予告手当なども退職所得に該当します。

払いすぎた所得税が戻ってくる確定申告「還付申告」

還付申告とは?

還付申告とは、確定申告の中でも払い過ぎた所得税が還付金として戻ってくる確定申告のことです。確定申告書を作成した後、申告納税額がマイナスであれば還付金として戻ってきますが、プラスであれば税金を追徴する必要があります。

年の途中で退職したため年末調整をしておらず控除がある場合や、退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合などは、還付申告をすることでメリットを得られます。

還付申告となる前提条件とは?

還付申告は、すでに徴収されている金額を上限として税金が戻ってくる、という制度です。つまり、所得税がすでに徴収されていることが前提条件です。ですから、確定申告でさまざま控除額を増やしたとしても、所得税が源泉徴収されていなければ、還付申告をしても所得税が戻ってくることはありません。

還付申告手続きに必要なもの

では、還付申告の手続きに必要なものをひとつづつ確認していきましょう。

・確定申告書
確定申告書には、様式Aと様式Bの2種類ありますが、還付申告の場合は様式Aを使うケースがほとんとです。中途退職後に再就職をしていない場合は、年末調整が行われていないので控除が発生する可能性があります。ですから、簡易な確定申告書である様式Aを選ばれることをおすすめします。

一方、退職金を受け取っているのに、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出しなかった場合は、確定申告書Bと、金額の明細を記入する「第3表」を作成する必要があります。

・源泉徴収票
確定申告では、源泉徴収票の原票を提出する必要があります。源泉徴収票には、収入や社会保険料など還付申告に必要な情報が記載されています。

・控除関連書類
各種控除を受ける場合は、関連書類を用意しましょう。例えば、国民健康保険料の金額が分かる控除証明書、国民年金などの社会保険料の控除証明書、生命保険や地震保険料の証明書、住宅ローンがある場合は住宅ローン残高証明書などを準備しておきましょう。

また、納税者本人とその配偶者や扶養親族の医療費の合計額が10万円以上かかった場合は、それを証明する領収書などを提出することで医療費控除の対象者となります。

還付申告の期限

通常、確定申告は翌年の2月15日から3月15日の期間に申告しますが、「還付申告」に関しては、翌年の1月1日以降であればいつでも申告することが可能です。上記の必要書類が整い次第、すぐに手続きをすることができるでしょう。そうすれば確定申告時期の混雑を回避できるだけでなく、還付金の振込みを早めに受け取れます。

なお、確定申告は、過去5年間遡って手続きが行えます。「数年前の多額の医療費を確定申告するのを忘れてしまった・・」とか「生命保険料控除を受けずに確定申告を提出してしまった・・」など、過年度の税金を正しく計算した結果、所得税が還付されることに気づいたのであれば、速やかに還付申告の手続きを行いましょう。

なお、5年経過してしまうと、税金を納め過ぎたままの状態で、還付を受け取る権利がなくなってしまいます。

【事業者側】退職所得の申告期限と処理手続き

では続いて、事業者側の観点からみていきましょう。従業員が退職した場合、事業者側は何をすればよいのでしょうか?事業者側は、退職者から「退職所得の受給に関する申告書」を受取り、市区町村の役場に「特別徴収異動届出書」を提出し、各種税金を納めなければいけません。では、事業主が行うべき流れをみていきましょう。

ステップ①退職者から「退職所得の受給に関する申告書」を受け取る
退職する従業員に退職手当を支払う場合は、「退職所得の受給に関する申告書」を提出するよう伝えます。そして、従業員から申告書を受け取ったなら、手元に保管しておきます。もし提示するよう求められた場合は、速やかに提示してください。

ステップ②市区町村の役場に「給与支払い報告書・特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」を提出する
特別徴収とは、住民税を毎月の給与から控除し、事業主が従業員の代わりに各市町村の役場に納税することです。従業員が退職することになったら、特別徴収が不要となります。

したがって、「給与支払い報告書・特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」を、市町村の役場に提出しなければいけません。これにより退職した役員や従業員に対して、今後住民税の特別徴収をしないことを報告することになります。

なお、この書類は、退職した年の1月1日に住む市町村の役場へ提出します。また、特別徴収をしていない場合は、この書類の提出は不要です。

ステップ③住民税を納める
特別徴収した住民税は、退職金を支給した翌月の10日までに納付する必要があります。その際、「特別徴収納入書申告書」に必要事項を記載し、申告書と一緒に住民税を支払います。

ステップ④源泉所得税を納める
退職金に源泉徴収税がかかる場合は、通常の源泉所得税の納付書に退職金の明細を記載し、源泉所得税を納付します。

まとめ

中途退職をした方の中には、確定申告をすることで還付金が戻ってくるケースがあります。確定申告をしたほうがいいのは、

①年の途中で退職し年内に就職しなかった人、
②退職時に退職手当が支給されたが「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった人、
③前職で源泉徴収票を発行してくれず、再就職先の年末調整に間に合わなかった人、

などです。該当する方は、確定申告を行うと還付金が戻ってくる可能性があるので、忘れずに確定申告を行いましょう。

一方、事業主側は、従業員が退職する場合、速やかに「源泉徴収票」の交付手続きを行うようにしましょう。また、退職手当を支給する場合は、事業主が行うべき手続き忘れずに行いましょう。もし手続き面で分からないことがあれば、管轄地区の税務署や信頼できる税理士に相談することもひとつの方法です。

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