中小機構ってどんな機関?企業の成長ステージに合わせた支援を一挙ご紹介
中小機構とは、中小企業を支援するためにつくられた国の機関です。正式名称は「独立行政法人中小企業基盤整備機構」といい、経済産業省傘下で運営しています。では、中小機構と名前で親しまれているこの機関は、どんな機関で、どのような役割を果たしているのでしょうか?この記事では、中小機構について詳しく解説していきます。
目次
中小機構とは?
略称「中小機構」と呼ばれる独立行政法人中小企業基盤整備機構」は、国の中小企業政策を支援する機関として幅広い分野にわたってサービスを提供しています。対象となる企業の起業・創業支援から企業の成長期、成熟期まで支援サービスを展開しています。具体的には経営相談、事業再生、人材育成、販路開拓、資金提供などベンチャーや中小企業の成長段階に合わせて経営支援をしています。中小機構で提供している支援には、次のようなものがあります。
・起業&創業期
インキュベーション事業、TIP*S(ティップス)、BusiNest(ビジネスト)、地域資源活用、農商工連携、新連携など
・成長期
販路開拓、オンラインマッチング、海外展開など
・成熟期
事業継承&引継ぎ、事業再生、設備投資支援、中心市街地活性化支援など
・ステージ共通支援
経営相談、専門家派遣、人材育成、資金提供、情報提供など
では、これらの支援の具体的な内容をみていきましょう。
中小機構の独自の「無料相談」支援
中小機構では、中小企業に関するさまざまな課題や悩みについて、無料の相談を受け付けています。具体的には資金調達、人材育成、財務、法律、知的財産などの幅広い経営に関する課題について、各種専門家が相談に応じてくれます。相談者の希望に応じて対面、電話、メール、オンラインなどで、回数に制限なく無制限で相談することができます。
対面による経営アドバイス
中小機構の対面による無料相談は、全国9ヵ所の地域本部で行われています。中小企業支援の専門家が、今までの経験や実績を生かしたアドバイスをしてくれます。なお、相談や予約制となっています。
電話による経営アドバイス
中小機構の電話による無料相談は、平日9時から17時までとなっています。「がんばる中小企業経営相談ホットライン(050-3171-8814)」という名称で、電話による経営相談を受け付けています。固定電話をはじめとし、携帯電話、IP電話からでも相談することができますが、通話料金は相談者の負担となっています。
メールによる経営アドバイス
中小機構のメールによる無料相談は、24時間いつでも好きなタイミングで受け付けています。専用のWebフォームに相談内容を入力し、相談するなら、相談受付日の翌日から原則3営業日以内にメールにて回答を受け取ることができます。なお、専用のWebフォームは、初回と2回目以降ではWebフォームが異なりますので注意してください。
オンラインによる経営アドバイス
中小機構のオンラインによる無料相談は、AIチャットボットによる「E-SODAN」で24時間365日、チャット式の相談を受け付けています。AIチャットボットで質問に対する答えが解決できなかった場合は、専門家によるオンラインのチャット相談をすることができます。なお、中小機構の専門家とのチャットは、平日10時から17時までとなっています。
AIチャットボットによる相談は難しいと思われている方もいるかもしれませんが、とても簡単に相談することができます。大まかな利用方法は、次のようになっています。
ステップ1:質問をチャット画面下の入力欄に入力する
チャットボットに選択肢が提示された場合は、該当するものを選びます。例えば、「経営について相談したい」をクリックすると、「小規模企業共済について」「企業・創業について」などが表示されます。該当するものが表示されたら、クリックしましょう。
ステップ2:回答の表示と回答の感想
質問に対する回答がなされます。その回答に対して該当するマーク絵文字マークをクリックします。また、アンケートフォームも表示されますので、意見がある方はご自由に入力することができます。
ステップ3:右上の横三本線をクリックする
右上の横三本線をクリックすると、「はじめから」と「閉じる」のボタンが表示されますので、該当する方をクリックします。
中小機構と国が連携している「よろず支援拠点」
中小企業や小規模事業者にとって、経営上の悩みは常にあるものです。「後継者がいない・・」「売上がなかなか伸びない・・」など各企業によって悩みは絶えることがありません。そんな経営上の悩みに応えてくれるのは、中小機構と国が連携した「よろず支援拠点」です。
よろず支援拠点では、売上拡大や経営改善などの経営上に生じる課題を解決するために、専門的な提案をしてくれたり、相談内容に応じた適切な支援機関を相談したりなど、悩みひとつひとつに合った支援策をしてくれます。
よろず支援拠点の3つの魅力
魅力1:総合的で先進的な経営アドバイスでサポート
よろず支援拠点には、幅広い分野の専門家が常に揃っています。さまざまな観点から総合的で先進的なアドバイスをしてくれます。
魅力2:課題解決に向けた編成したチームでサポート
相談者の経営課題にぴったりの専門家チームを編成し、課題解決に向けて全力でサポートします。
魅力3:どんな課題にも応じたワンストップサービス
よろず支援拠点では、どんな相談でもワンストップでの解決を約束しています。
相談から解決までの流れ
では、よろず支援拠点はどのような流れで利用することができるのでしょうか?
ステップ1:お近くのよろず支援拠点へ相談をする
よろず支援拠点は、相談回数に制限を設けていません。課題を解決できるまで、何度でも相談することが可能です。相談内容は、人材確保から商品開発、海外展開まで経営上に関することであれば、何でも対応してくれます。電話やメールなどで予約を受け付けていますので、まずはお近くのよろず支援拠点のホームページから問い合わせをしてみましょう。
ステップ2:コーディネーターによるヒアリングを受ける
よろず支援拠点では、相談者ひとりひとりにコーディネーターが専属でつきます。まずはチーフコーディネーターに抱えている課題や悩みについて相談してみましょう。編成されたチームで、課題にむけて実際的な解決策を提案してくれます。
ステップ3:提案後のフォローアップを受ける
提案された解決策に取り組んでいる相談者を、全面的にサポートします。サポートをしている途中で、新たな課題が見つかった場合は、新たな課題についても解決に向けてサポートします。
企業や創業を支援する「インキュベーション施設」
中小機構は、起業や操業するために活動している人を支援するインキュベーション施設を提供しています。英語の「(たまごなどが)ふかする)」という意味を持つインキュベーション(Incubation)という名前の通り、起業家の育成や中小・ベンチャー企業などの支援を行うためにインキュベーション施設を運営しています。
この施設は、起業家のための支援付きオフィスレンタルとも言えます。そして、インキュベーション施設の最大の目的は、入居した起業者の事業拡大と事業成功のために支援することです。そのため、入居した起業者の新規事業が軌道に乗るように、入居から卒業までの期間、常駐するインキュベーションマネージャーによる経営相談やサポート、産学官連携、ネットワーク構築などを受けることができます。
インキュベーション施設によって異なりますが、インキュベーション施設が利用できる期間は、1年間と決められています。しかし、3~5年間延長することも可能な施設も多くあります。また、インキュベーション施設の利用費用は、公的機関の相場は1平方メートルあたり2,500~3,000円程度、民間業者は10,000~15,000円程度となっています。
中小機構が運営する学びと実践の場「TIP*S(ティップス)」の利用
中小機構は、東京駅付近に「TIP*S(ティップス)」と呼ばれる新しい学びの場の運営をしています。年間約200回のワークショップや各種企業イベントなどを開催し、全国の起業家や中小企業経営者など参加者同士で対話がしやすい雰囲気を作り上げ、学びやすい環境を整えています。
対話から新たな気づきや発想につながり、自ら考え、行動するための刺激を受けあう場となっています。「TIP*S」という名前の通り、「TIP」である会話と想像で行動への力となるコツが見つかり、「*」は印がつけたくなるヒントがたくさんある、そんな場所となっています。
中小機構が運営する育成の場「BusiNest(ビジネスト)」
中小機構が運営している多摩地区に開設された「BusiNest(ビジネスト)」は、中小企業の新事業の展開を支援する拠点となっています。「BusiNest」を日本語に直訳すると、「ビジネスの巣」という意味があります。つまり、新たなビジネスのたまごとして、ビジネスに取り組んでいる方を対象とし、この施設でたまごを温め、1つでも多くのビジネスが巣立つことを目的としています。
BusiNestでは、創業に興味はあっても何から取り組んだらよいのか分からない創業予備軍の育成をはじめとし、女性や若者、シニア層など創業を検討している方のタイプに合わせたビジネスモデルを支援しています。特に女性の就業率向上の貢献に力を入れており、女性が創業活動をしやすい環境を提供しています。
具体的には、女性支援者の登用やキッズルームの整備、女性限定の講座など女性に配慮した実際的な環境が用意されています。また施設によっては、交流コーナーでゆったり会話できる場所や、ビジネスに関する書籍が充実している図書館、朝昼晩リーズナブルな価格で食事がいただける食堂などが併設されているところもあります。もちろん、専門家によるアドバイスも受けられるので、新規事業を検討している方にはチャレンジしやすい場所と言えるでしょう。
新事業の全面的なサポート
中小機構では、新たな事業に取り組もうとする中小企業やベンチャー企業などに全面的なサポートをしています。市場調査からはじまり、商品企画、専門家による事業計画、販路開拓のフォローなど最初から最後まで支援を受けることができます。主に「地域資源活用」「農商工等連携」「新連携」の3つの分野からサポートします。
・地域資源活用
中小機構は、全国各地にある地元ならではの農林水産物、鉱工業品、観光資源などの地域資源を活用し、新商品や新サービスを開発しようとしている中小企業を支援します。
・農商工等連携
中小機構は、中小企業が農林魚産業との連携を図り、経営資源を有効活用できるよう支援します。
・新連携
中小機構は、複数の中小企業者を連携させ、各自の強みとなるスキルやアイデアを提供しあうことで、新商品や新サービスなどを創り出すよう支援することもあります。
中小企業と世界をマッチさせる「J-GoodTech(ジェグテック)」
「J-GoodTech(ジェグテック)」とは、中小機構が運営する日本の中小企業と国内大手企業・海外企業を結びつけるビジネスマッチングサイトです。国内だけにとどまらず、国外の企業にまで情報を発信し、最適なビジネスパートナーを見つけてくれます。登録企業同士であれば、直接の商談や情報交換をしたり、マッチングしたりすることも可能です。
また希望する方は、中小機構のコーディネーターによるマッチングサポートを受けることもできます。J-GoodTechには、海外企業約7,300社、大手パートナー企業約500社と、国内中小企業約17,000社が登録しています。登録している企業は海外支援機関(政府機関)や中小機構、自治体に推薦された企業ばかりです。幅広い業種の企業が登録しているので、幅広く事業を展開したい方は、最適なビジネスパートナーを見つけるができるジェグテックを利用してみる価値があると言えるでしょう
創り手とバイヤーを結ぶ「Rin crossing(リンクロッシング)」
「Rin crossing(リンクロッシング)」とは、中小機構が創り手とバイヤーを結びつけているプロジェクトです。全国各地域で商品を作っているメーカーと、新たな商品を求めているバイヤーをつなぐことを目的としています。各地域のメーカーにとっては、国内外やECサイトなど販路の拡大や、バイヤーやクリエイターとの商品コラボ、商談や販促などのノウハウの獲得などさまざまなメリットが得られます。
バイヤーにとっても、日本各地の優れた地域資源商品を効率よく見つけることができたり、メーカーとの協同によるオリジナル商品の開発したりなどのメリットが得られます。
中小機構が運営する「事業引継ぎ支援センター」
中小機構では、「中小企業事業引継ぎ支援全国本部」として、「事業引継ぎ支援センター」をサポートしています。事業引継ぎ支援センターは、全国47都道府県に設置されており、常時している専門家が、事業引継ぎに関連する課題を解決するための実際的なサポートをしています。具体的には、円滑な事業引継ぎのための構築、M&Aに関するアドバイスや研修、情報提供、マッチング支援などが行われています。
中小機構の「助成金制度」
中小機構には、都道県と一体となって組成したファンドがあり、このファンドから企業を支援するために助成金を受けることができます。具体的には、「地域中小企業応援ファンド」と「農商工連携型地域中小企業応援ファンド」と呼ばれる2種類のファンドが用意されています。この2種類のファンドの最大の特徴は、無利子の融資が受けられるという点です。
ファンドの財源は、中小機構と都道府県の出資と、地域中小企業応援ファンドが国際と地方国債を購入することで得られる収入となりたっています。ファンドを利用したい中小企業は、審査にクリアすると助成金を受け取ることができます。都道府県単位で造成されているため、地域名により名称は若干異なっています。また、各都道府県によって助成額が異なりますが、平均的な貸付期間は約10年となっています。では、2種類のファンドには、それぞれどのような特徴があるのでしょうか?
・地域中小企業応援ファンド
地域中小企業応援ファンドは、各地域の農林水産物や伝統技術を活用した商品開発や販路開拓を全面的にサポートしています。
・農商工連携地域中小企業応援ファンド
農相工連携型地域中小企業応援ファンドは、中小企業者と農林業者を連携させ、商品開発や販路開拓を全面的にサポートしています。
なお、地域中小企業応援ファンドは、「スタート・アップ応援型」と「チャレンジ起業応援型」の2つのタイプに分かれており、利用対象者が異なっています。
中小機構の「中心市街地活性化支援」
中小機構は、中心市街地の活性化にも力を入れています。具体的には、中心市街地の商業活性化を目指した個別事業の実施や、課題を解決するための無料セミナーや研修などの「セミナー型支援」、専門家チームによるアドバイスなどの「プロジェクト型支援」などを行っています。具体的な実例として、歴史ある商店街をリノベーションして活性化させたり、観光客を呼びこむ環境を提供するなど、全国各地で数多くのまちづくりをしています。
中小機構の「新型コロナウイルス感染症に関する支援」
中小機構では、新型コロナウイルス感染症により影響を受けている中小企業や小規模企業者の支援も行っています。具体的には、次のような支援が行われています。
・新型コロナウイルス感染症に関する経営相談窓口
中小機構では、新型コロナウイルスに影響を受けている中小企業や小規模企業を対象に「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」を設け、経営上の相談を受けつけています。
・生産性革命推進事業に係る支援
中小機構では、サプライチェーンの毀損などに対応するための支援を行っています。具体的には、設備投資や販路開拓、事業継続力強化に資するテレワークツールの導入などに取り組む事業者を対象とした補助金を講じています。
・新型コロナウイルス感染症特別利子補給事業
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫が実施している支援です。利子相当分を助成金として支払うことで、実質的には無利子での利用が可能となっています。
・都道府県制度融資への無利子化支援
「都道府県制度融資への無利子化支援」は、中小企業や小規模企業を対象とた支援です。利子相当分を助成金として支払うことで、実質的には無利子での資金繰りが可能となります。
・小規模企業共済制度の特例措置
「小規模企業共済制度の特例措置」は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて著しく業績が悪化した小規模企業共済を契約している方を対象とした特例措置です。緊急経営安定貸付の貸付利率を無利子化するなどの措置が講じられています。
・経営セーフティ共済制度の特例措置
「経営セーフティ共済制度の特例措置」は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて著しく業績が悪化した経営セーフティを契約している方を対象とした特例措置です。共済金の償還期日の繰下げなどの措置が講じられています。
まとめ
中小機構が提供している支援サービスについてご紹介しました。中小機構は創業支援から事業再生など、企業の成長ステージに合わせた実際的な支援を提供している機関です。すべてを紹介することはできませんでしたが、ここで紹介したサービスは特におすすめの支援サービスです。まだ利用したことがない方は、この機会に利用を検討してみられるのはどうでしょうか?
税理士コンシェルジュは、2008年サービス開始より株式会社タックスコムが運営する税理士専門の紹介サイトです。会計の実務経験を活かし、これまで1000名以上の税理士と面談し、1万件以上の相談実績がある税理士選びの専門家です。
サービス内容としては、税理士の口コミから無料相談・厳選した税理士の紹介まで提供しております。
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