特定口座の確定申告| 口座の種類と確定申告書類の書き方を解説
金融機関が用意している口座のひとつに「特定口座」があります。特定口座とは、どのような口座なのでしょうか?本記事では特定口座の種類や特定口座と確定申告の関係性について解説します。
目次
特定口座とは?
特定口座とは、証券会社などの金融機関が提供している口座のひとつです。金融機関側が本人に代わり、1年間で発生した取引の記録から損益を計算し、「年間取引報告書」を作成してくれます。
よって、確定申告をスムーズに済ませることができるため、多くの投資家が特定口座を利用しています。また、確定申告が不要となるケースもあります。
なお、特定口座を開設する場合は、証券会社に「特定口座開設届」を提出し、上場株式等保管委託契約、もしくは上場株式等信用取引契約を締結しなければいけません。
参照:国税庁「特定口座制度」
特定口座の種類
株や投資信託をするため証券会社が用意している特定口座は、以下の通りです。
1、源泉ありの特定口座
2、源泉なしの特定口座
3、NISA口座
4、一般口座
ここでは、源泉ありの特定口座と源泉なしの特定口座の特徴についてご紹介します。
源泉ありの特定口座(源泉徴収選択口座)
「源泉あり」の特定口座とは、証券会社で譲渡益に対して課される税金を計算し、売却代から差し引いた金額を口座に振り込んでくれます。利益の一部である配当金や分配金についても、売買益と損益通算をすることができます。
そのため、原則、確定申告は不要です。確定申告をする手間が省けるため、多くの方が「源泉あり」の特定口座を選んでいます。ただし、少額運用を考えている方は、注意が必要です。
給与所得が2,000万円以下の場合は、年間の株式などの譲渡益が20万円以下であれば、課税されません。つまり、確定申告は不要です。
しかし、源泉ありの特定口座では、譲渡益が20万円以下でも自動的に納税してしまい、支払った税金を戻すことができません。
なので、少額運用の場合は、「源泉なし」の特定口座を選んだ方がいいと言えるでしょう。ただし、利益が20万円を超えた場合は、確定申告の義務が生じます。
また、損益計算後、売却損の場合は、過払金が発生する可能性もあります。しかし、他の口座の損益や配当と通算することが可能です。このような場合は、確定申告をした方が節税につながります。
源泉なしの特定口座(簡易口座)
「源泉なし」の特定口座とは、証券会社は売却損益の計算はしてくれますが、税金の計算や納税はしてくれません。そのため、売却益だった場合は、確定申告をする必要があります。
「源泉あり」「源泉なし」のメリットとデメリット
特定口座を開設するにあたり、両者のメリットとデメリットを把握しておくことは大切です。
源泉ありのメリット
・原則、確定申告は不要。
・「特定口座年間取引報告書」を作成してもらえるため簡単に確定申告ができる。(確定申告をする場合)
・確定申告をしなくても、譲渡所得が配偶者控除や扶養控除を判定する際の所得基準に合算されない。
・損失が出た場合、確定申告をすれば、一般口座などの譲渡曽根期と通算することができ、還付を受けたり、繰越控除を受けたりすることができる。
源泉ありのデメリット
・給与所得者や年金所得者の場合、年間20万円(20万円以下は申告・納税が不要)の利益だとしても、自動的に税金が引かれてしまう。
・源泉あり、なしを問わず、他の取引との損益通算には対応していない。
・損失が出た場合は、確定申告をしないと繰越控除が受けられない。
源泉なしのメリット
・年間20万円以下の利益であれば、確定申告・納税は不要。
・確定申告をするとしても、「特定口座年間取引報告書」を作成してもらえるので、スムーズな手続きが可能。
源泉なしのデメリット
・年間20万円以上の利益がある場合は、税金の計算、申告、納税が必要。
・譲渡所得が配偶者控除や不要控除を判定する際の所得基準に合算される。
「特定口座年間取引報告書」とは?
「特定口座年間取引報告書」は、税法に基づき、証券会社が作成・交付する書類です。以下の項目が記載されています。
・特定口座を開設した人の氏名、住所
・口座開設の日付
・源泉徴収の有無
・(その年中に譲渡した上場株式等の)譲渡対価の額
・取得費及び譲渡に要した費用の額等
・譲渡損益の金額(信用取引の差引金額)
・源泉徴収税額
これらの情報が記載された年間の譲渡損益等が集計された報告書です。
特定口座確定申告の流れ
特定口座の確定申告は、通常の確定申告同様、国税庁のホームページに用意されている「確定申告書作成コーナー」やネットで提出できるe-Taxを利用することができます。ただし、用意する書類は内容が異なるため注意しましょう。
必要書類
特定口座の確定申告に必要な書類は、以下の通りです。
・確定申告書B(第一表、第二表、第三表)
確定申告書にはAとBの2種類ありますが、特定口座確定申告では、譲渡所得の申告に必要なBを使います。株式譲渡所得の場合は、確定申告書B(第一表、第二表)と第三表が必要です。
・個人番号
・本人確認書類
・印鑑
注意点:従来は確定申告書の添付書類として特定口座年間取引報告書の提出も必要でした。しかし、平成31年4月1日以降、手続きの簡素化が図られ、特定口座年間取引報告書の添付は不要です。
上場株式等に係る譲渡損失と配当所得等を損益する場合は、以下の書類も必要です。
・確定申告書付表「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用」
・株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
確定申告の手順について
ここでは、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用した手続き方法をご紹介します。
1,国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスする。
2,入力方法選択の画面で「作成開始」ボタンを選択する。
3,「e-Tax」「書面提出」か、提出方法を選択する。
4,生年月日を入力する。
5,「収入金額・所得金額入力」ページで、収入金額・所得金額の入力する。
6,配当所得がある場合は、課税方法を「総合課税」「申告分離課税」「配当等がない」の中から選択する。
7,その後、「特定口座年間取引報告書の内容を入力する」ボタンをクリックする。
8,特定口座年間取引報告書の内容をもとに、「源泉徴収の有無」「譲渡の対価の額(収入金額)」「取得費及び譲渡に要した費用等」「金融商品取引業者等」の項目を転機する。
9,「上場株式等の譲渡損失の金額を繰越しましたか?」の質問に対して「いいえ」を選択する。
10,「入力終了(次へ)」をクリックする。
11,入力した内容に基づいて計算結果が表示されるので、金額を確認し「確認終了」をクリックする。
書面で提出の場合は、最後まで入力した後、書類を印刷できるページへと移行します。書類を印刷し、捺印し、必要書類を揃えて郵送で提出すれば、確定申告は終了です。
まとめ
特定口座の種類や特定口座年間取引報告書、確定申告に必要な書類、手順などについてご紹介しました。特定口座の開設を検討している方は、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の特徴を理解した上で、自分の用途に合った口座を選ぶようにしましょう。
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