軽減税率で確定申告はどうなる?事業者が知っておくべき軽減税率の対応とは? | 税理士コンシェルジュ

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軽減税率で確定申告はどうなる?事業者が知っておくべき軽減税率の対応とは?

2020年5月18日
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2019年10月1日から消費税の標準税率が10%に引き上げされたのと同時に、「軽減税率制度」が実施されています。それまではどんな商品やサービスを購入したとしても、消費税は同じ税率で統一されていました。しかし、軽減税率制度導入後は、購入する商品やサービスによって消費税10%と軽減税率8%と変わってきます。事業者はそれに対応していく必要があります。

この記事では、軽減税率制度が事業者に与える影響や確定申告に与える影響、軽減税率制度の対応や対策など事業者が知っておきたい基礎知識について解説していきます。

軽減税率制度とは?

軽減税率とは、消費税の引き上げに伴い、消費者の税金の負担増を和らげることを目的に導入された制度です。2019年10月1日から消費税が8%から10%へと引き上げられましたが、軽減税率制度を導入することで、低所得層の生活が苦しくならないよう配慮しています。そのため、生活必需品などの一定の商品やサービスなど限られたものは、消費税率が低くなる仕組みとなっています。

具体的には、「酒類・外食を除く食料品」と「週2回以上発行される定期購読新聞」などの税率は、そのまま8%になります。この軽減税率制度を導入することで、消費税が10%と8%の両方が混在しています。

なぜ増税する必要があるのか?

では、なぜこのタイミングに政府は消費税を増税したのでしょうか?それは社会保障費の財源を確保するためです。現在、日本では少子高齢化が社会問題となっています。なぜなら、働き手となる現役世代が減少することで、税金や社会保険料などの財源もそれに比例して減少の一方を進む中、高齢者が増えるため年金や介護、医療などの社会保障の支出が増えているからです。

もし社会保障費の財源を確保するために、所得税や法人税の引き上げをするなら現役世代だけにその負担が大きくのしかかってきます。一方、消費税を増減すれば、幅広い商品やサービスに一律に課されるため、特定の世代だけでなく、高齢者も含めた国民すべてで負担することになります。また、景気に左右されることなく財源を確保できるというメリットもあります。そのため、社会保障費の財源を確保するために、消費税を増減したのです。

現在までの消費税のあゆみ

国民にとって消費税は当たり前の税金となっていますが、みなさんは消費税がいつから始まったかをご存知ですか?消費税は平成と共に始まりました。そして、新元号となった「令和」に消費税が10%へと増税、まや軽減税率制度が導入されたのです。ではここで、消費税の歴史を簡単に振り返ってみましょう。

・昭和54年(1979年)
一般消費税導入が打ち出される

・昭和62年(1987年)
売上税法案が国会に提出される

・昭和63年(1988年)
消費税法が成立

・平成元年(1989年)
消費税法が施行され、4月1日より税率3%の消費税がスタート

・平成6年(1994年)
消費税増税の法案が成立

・平成9年(1997年)
4月1日より税率5%の消費税がスタート

・平成26年(2014年)
4月1日より税率8%の消費税がスタート・2015年10月の増税が2017年4月に延期

・平成28年(2016年)
2017年4月から2019年10月へ増税が延期

・令和元年(2019年)10月
消費税率が10%に増減、軽減税率制度の導入

このように消費税の歴史を振り返ってみると、平成から令和にかけて3回、段階的に増税されました。増税される度に、慣れるまでに時間がかかるものです。そして、今回の増税に関しては、軽減税率制度が導入されるため、国民はもちろん、事業所もそれに対応していく必要があります。

軽減税率制度導入に伴う事業者に求められる対応とは?

軽減税率制度の導入に伴い、軽減税率の対象となる売上や仕入がある事業者は、今までの記載事項に税率ごとの区分を追加した請求書の発行や帳簿づけなどの経理を行うよう求められています。また、課税売上にかかる消費税から、課税仕入などにかかる消費税を控除する「仕入税額控除」を受けるためには、区分を記載した請求書の発行と区分を整理した帳簿を保存する必要もあります。

区分記載請求書とは?

区分記載請求書とは、「区分記載請求書等保存方式」の請求書のことです。軽減税率制度導入前は、請求書に発行者の氏名や名称、取引年月日、取引の内容、対価の金額、請求書受領者の氏名や名称などの記載事項を記載する必要がありました。しかし、2019年10月1日から2023年9月30日までは、それら従来の項目に加えて、「軽減税率対象品目である旨の記載」と「異なる税率ごとに区分した税込の合計金額」の項目を新たに追加する必要があります。

区分経理とは?

従来の帳簿では、課税仕入れの相手の氏名もしくは名称、課税仕入れを行った年月日、課税仕入れの資産もしくは役務の内容、課税仕入れの額の4つの記載事項を記載していました。しかし、「区分記載請求書等保存方式」の請求書を使用することに伴い、帳簿づけにも変更箇所がでてきました。それは、決算と消費税の確定申告を見据えて、消費税10%と軽減税率8%のそれぞれを区分して帳簿づけすることです。

具体的には、仕訳の摘要欄に軽減税率ら衣装品目を記載することや、税率区分欄で10%と8%に区分するなどが挙げられます。日々の帳簿づけで税率を区分しておくなら、決算や確定申告のときに集計しやすくなります。

軽減税率が確定申告へ与える影響とは?

軽減税率は、確定申告にどのような影響を与えるのでしょうか?そもそも消費税を直接負担しているのは消費者ですが、それを預かって国に納税しているのは法人や個人事業主などの事業者です。しかし、すべての事業者に消費税の納税義務が課せられているわけではなく、一定の要件を満たしているなら消費税の納税義務が免除される「免税事業者」となります。

免税事業者の条件とは?

免税事業者の条件とは、①課税期間の前々年の1月1日~12月31日までの課税売上高が1,000万円以下であること、②個人事業主の場合は前年の1月1日~6月30日までの期間の課税売上高と給与等の支払額が1,000万円以下であること、の2つを満たしているなら「免税事業者」になります。なお、新規で事業を始めた場合は、2年目までは基準期間が存在しません。したがって、この場合は売上に関係なく免税事業者に該当します。

課税事業者は税率ごとに納税を!

免税事業者に対し、消費税の納税義務が課せられている「課税事業者」は、毎年税務署に「消費税及び地方消費税の確定申告書」を提出し、消費税を納めることが義務付けられています。軽減税率制度が導入されたことで、課税事業者は、売上と仕入をそれぞれの税率ごとに区分して消費税額を計算し、消費税を納めるよう変更が加えられています。

軽減税率制度導入に伴う個人事業主やフリーランスへの対応とは?

軽減税率制度が個人事業主やフリーランスに与える影響とは、免税事業者であれば、記載事項に税率事に区分した追加の請求書などの発行と区分経理をすることです。

税額計算の特例

中小企業者にとって、売上と仕入れを税率ごとに計算し、納めるべき消費税の額を計算することは容易なことではありません。そのため、売る上や仕入れを消費税率ごとに区分することが難しい中小企業は、2019年10月1日から2023年9月30日までを特別な限定措置期間として、売上や仕入れの一定の割合を軽減税率の対象の売上や仕入れとして税額を計算することが可能となっています。

なお、この特例の対象となる事業者の種類と税額の計算方法は、次のようになっています。

(軽減税率の対象となる売上)
・仕入区分できる卸売業と小売業の場合
「売上×軽減税率対象の割合=軽減税率対象となる売上」
なお、軽減税率対象割合とは、軽減税率対象品目の課税仕入(税込)・課税総仕入(税込)のことです。

・仕入区分できる卸売業と小売業以外の中小企業の場合
「売上×軽減税率対象の割合=軽減税率対象となる売上」
なお、軽減税率対象売上の割合とは、連続する10営業日の軽減税率対象品目の課税売上(税込)・連続する10営業日の課税総売上(税込)のことです。

・上記以外の計算が難しい中小企業者の場合
「売上×軽減税率対象の割合=軽減税率対象となる売上」
なお、軽減税率対象とされる売上の割合とは、課税総売上の2分の1のことです。

(軽減税率の対象となる仕入)
・売上を区分できる卸売業と小売業の場合
「仕入×軽減税率対象の割合=軽減税率の対象となる仕入」
なお、軽減税率対象仕入の割合とは、軽減税率対象品目の課税売上(税込)・課税総売上(税込)のことです。

・上記以外の中小企業者の場合
消費税簡易課税制度の利用が可能

消費税簡易課税制度とは?

消費税簡易課税制度とは、複雑な消費税の納税額の計算を回避することができる制度です。この制度を利用することで、計算の手間や時間などの負担を軽減できます。この制度の利用条件を満たしている事業主は、実際の課税仕入などの税額の計算は不要となっています。したがって、「課税売上にかかる消費税額×みなし仕入率」という計算式、つまり、課税売上高から仕入控除額を算出することが可能となっています。

なお、この制度を利用するための条件とは、①課税期間の前々年もしくは前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下、②原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前月までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出している、の2つの条件を満たしている必要があります。

消費税の「経過措置」とは?

原則、消費税は商品やサービスの提供が行われた時点での税率が適用されるものですが、税率の切り替え時には一部の取引にズレが生じることがあります。そこで切り替えをスムーズに行うために、消費税の「経過措置」が適用されます。つまり、2019年10月の増税に伴い、軽減税率制度の導入に加えて、消費税率の「経過措置」も行われるということです。

なお、国税庁は、10種類の取引に関して経過措置をとっています。契約の時期や内容によって、消費税引き上げ後も旧税率を適用できるものもあるので注意しましょう。国税庁が定めている10種類の取引には次のようなものです。

①旅客運賃、映画、演劇、遊園地、美術館などの入場料金など
②電気、ガス、水道などの料金
③工事や製造などの請負工事
④資産の貸付け
⑤冠婚葬祭など指定役務のサービスの提供
⑥予約販売の書籍など
⑦特定の新聞の購読
⑧通信販売の取引
➈有料老人ホームによる介護サービス
⑩家電リサイクル法に該当するする再商品化など

まとめ

消費税が引き上げされ、軽減税率制度が導入したことで、軽減税率また複数税率ごとの区分経理が必要となっています。また、消費税の申告書の様式も税率ごとに計算し、申告しなければいけません。免税事業者の方は特に対応する必要はありませんが、取引先から区分記載請求書等保存式を発行するよう求められることもあります。

ですから、免税事業者や課税事業者など関係なく、経営者や経理担当者であるなら、軽減税率制度や消費税の経過措置についてしっかり理解しておくようにしましょう。


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