退職確定申告は必要?退職金確定申告で税金が戻ってくるのはどんな人? | 税理士コンシェルジュ

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退職確定申告は必要?退職金確定申告で税金が戻ってくるのはどんな人?

2020年5月15日
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今まで勤めてきた会社を退職する際には、勤務年数に応じて退職金を受け取ることが一般的となっています。そのため、退職金は基本的に会社で源泉徴収をするため確定申告が不要ですが、場合によっては確定申告が必要となるケースや確定申告が不要でもしたほうがよいケースがあります。この記事では、退職金にかかる税金の種類や確定申告をしたほうがいい具体的なケースなどについて解説していきます。

退職金の確定申告は基本的には不要

退職金を受け取る際、ほとんどの場合は会社で源泉徴収が行われているため、退職金の確定申告は基本的に必要ありません。なぜなら、退職する会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで、退職金から各種税金が徴収されるからです。しかし、ある特定の条件に当てはまる場合は、確定申告を行うことで払いすぎた税金の還付金が戻ってくる可能性もあります。

退職金は「退職所得」

退職金は、「退職所得」と呼ばれている所得のひとつで、退職する際に受け取ることができる一時的なお金のことです。退職所得には退職金以外にも、解雇予告なしで解雇された場合に給付される解雇予告手当、国から受け取る未払い賃金、社会保障制度から支給される一時金、保険会社や信託会社からの退職一時金なども該当します。

これら退職所得は一時的な収入なので、税負担を軽減するために控除の制度が適用されます。なお、退職金の控除額の計算方法は2種類あり、勤続年数が20年以上か、それとも勤続年数が20年未満かにより控除額が変わってきます。

勤続年数が20年未満の場合は、「勤続年数×40万円(80万円未満の場合は80万円)」という計算式で退職控除額を求めます。勤続年数に端数がでる場合は、原則切り上げて計算します。例えば、15年6ヶ月で退職した場合は、16年×40万円=640万円となります。つまり、退職金が640万円以下であれば、全額控除の対象となるため税金がかかりません。

一方、勤続年数が20年以上の場合は、「800万円+(勤続年数-20年)×70万円」という計算式で退職控除額を求めます。先ほど同様、勤続年数に端数がでる場合は、切り上げて計算します。例えば、23年6ヶ月で退職した場合は、「800万円+(24年-20年)×70万円=1,080万円」となります。つまり、退職金が1,080万円以下であれば、全額控除の対象となるため税金はかかりません。

退職金にかかる税金とは?

控除額を超えて退職金を受け取った場合は、退職所得として扱われます。したがって、所得税と住民税の対象となります。

退職所得にかかる所得税

通常、所得税の計算は「累進課税制度」が採用されていますが、退職所得にかかる所得税は「分離課税」という方法で計算します。独立して計算することで、退職所得の税率を軽減させています。退職所得にかかる所得税は、「退職所得×税率-退職所得控除額」という計算式で算出します。所得に応じた税率は、次のようになっています。

・課税退職所得金額が1,000円から1,949,000円までの場合
税率:5%
控除額0円

・課税退職所得金額が1,950,000円から3,299,000円までの場合
税率:10%
控除額:97,500円

・課税退職所得金額が3,300,000円から6,949,000円までの場合
税率:20%
控除額:427,500円

・課税退職所得金額が6,950,000円から8,999,000円までの場合
税率:23%
控除額:636,000円

・課税退職所得金額が9,000,000円から17,999,000円までの場合
税率:33%
控除額:1,536,000円

・課税退職所得金額が18,000,000円から39,999,000円までの場合
税率:40%
控除額:2,796,000円

・課税退職所得金額が40,000,000円以上の場合
税率:45%
控除額:4,796,000円

退職所得にかかる住民税

退職所得にかかる住民税は、その他の所得同様、退職所得に10%をかけた金額になります。なお、10%のうち6%は市町村税(特別区民税)、4%が都道府県民税(都民税)となっています。

退職金を確定申告したほうがよい3つのケース

先述したように、一般的に退職金は会社で源泉徴収をするため、確定申告をする必要はありません。しかし、中には例外となるケースや確定申告をすることでお得になるケースがあります。ここでは退職金を確定申告したほうがよい4つのケースを詳しくご紹介します。

ケース1:「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合

通常、会社を退職するときには「退職所得の受給に関する申告書」を提出します。この申告書には、退職金を受取る人の氏名、住所などの基本情報を記入することに加え、別の会社でも退職金を受け取っている場合は、源泉徴収票を添付する必要があります。申告書を会社に提出することで、会社は退職金にかかる所得税を正しく計算することができるようになります。

しかし、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出しないケースが生じることが稀にあります。もし申告書を提出していないと、会社や税務署はその人がほかの会社から退職所得を受取っているかどうかを判断することができません。そのため、正しい退職所得が分からないため、一律20.42%という非常に高い税率で源泉徴収をします。つまり、所得税の払い過ぎになります。そこで退職金にかかる所得税を計算して確定申告することで、納めすぎた所得税の一部が戻ってきます。

自分が「退職所得の受給に関する申告書」を提出したかどうか覚えていない場合は、勤務先で発行された源泉徴収票の金額と、上記で先述した退職所得にかかる税金を計算し確認してみましょう。

ケース2:会社を退職した同年内に再就職をしていない場合

年度途中で退職した場合は、確定申告をすることで還付金が戻ってくる可能性が高いです。なぜなら、退職した会社では年末調整を行っていないからです。そもそも年末調整とは、1月1日~12月31日までの1年間における所得と所得税を計算し、すでに徴収した額と確定した額を精算する制度です。給料にかかる所得税は、毎月源泉徴収されていますが、源泉徴収時には生命保険料や医療費などの各種控除などは考慮されていません。

しかし、実際はそれらの費用をすでに支払っており、源泉徴収で計算された所得よりも少なくなっているため、年末に正しい所得額を再計算し、その差額を還付金という形で払い戻しするのが年末調整です。この年末調整は通常、勤務先で年末行われますが、年度途中で退職した場合は年末調整が行われていません。つまり、源泉徴収された税金はそのままになっているため、自分で確認申告をしなければ、払い過ぎた税金が戻ってこないのです。

ですから、年度末に退職し、同年内に再就職をしていない方は確定申告をしたほうがよいと言えます。いずれにしても、年末調整をしていない方の場合は、受け取った給与に対して確定申告をする必要があるので、その際に退職金の確定申告も一緒に行うことができるでしょう。

ケース3:再就職をしたが収入が大きく減少した場合

再就職をしても年間の収入が少なくなったことで控除しきれない場合は、再就職をしなかったのと同じように確定申告をすることで税金が戻ってくる可能性があります。また、以前は正社員として勤めていたが、パートやアルバイトなどの雇用形態で転職した場合も、確定申告をすることができるでしょう。

ただし、転職先では、前職分も含めた年末調整をしてくれますので、必ずしも確定申告をしなければならないということではありません。転職先で年末調整をする場合は、退職する際に勤務先で発行された源泉徴収票が必要となりますのて用意しておきましょう。

ケース4:副業で赤字がある場合

最近は自由な働き方が推奨されているため、本業の会社員として働きながら副業をしている方も珍しくありません。ネット事業や不動産投資、株投資などの副業が赤字になっている場合は、確定申告をすることで退職所得と相殺できる可能性があり、還付金が戻ってくるかもしれません。不動産投資や事業所得が赤字の場合は、「損益通算」という制度を利用することで、所得から赤字を差引くことができます。

ただし、損益通算で相殺する所得は順番が決まっています。まず所得から差し引き、それでも赤字が残ってしまう場合は、退職所得から差引くことができます。複雑な仕組みの制度なので、会計の専門的な知識が必要になりますので、専門家である税理士に相談しながら確定申告をされることをおすすめします。

退職金を確定申告する手続きの方法

確定申告を行う期間は、毎年2月16日~3月15日と決まっています。(令和2年度につき、新型コロナウイルス感染症拡大予防に伴い、確定申告期間が延長しています)そのため、年のはじめに退職をしている場合は、翌年の確定申告まで長い期間があります。そのため、忘れてしまいがちになりますが、確定申告をすることで還付金を受けられる可能性もあるので、忘れずに確定申告を行うようにしましょう。では、退職金はどのように確定申告すればよいのでしょうか?その手続き方法について確認していきましょう。

退職所得の確定申告に必要な書類

退職所得の確定申告には、次の書類が必要となりますので事前に準備しておきましょう。

・確定申告書と申告書第三表
確定申告書は、税務署の窓口で直接用紙を受け取ることもできますし、国税庁の公式ホームページからダウンロード印刷したものを使用することもできます。また、インターネット上で手続きを行うe-taxを利用することも可能です。

・源泉徴収票
源泉徴収票は、勤務先から年末調整後に発行される書類です。年度の途中で退職した場合は、その時点までの源泉徴収票の発行を勤務先へ依頼しましょう。

・支払調書(副業をしていた場合)
所得税法に規定されている報酬額が、一定額を上回っている場合は、支払調書の提出の対象となります。つまり、すべての人が必ず提出する書類ではありません。

・各種控除に必要な書類
各種控除を受ける場合は、それに必要な書類を準備しなければいけません。例えば、生命保険料などの控除証明書や社会保険料の納付書などが挙げられます。

・通帳と印鑑
確定申告書類には、還付金を受け取るときの口座情報を記入する項目があります。口座番号が分かる通帳と認印を準備しておきましょう。

確定申告書の書き方

確定申告書には、様式Aと様式Bの2種類用意されています。様式Aの確定申告書は、主に給与所得者や公的年金、雑所得者の方を対象としています。つまり、一般的な会社員、パート、アルバイトなどの方が利用するものです。退職金の確定申告であれば、様式Aの利用になります。

一方、様式Bの確定申告書は、所得の制限がないので誰でも利用することができます。年間15万円以上の副収入がある方や個人事業主の方などは様式Bの利用になります。どちらの様式を利用するにしても、源泉徴収票に記載されている支払金額、源泉徴収税額、社会保険料などの金額、所得金額などの情報が必要になります。

なお、確定申告書第一表の「給与」の欄の所得金額に関しては、収入金額に応じた計算式が定められています。計算式は次のようになっています。

・給与などの収入金額が1,800,000円以下:収入金額×40%(650,000円に満たない場合は、650,000円)

・給与などの収入金額が1,800,000円超~3,600,000円以下:収入金額×30%+180,000円

・給与などの収入金額が3,600,000円超~6,600,000円以下:収入金額×20%+540,000円

・給与などの収入金額が6,600,000円超~10,000,000円以下:収入金額×10%+1,200,000円

・給与などの収入金額が10,000,000円超:2,200,000円(上限)

退職金の確定申告は5年前まで遡ることが可能!

退職金の確定申告を忘れてしまったとしても、退職金に対する還付金の届出は過去5年前まで遡って申告することができます。税金が還付される場合は、5年以内であれば税金を取り戻すことができるので、心当たりがあるなら確定申告をされることをおすすめします。

退職金はふるさと納税の控除対象になることもある

ふるさと納税とは、自分が選んだ地方自治体に寄附をすると、税金還付・控除上限額内に関して、2,000円を超える部分の税金が控除されるしくみになっています。寄附をした地方自治体からは返礼品、つまり、特産品をもらうことができるため、近年話題となっています。このように寄附をすることで特産品がもらえるお得制度であることに加え、退職金の控除対象になる可能性もあります。

先述したように、退職金にかかる住民税や所得税は分離課税に該当します。そのため、自治体によって上限額に影響するケースとしないケースがあります。ですから、事前に自治体に問い合わせをし、ふるさと納税の上限額を確認されることをおすすめします。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出しても確定申告をすると得するのか?

退職する際に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していれば、所得税は正しく計算されています。しかし、先述したように確定申告をすることで特になる人もいます。それは、年の途中で退職した人で、その年の収入が少なかった場合は、確定申告をすることで還付金が戻ってくることがあるので確定申告をすると得するかもしれません。

また、所得税を計算する際に、給与所得の額が少なく、所得控除を差引くことができなかった人も確定申告で得する可能性があります。なお、所得控除には、配偶者控除や扶養控除、基礎控除、寡婦・寡夫控除、障害者控除、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、雑損控除などが多くの種類の控除が該当します。

退職金確定申告の相談は税理士に!

退職金の確定申告で還付が受けられるかどうか、確定申告の手続き方法や必要書類などがよく分からないなど、退職金確定申告の不安を抱えている方もいることでしょう。そのような場合は、専門家である税理士に相談されることをおすすめします。税理士は確定申告のプロですから、確定申告や節税の相談をはじめとし、確定申告の代理をしてくれるので、正確な確定申告を行うことができます。時間と手間も省けるので、まずは相談からしてみるのはどうでしょうか?

まとめ

退職した人は基本、確定申告を個人で行う必要はありません。しかし、確定申告をすることで所得税が還付されることがあります。本来支払わなくても良い税金を納めたままでいるのは、もったいないことです。過去5年前まで遡り、退職金確定申告をすることが可能ですので、この機会に過去の退職金まで見直すことができるでしょう。

また、転職や退職などは誰もが経験することですので、すでに転職や退職をした方をはじめとし、社会人として働いている方は、退職金の確定申告の基礎的な知識や必要な手続き、申告方法などについてしっかり理解しておくようにしましょう。


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