労災とは?雇用主も従業員も知っておくべき労災制度の基礎知識 | 税理士コンシェルジュ

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労災とは?雇用主も従業員も知っておくべき労災制度の基礎知識

2020年4月29日
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仕事中や通勤中などに負ってしまったケガや病気などは、「労災保険」を利用することで手厚い保証を受けることができます。労働者であれば、労災の請求方法やどのようなときに給付金を受け取ることができるかを理解しておくことは大切です。また、雇用主であれば、従業員から労災の申請があった場合、どのように手続きをすればよいかを理解している必要があります。

この記事では、労災保険の手続き方法やその流れ、請求時のポイントなど労災保険について徹底解説していきます。

労災とは?

労災とは、「労働災害」の略称名です。労働災害は、業務災害と通勤災害の2つに大きく分類することができます。業務災害とは、業務上に生じたケガや病気、死亡、通勤災害は、通勤中のケガや病気、死亡が該当します。

なお、業務災害に関しては、労働基準法で定められている業務上疾病に該当する場合に保障されます。では、業務上疾病とはどのようなものでしょうか?簡単にまとめるなら、業務上疾病とは、業務に従事していることが原因で生じた災害が該当します。

労災保険とは?

労働は、国民の最大義務のひとつであり、生活のために仕事(労働)をすることが現代社会の基盤となっています。そのため、通勤中や仕事中にケガや病気、死亡などの労災に遭うリスクは誰にでも生じる可能性があります。そこで、国は、労災による損害に関して「労働者災害補償保険法(労災保険法)」と呼ばれる法律を定めました。

この法律によって、労災による損害が保障されています。つまり、「労災保険」、正しくは、「労働者災害補償保険」のことです。労災保険は社会保険のひとつであり、労災の補償の対象となると、労働者災害補償保険法に基づいて申請手続きを行うことで、必要な給付を受けることが可能となります。

なお、労災保険は、健康保険の傷病手当よりも手厚い補償となっており、療養の自己負担は一切なく、休業時の手当も手厚い、という特徴があります。

労災保険の保険料は誰が支払う?

労災保険は、雇用保険や健康保険などの社会保険のひとつですが、他の社会保険の保険料のように給与から徴収されていません。では、誰が労災保険を支払っているのでしょうか?労災保険の場合、制度上、労災保険の保険料は全額、雇用主が支払うことが規定されています。したがって、労働者は労災保険の保険料を支払う必要はありません。

労災保険の対象者とは?

法律上、労災保険はパートやアルバイトなど雇用形態に関係なく、労働者を1人でも雇用しているなら、労災保険に加入することが求められています。それには事業の業種や規模の大小などは問われていません。万が一、労災保険に加入していない場合は、雇用主はペナルティを受けることになります。ですから、原則として、雇用形態や勤務形態を問わず、すべての労働者が労災保険に加入していることになります。

労災保険の対象となる基準

労災保険の給付を受けるためには、業務災害の認定基準に基づき、事業所所在地を管轄している労働基準監督署が認定します。では、業務災害と通勤災害のそれぞれの労災の基準をみていきましょう。

業務災害の場合

業務災害で労災の給付対象と認定されるためには、労災を発生した原因が「業務起因性」と「業務遂行性」の2つの要件を満たしている必要があります。

①業務起因性
業務災害の要件となっている業務起因性とは、業務中の行為が原因で発生した労災のことです。つまり、業務で行ったことと、ケガや病気、死亡との間に、因果関係があるものが該当します。その業務をしていれば、ほかの人でも同様の災害が生じる可能性があった労災とも言えるでしょう。例えば、社内の階段から足を踏み外してケガをした場合は、誰にでも生じる可能性がある事故なので、業務起因性として認められます。

一方、長時間勤務やパワハラなどが原因でうつ病になった場合、業務に起因していると断定することはできません。なぜなら、業務も関係しているかもしれませんが、私生活上でのストレスなども影響している可能性もあります。したがって、業務起因性として認定することは難しいでしょう。

②業務遂行性
業務遂行性とは、雇用主による管理下にある状態でケガや病気、死亡などを負うことです。業務時間中に仕事をしている最中に傷病を負った場合は、明らかに雇用主の管理下のもとと言えるため業務遂行性と認定できます。

具体的には、工場のライン作業中や社内でパソコン操作中などは社内で業務をしている場合や、営業の外回りや出張など社外で業務をしている場合などが当てはまります。これには、いつもは事業所内で内勤の仕事をしているのに、たまたま外回りの仕事をしている最中に、外で傷病を負った場合も、業務遂行性として認められています。

それに加え、休憩時間中で、業務に従事していなかったときも業務遂行性に含まれます。ただし、実際には業務をしていないので、社内の施設の不備により災害が生じたときのみ該当します。例えば、椅子が壊れかけてるのに、会社が放置していたため転倒事故が起きた場合は、業務災害として認められます。一方、休憩時間に吸っていたタバコの火でやけどをした場合は、会社の責任ではなく、個人の問題となるため、労災とは認められません。

通勤災害の場合

通勤災害とは、通勤中に遭った災害が労災の給付対象として認められます。通勤中とは、住居から勤務地までの往復、勤務地から他の就業場所への移動、単身赴任先の住居と帰省先の住居の間の移動などが該当します。通勤災害として認められるかどうかの判断は、次の3つがポイントとなります。

ポイント1:就業に関わるものか?
例えば、休みの日に勤務先へ忘れものを取りにいく途中で事故に遭った場合は、就業とは関係ありません。そのため、たとえ勤務地に向かう途中であったとしても、通勤災害としては認められません。

ポイント2:通常の通勤経路を逸脱や中段をしていないか?
通勤途中に逸脱したり、通勤を中断して関係のない行為を行っていないかどうかで、通勤災害になるかどうかが判断されます。例えば、勤務先を退出した後、自由参加の飲み会に出席するなら、その時点で逸脱や中段とみなされます。つまり、業務中ではないので、通勤災害として認められません。

また、その日だけ私用により、勤務先から自宅へ帰宅せず、他の場所へ移動することも通勤途中とはみなされません。しかし、通勤途中にコンビニで買い物をしたり、診察のために病院に立ち寄ったり、子どもの保育園や学童の送迎をしたりなどの日常的な行為は、逸脱や中段とはみなされません。

ポイント3:通勤経路が合理的か?
合理的な経路であれば、会社に申請している以外の経路で通勤しても特に問題はありません。しかし、通勤経路をあえて遠回りする場合は、通勤には該当しないため、何かに遭っても通勤災害として認められません。

労災の認定は労働基準監督署が行う!

上記でみた業務災害の認定基準をもとに、事業所所在地を管轄している労働基準監督署が労災の認定を行います。基準を満たさない災害は、労災とは認定されませんので、給付対象外となります。

なお、労災は提出した必要書類をもとに、当事者本人や雇用側へのヒアリングをすることもあります。それらに基づき、認定と給付が行われます。ですから、申請する際には、勤務中や通勤中であればすべて労災に該当するわけでないことを踏まえ、業務災害の認定基準についてある程度理解しておくようにしましょう。

労災の補償内容・給付の種類について

では、要件を満たして労災として認められると、どれくらい給付を受けることができるのでしょうか?給付は、補償の種類によって変わってきます。では、労災の種類と補償内容をひとつづつみていきましょう。

療養補償給付

療養補償給付とは、ケガや病気が治癒するまで無料で診察や治療などが受けられる補償です。治癒とは、症状が固定された状態、つまり、一般的な医療を受けてもその効果が期待できない状態のことも含まれます。したがって、症状が固定された状態になった場合は、療養補償給付は終わりとなり、障害が残る場合は生涯補償給付の対象として扱われます。

なお、療養補償給付には、「療養の給付」「療養の費用の支給」「通院費」の3種類に大きく分類されています。

・療養の給付
労災病院や労災指定医療機関で、療養そのものを無料で受けることができます。

・療養の費用の支給
指定医療機関以外で治療を受け、後日、その費用全額が給付されます。

・通院費
通院の交通費も一定の要件を満たしている場合は、給付の対象となります。要件とは、住所地もしくは勤務地から原則として2キロ以内で、同一市町村の適切な医療機関へ通院している必要があります。

障害補償給付

障害補償給付とは、ケガや病気が治療をしても完治せず、障害として残ってしまった場合に、その程度に応じで障害給付が行われる給付のことです。障害の程度に応じて1~14級に分類されています。1~7級までは「障害補償年金」が給付され、8~14級までは「障害補償一時金」が給付されます。

休業補償給付

休業補償給付とは、業務災害もしくは通勤災害による傷病の治療のために働くことができず、賃金を受けることができないときに適用される給付です。働けなくなった日の4日目から、1日あたり休業給付(補償)として給付基礎日額の60%相当額が給付されます。また、働けなくなった日の4日目から、休業特別支給金として1日あたり給与基礎日額の20%相当額が給付されます。

なお、業務災害による休業の場合は、労働基準法第76条に基づき、最初の3日分を会社側が平均賃金の60%を補償することになっています。会社の倒産などの理由で、最初の3日分の補償を受け取ることができない場合は、「休業補償特別援護金」が支給されます。

遺族補償給付

遺族補償給付は、死亡したときに、遺族の人数などに応じて遺族補償年金、もしくは遺族補償一時金が給付されます。

・遺族補償年金
遺族補償年金を請求できる遺族、つまり受給資格のある対象者は、被災労働者死亡当時、その収入で生計していた方が該当します。具体的には、配偶者(内縁関係を含む)、子ども(3月31日まで18才である子)、孫、祖父母(60才以上)、兄弟姉妹などが挙げられます。

・遺族補償一時金
遺族補償一時金は、被災労働者の死亡当時、遺族補償年金を受ける遺族が失権し、他に遺族年金を受ける方がいない場合に給付されます。

葬祭料葬祭給付

葬祭料葬祭給付は、業務災害もしくは通勤災害により死亡した方の葬祭を行うときに支給される給付です。315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額が、葬祭料として給付されます。ただし、その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分が給付されることになります。

傷病補償年金

傷病補償年金とは、ケガや病気の療養開始後、1年6ヵ月を経過しても傷病が完治しない場合や障害等級などに該当する場合に、障害の程度に応じで給付が行われることです。

障害の程度に応じて、給付基礎日額の313~245日分までの年金が給付されます。また、特別支給金として、障害の程度に応じて100~114万円までの傷病特別支給金、障害の程度に応じて算定基礎日額の313~245日分の傷病特別年金が給付されます。

介護補償給付

介護補償給付とは、労災によって重い後遺障害を受け、介護が必要となった場合に給付される補償のことです。この給付を受けるためには、次の4つの要件すべてを満たす必要があります。

1、障害補償年金、もしくは傷病補償年金の第1級、もしくは第2級で精神神経・胸腹部臓器に障害が残り、常時もしくは随時介護を要する状態であること
2、民間の有料介護サービスや親族・友人・知人などから現在、介護を受けていること
3、病院などに入院したり、障害者支援施設などで生活介護を受けていないこと
4、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などに入所していないこと

その他の給付

上記でみたものは、労災補償給付の中の主だったものです。その他にも「未支給の保険給付」「労災就労保育援護費」「長期家族介護者援護金」「労災就学援護費」「アフターケア」「外科後処置」「義肢等補装具の費用の支給」「二次健康診断等給付」などがあります。

労災保険金の給付の請求方法

業務災害もしくは通勤災害の要件に当てはまれば、手厚い補償を受けられる労災ですが、給付を受けるためには、どのような手続きをすればよいのでしょうか?さまざまな給付がありますが、どの給付を受けるにせよ申請手続きが必要です。

労災が発生した場合、労災保険金の給付の請求は、勤務先が労働基準監督署に対して行うことが基本となっています。次のような流れで、手続きを行います。

手順1:労働者から勤務先の労災担当部署に対して、労災の発生の報告を受ける
手順2:勤務先の担当部署は、請求書記載事項に基づいて、労働者にヒアリングをする
手順3:労働基準監督署に対して、給付の請求書を提供する
手順4:労働基準監督署から、聞き取りなどの調査がある(必要な場合)
手順5:労働基準監督署が労災保険給付を決定する

このように、労災保険請求の手続きは、基本的には勤務先の部署の担当者が中心となり、手続きを進めていきます。しかし、勤務先が手続きを進めてくれない非協力的なこともあります。なぜなら、その後、労災保険料の多く納める必要があるからです。そのため、労災が発生した場合、それを隠したがる事業所も少なくありません。しかし、発生してしまった労災を隠すことは、犯罪行為に値します。

会社が非協力的な場合は、自ら手続きをすることが可能です。個人で手続きをする場合は、次のような手順で行います。

手順1:補償の種類に応じた必要な請求書を入手する
管轄地区の労働基準監督署、もしくは厚生労働省のホームページから、補償の種類に応じた請求書をダウンロードし入手します。必要な請求書は次のようになっています。

・療養補償給付(労働保険指定医療機関で受診した場合):「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第5号)」
・療養補償給付(労働保険指定医療機関以外で受診した場合):「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)」
・障害補償給付:「障害補償給付支給請求書」
・休業補償:「休業補償給付支給請求書」
・遺族補償給付:「遺族補償年金支給請求書」「遺族補償一時金支給請求書」「遺族補償年金前払一時金請求書」
・葬祭料請求:「葬祭料請求書」
・傷病補償年金:「傷病の状態等に関する届」
・介護補償給付:「介護給付支給請求書」「介護補償給付支給請求書」

手順2:請求書に必要事項を記入する
入手した請求書の必要事項をすべて記入します。請求書には、事業主が災害の発生状況などが記載内容通りであることを証明するための著名する欄もあります。仮に事業主の署名を得ることが出来ない場合は、記載内容はすべて不備となります。もし事業主から署名を得ることができない場合は、労働基準監督署に相談してください。

また、補償の種類によっては、療養などをした医療機関などに傷病名や傷病の経過などを記載してもらう項目もありますので協力してもらいましょう。

手順3:請求書と添付書類など必要書類を労働基準監督署へ提供する
請求書が完成したら、補償の種類に応じて必要となる添付書類を一緒に添えて、管轄する労働基準監督署へ提出します。なお、労働保険指定医療機関で受診した場合のみ、受診した医療機関へ提出します。

手順4:労働基準監督署が労災保険給付を決定する
労働基準監督署は、請求書の内容に基づいて、調査を行います。その後、労働災害や通勤災害に該当するかどうかを判断し、その結果に基づいて労災保険給付を決定します。

なお、個人で給付申請をする場合は、給付を受けるまでに時間がかかります。そのため、給付されるまでの間は、受診や治療に係った費用を立て替えることになります。その際、立て替えでは健康保険を使うことができません。したがって、療養の内容によっては、立て替え額が高額となることもあります。

しかし、労災病院、もしくは労災指定医療機関を受診するなら窓口での支払いが不要となります。ケガや病気で療養補償給付を受ける場合は、指定医療機関を受診するなら安心と言えるでしょう。この場合は、「療養の給付請求書」が、その医療機関を経由して、労働基準監督署へ提出するという流れになります。

労災病院は、全国に33あります。詳しい所在地については、独立行政法人労働者健康安全機構のホームページで検索することができます。また、労災指定医療機関につきましては、厚生労働省のホームページで所在地や診療科目などを確認することができます。

労災の申請になる必要な書類とは?

では、労災の申請では、具体的にどのような書類が必要となるのでしょうか?労災の申請に必要な請求書類は、各給付の種類によって異なっています。さらに、業務災害用と通勤災害用でも異なります。

例えば、療養補償給付(労働保険指定医療機関を受診)の場合、「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第5号)」という書類が必要となります。この書類は、医師または歯科医師用、はり・きゅう用、訪問看護用などに細かく分類されています。また、障害補償給付の場合は、レントゲン写真などを求められることもあります。

労災の申請手続きには期限がある!

労災の申請手続きには、期限があります。手続きの期限を過ぎてしまうと、給付や給付を受ける権利が時効により消滅してしまいます。ですから、労災保険に該当する場合は、期限内に手続きを済ませるようにしましょう。

手続きの期限が2年の補償には、療養補償給付、休業補償給付、葬祭給付、介護補償給付、二次健康診断給付などが該当します。手続きの期限が5年の補償には、障害補償給付、遺族補償給付などが挙げられます。なお、労災病院や労災指定医療機関における療養の給付に関しては、現物給付なので時効はありません。

労災が発生したときに事業主がすべき義務

労働者災害に関わる補償は、雇用主が全額負担することが義務となっていますが、従業員が1人でもいる事業所は、労災保険に加入することが義務付けられているため、補償に関わる費用は全額免除されます。しかし、労働災害が発生したときは、事業所側は、次の3つの対応をする必要があります。

・待期期間の賃金の補償
休業補償給付を申請をする際の待期期間である3日間の賃金は、事業所側が補償することが義務となっています。休業補償給付金制度では、平均賃金の60%を支払うよう定められています。

・労働者死傷病報告書の提出
労働者災害により、従業員の死亡、もしくは休業が発生した場合は、直ちに労働者死傷病報告書を提出することが求められています。

・安全衛生管理の見直し
雇用主には、労働者の安全を確保することが義務付けられています。つまり、労働安全衛生法に基づく安全衛生管理の責任を果たすことが求められています。労災が起きてからではなく、定期的に安全衛生管理の見直しをすることはとても重要です。

過労死や過労自殺も労災の対象

よくニュースで見聞きするのは、過労死や過労自殺などの労災です。交通事故などの突発的に生じる事故とは違い、過労死や過労自殺の場合は、ある程度長期にわたる業務状況が原因となります。したがって、過労死や過労自殺の認定には、基準が設けられています。

過労死の認定基準

労災における過労死とは、過重な労働により、脳出血などの脳血管疾患や心筋梗塞などの心臓疾患などが発症し、死に至ることです。過重な労働は状況にもよりますが、死亡直前の1ヶ月間に約100時間、もしくは死亡前の2ヶ月から6ヶ月の間の残業時間が80時間を超えている場合は、過労死としてみなされる可能性が高くなります。

しかし、実際、過労死として労災認定を受けるためには、先ほどの労働時間に加えて、業務環境や精神的な緊張など業務特有の事情も判断の材料として考慮されます。つまり、長時間労働で亡くなったとしても、すべて労災をして認定されるという保証はありません。

過労自殺の認定基準

過労自殺は、過労死とは異なり、故意による行為です。したがって、業務起因性の有無が労災を認定する上で考慮されます。例えば、過重労働により睡眠不足やストレスが起因となり、精神的な疾患へとつながり自殺をした場合は、業務起因性として労災が認められます。ただし、自殺については、精神的な疾患をすでに持っていたり、プライベートによるストレスの影響なども考えられるため、精神的は疾患が発症した原因が認定の判断基準となります。

労災補償だけでは補償が足りない場合は?

労災補償だけでは、補償が足りないというケースもあります。そのようなときは、労災保険から給付を受けることに加えて、雇用主や加害者から賠償してもうらうことができます。つまり、雇用主や加害者に対して損害賠償請求をすることです。

労災保険から給付されるのは、休業に関する補償や後遺障害が残った場合など、特定のケースの補償に限定されています。俗に言う慰謝料は、給付の対象外となっています。そこで、労災の発生に雇用主や加害者に責任がある場合は、慰謝料を請求することができます。

労災で注意したいこと

労災の給付と同じ事由で公的年金も給付される場合は「併給調整」される

労災の給付と、遺族年金や障害年金などの公的年金は併給することができます。しかし、併給する場合は、併給調整により、労災の給付額が減額されます。併給調整は、両方の制度から受け取る年金の合計額が、被災前の賃金よりも高額になることを避ける目的で行われます。したがって、障害年金は、本来支給されるべき水準の金額は給付されます。

フリーランスでも労災に特別加入できる業種がある

個人事業主やフリーランスなどは、原則として労災は対象外となっています。しかし、職種や業務内容によっては、労働者同様保護されるのが適当と判断されるものもあります。そのような職業に該当する場合は、任意で労災に特別加入することができます。この制度は「特別加入制度」と呼ばれています。対象となっている職業には、大工やとび職人などの建設業、個人タクシーや個人運送業、漁業者などが該当します。

労災トラブルにあったらまずは相談を!

労災の申請手続きや、雇用主や加害者に対して損害賠償の手続きを行う場合、すべてがスムーズに進むという保証はありません。もし何らかのトラブルや分からないことがあった場合は、労災請求に関してまずは相談しましょう。相談できる窓口には、労働基準監督署、厚生労働省や各自治体の窓口、社労士事務所、弁護士事務所などが挙げられます。

特に労働基準監督署に関しては、労災の請求を受ける機関なので、相談する適切な窓口と言えるでしょう。請求方法や請求用紙の入手方法などは、労働基準監督署に相談することができるでしょう。労働基準監督署は、従業員を雇用している各事業所が、労働基準に沿って職業環境を整えているかどうかを確認している機関です。労働者向けの相談窓口が設けられているので、労災に関してはもちろん、勤務先の労働基準で不満なことがある場合は相談することができるでしょう。

また、厚生労働省や各自治体の窓口でも、労災に関して無料で相談することができます。電話で相談が可能な「労災保険相談ダイヤル」を利用すれば、労災手続きに関する手順を詳しく押してくれます。さらに専門家である社会保険労務士や弁護士などに相談することもひとつの方法です。トラブルが生じているときや損害賠償を請求したいときなどは、心強い味方になってくれることでしょう。

まとめ

労災の意味や労災保険の種類、給付金を受けるための手続きなどについてみてきました。業務災害や通勤災害などの労災は、手厚い補償を受けることができる制度です。どのような制度があるのかを知っておくなら、万が一のときに役立つことでしょう。また、事業所側は、労災が発生しないよう安全衛生管理を定期的に見直し、安全な職場環境を提供できるよう常に心掛けていきましょう。


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