謄本と抄本の違いって何?登記簿謄本の目的や取得方法など詳しく解説!
確定申告で住宅ローン控除の申請をするときや、家などを売却する際に必要となる「登記簿謄本」ですが、謄本には「謄本(とうほん)」「抄本(しょうほん)」という2つの言葉があることに多くの方がお気づきのことでしょう。双方にはどのような違いがあるのでしょうか?この記事では、身近な戸籍謄本と戸籍抄本を例に、登記簿謄本について詳しく解説していきます。
目次
「戸籍謄本」と「戸籍抄本」の違い
戸籍謄本も戸籍抄本も、戸籍の情報が記載されている書類ですが、双方にはどのような具体的な違いがあるのでしょうか?
漢字の意味の違い
双方の違いを知るためには、まず漢字の意味の違いを理解することができるでしょう。戸籍謄本の「謄」と、戸籍抄本の「抄」には、それぞれ次のような意味があります。
・「謄」:「原本をその通りに書き写す」という意味
・「抄」:「表面をすくいとる」「書面の字面を抜き出す」という意味
これらの漢字の意味を覚えておくなら、双方の違いに迷うことはないでしょう。
戸籍謄本と戸籍抄本の言葉の意味
戸籍謄本には、戸籍に関係するすべての項目が記載されている書類です。同じ戸籍には複数の人が入っていることが多く、すべての人の情報が記載されています。そのため、「戸籍全部事項証明書」と呼ばれています。戸籍に入っているすべての人の情報が必要な場合は、戸籍謄本が必要となります。
一方、戸籍抄本は、一部の人の項目だけ抜き出して記載する書類です。例えば、同じ戸籍に5人の人が入っているとしても、自分の分だけ必要な場合は戸籍抄本を請求することで、自分の情報だけを入手することができます。そのため、「戸籍個人事項証明書」と呼ばれています。
つまり、双方の違いを簡潔にまとめるなら、次のようになります。
・戸籍謄本(こせきとうほん)
戸籍に記載されているすべての事項の写し
・戸籍抄本(こせきしょうほん)
戸籍に記載されている一部の事項の写し
「戸籍謄本」と「戸籍抄本」の役割と用途
実際、どのような場面で戸籍謄本と戸籍抄本が使われているのでしょうか?実際のところ、ほとんどの手続きで戸籍謄本が使われています。もちろん戸籍が必要となる公的手続きにはさまざまものがありますが、ほとんどのケースで戸籍謄本の提出が求められています。
なぜなら、戸籍謄本には、3つの役割を果たすことができるからです。それは、①家族関係を明確に確認できる、②身分関係を明確に確認できる、③日本人であることを明らかにできる、という3つの役割があります。
戸籍謄本の役割と用途
相続手続をはじめとするほとんどの公的手続きでは、家族関係を明確に確認することを目的としているため、戸籍謄本の提出を求めています。戸籍抄本では、家族ひとりだけの情報しか記載されていないので、家族関係を確認することはできません。
したがって、多くの公的手続きでは、戸籍謄本の提出が求められているのです。具体的には、婚姻や離婚、養子縁組や離縁、死亡、相続、公正証書の遺言、本籍を変えるなどの手続きの際に戸籍謄本が使われます。では、戸籍抄本は、どのようなときに利用されているのでしょうか?
戸籍抄本の役割と用途
戸籍抄本の提出を求める場合は、身分関係を明確に確認するときや、日本人であることを明らかにすることを目的とする際に利用されます。具体的には、パスポートの申請や国家資格の登録手続きなどが挙げられます。
・パスポートの申請
パスポートの新規申請や更新の際には、戸籍の提出が求められています。パスポートの手続きでは、身分関係や日本人であることを確認することが戸籍の目的です。したがって、外務省ホームページには、必要書類として「戸籍謄本又は戸籍抄本」と記載されているのです。
・国家資格の登録手続き
国家資格にはさまざま種類が存在していますが、資格を登録する際には、さまざま書類の提出が求められています。そして、必要書類のひとつに戸籍が含まれています。国家資格の登録手続きもパスポートの申請と同じように、身分関係と日本人であることを確認することが目的とされています。したがって、戸籍抄本の提出で用途を果たすことができます。
「登記簿謄本」とは?
ここまでで「戸籍謄本」と「戸籍抄本」についてみてきました。続いて、「登記簿謄本」についてみてみましょう。登記簿謄本は、確定申告で住宅ローン控除の申請をするときなどに良く見聞きします。しかし、法務局の公式ホームページなどでは、「登記事項証明書」と記載されていることもあります。そのため、どのような違いがあるのか迷ってしまう方は少なくありません。
では、「登記簿謄本」と「登記事項証明書」には、どのような違いがあるのでしょうか?
登記簿謄本と登記事項証明書の違い
不動産の登記簿謄本には、土地や建物の概要、所有者、抵当権設定など、今までの記録や現状について記載されています。これらの登記情報は、以前まで登記簿と呼ばれる紙の書類に記載され保管されていました。したがって、登記簿謄本が必要になり取得するときには、その不動産を管轄している地区にある登記所(法務局・法務局の支局・出張所など)の窓口で直接請求する、もしくは郵送で請求し、登記簿の写しを取得していました。
しかし、現在では、髪の登記簿がコンピューター化され、登記記録というデータで保管されています。上記でもみたように「謄本」には、原本をすべて写した、という意味があります。そのため、データから登記情報の証明書を発行しているため、現在では「登記簿謄本」ではなく「登記事項証明書」と呼ばれています。
つまり、登記簿謄本と登記事項証明書とは、同じ書類ということです。現在の正式名称は「登記事項証明書」ですが、すでに「登記簿謄本」という言葉が浸透しているため、今でも登記簿謄本という言葉が使用されているのです。
登記簿謄本と登記簿抄本のの違い
登記簿謄本と登記簿抄本は、戸籍同様、「謄本」と「抄本」の意味の違いによって、書類の内容が次のように変わってきます。
・登記簿謄本(現在の正式名称は、登記事項証明書)
土地や建物の所在地、構造、面積、所有者の抵当権設定の記録や現状が記載された書類
・登記簿抄本(現在の正式名称は、一部事項証明書)
登記記録の一部が記載された証明書
「登記事項証明書」の種類
登記事項証明書(登記簿謄本)には、一部事項証明書(登記簿抄本)のほかに、記載されている内容によって「全部事項証明書」「現在事項証明書」「一部事項証明書」「閉鎖事項証明書」の4種類あります。それぞれ次のような内容が記載された書類となっています。
・全部事項証明書
全部事項証明書には、その名前の通り、特定の不動産についての過去から現在までの登記記録に記載されているすべての事項が記載されています。
具体的には、所有権が移転されてきた履歴、抵当権の設定や抹消、差し押さえまでの記録が記載されています。登記事項証明書の取得が必要になった場合、どの種類を取得すればよいのか分からないときは、全部事項証明書を取得すれば間違いないでしょう。なお、閉鎖登記記録のみ記載されていません。
・現在事項証明書
現在事項証明書には、以前の所有者や抹消された抵当権などは記載されていません。つまり、現在の権利状況だけが記載されています。現在の状況を確認することを目的とする場合は、現在事項証明書を取得することができます。過去の情報はすべて省かれているので、情報量が少なく、簡潔で見やすいというメリットがあります。
・一部事項証明書
一部事項証明書には、登記記録の一部が記載されています。全部事項証明書を請求すると、ケースによっては膨大な書類のページになることもあります。そのため、自分の記録のみが必要な場合は、一部事項証明書を請求することができます。ただし、一部事項証明書については、オンライン取得に対応していないので注意が必要です。
・閉鎖事項証明書
閉鎖事項証明書には、登記記録がデータ化される以前の手書き・縦書きで記録されていた紙面の登記簿謄本の記録が記載された書類です。その不動産を管轄している法務局のみで取得できます。ただし、閉鎖した登記情報の保存期間は土地の場合は50年、建物の場合は30年となっています。つまり、それよりも古い情報は取得することが難しいかもしれません。
登記簿謄本の取得方法
登記謄本の取得には、いくつかの方法があります。
・登記所の窓口で直接、交付申請をする
・郵送で交付申請をする
・オンラインで登記事項証明書の交付申請をする
上記の3つの申請方法に加え、オンライン上で閲覧だけすることも可能です。なお、登記事項証明書の内容だけを閲覧する場合は、インターネットで登記情報を確認できる「登記情報提供サービス」を利用します。不動産の所有のみが記載された「所有者事項」と、登記記録がすべて記載されている「全部事項」は、PDFでダウンロードすることができます。
ただし、所有者事項には1通あたり145円、全部事項には1通あたり335円の手数料が発生します。(クレジットカード払いが可能)
登記簿謄本の取得に必要なもの
登記簿謄本を取得する際に、特に用意すべき書類などはありません。しかし、物件の所在地の地番や家屋番号まで正確に分からければ、登記簿謄本を取得することはできまぜんので、事前に確認し、メモをしておかれることをおすすめします。
なお、所在地の地番や家屋番号は、売買契約書、重要事項説明書、固定資産税納税通知書などで確認することが可能です。それでも分からない場合は、取得したい物件のある管轄地区の法務局へ電話で問い合わせることができるでしょう。
登記簿謄本の取得にかかる手数料
登記簿謄本は、取得する際に手数料が発生します。法務局の窓口で申請して受け取る場合は、1通あたり600円となっています。オンラインで申請し郵送してもらう場合は1通あたり500円(送料込み)、オンラインで申請し窓口で受け取る場合は1通あたり480円になります。
なお、郵送で申請して郵送してもらう場合は、手数料が1通あたり600円に加え、送料は自己負担となります。郵送で申請する際に、必要分の切手を貼り付けた封筒を一緒に同封してください。
オンラインでの申請交付が便利!
登記事項証明書は、オンラインでの交付申請がとても便利です。次のようなステップで行うことができます。
ステップ1:法務局の「登記・供託オンライン申請システム」にアクセス
申請者情報の登録を行います。申請者のIDやパスワードを自分の好きな文字で設定し、登録します。
ステップ2:「かんたん証明書請求」にログイン
ステップ3:「証明書請求メニュー」のページを開く
ステップ4:「不動産」を選択
必要事項を記入していきます。「窓口で受け取る」か「郵送で受け取る」か交付方法を選びます。
ステップ5:「納付情報」
納付情報のページで、手数料を納付します。手数料の納付方法は、インターネットバンキング、もしくはPay-easy(ペイジー)マークのあるATMを使っての納付となります。インターネットバンキングが使えない場合は、ATMから納付することになりますが、すべての金融機関が対応しているわけではないので注意が必要です。
オンライン申請交付のメリットとは?
オンライン利用しての申請交付は、窓口での申請よりも手数料が安い、というメリットが挙げられます。また、インターネットバンキングで手数料を支払い、受取方法を郵送にすれば、すべての手続きを自宅で完結することができるのも最大の魅力となっています。
郵送にかかる日数とは?
オンラインで申請し、受け取り方法を郵送にした場合、通常、手数料の納付が確認できた1~2日後に郵送されます。ただし、登記所の手続きの込み具合によって変わってきます。特に確定申告の時期は、混雑することが予想されますので、余裕をもって申請されることをおすすめします。
オンライン申請に必要な事前準備は?
オンラインで申請する場合も、取得したい不動産の所在地や地番などが必要となります。普段使っている住居表示とは異なる表記になっているケースが多いので、不動産の権利書や固定資産税の納税通知書などで事前に確認しておくようにしましょう。
また、手数料の納付をスムーズに行うために、インターネットバンキングが利用できるか、Pay-easy対応のATMがあるかを調べておくことも大切です。もしATMが自宅から遠いなど、どちらの方法もできない場合は、窓口での申請が便利なこともあるので確認しておきましょう。
まとめ
戸籍をはじめとし、不動産の登記簿謄本と登記簿抄本についてみてきました。確定申告で住宅ローン控除を申請するときに登記簿謄本が必要となることがあります。登記簿謄本と聞くと難しそうなイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、オンラインで簡単に取得することができます。登記簿謄本が必要なときは、オンラインで取得してみるのはどうでしょうか?
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