確定申告の場所はどこか、住所変更や海外居住のときの提出先と納税地
確定申告の場所は、所得税法では納税地と呼ばれ、原則として住所地を所轄する税務署が提出先になります。引っ越しや転勤で住所変更があった年、海外で暮らしている年は、この原則だけでは判断が付かないことがあります。
ここでは、どの税務署へ出すのかという一点にしぼり、国税庁が公表している資料に沿って場面ごとの答えを並べます。提出する場所の決まり方という基礎知識から、間違えたときの扱い、専門家に相談する目安までを順に確認します。

確定申告の場所は住所地を基準に決まるという原則を最初に押さえる

確定申告の場所は、所得税法では「納税地」という語で定められています。国税庁は、所得税の申告書について、提出する時点の所轄税務署長へ出すものとしています。
確定申告の場所は、国内に住所がある人であれば原則としてその住所地です。住所とは生活の本拠のことで、どこが本拠かは客観的な事実によって判定されます。
年商5,000万円規模で事業を続けている経営者の多くは、自宅と事業の拠点が同じ市区町村にあります。この状態であれば迷う余地がなく、自宅を管轄する税務署が提出先になります。
判断に迷うのは、自宅と拠点が離れているときです。例えば自宅が横浜市、事務所が東京都中央区であれば、原則どおりなら横浜市を管轄する税務署が確定申告の場所になります。
実務では、事務所のほうが近いという理由で東京の税務署へ出してしまう例があります。原則を知らないまま距離で選ぶと、特例の要件を満たさないまま出したことになります。
基礎知識として原則を先に押さえておくと、住所変更・海外赴任・拠点の追加が起きたときに、どこを見直せばよいかが分かります。以下では、原則から外れる場面を順に扱います。
住所変更があった年でも、この原則そのものは変わりません。提出する時点でどこに住んでいるかを見る、という一点で判断します。
年商1億円を超えて拠点を複数持つ段階になると、拠点ごとに担当者が動くため、社内で提出先の認識がずれやすくなります。誰が最終的に確認するかを決めておくと事故が減ります。
もう一つ押さえておきたいのは、この原則が所得税と消費税で共通していることです。課税事業者であれば、両方の申告書が同じ税務署へ向かうことになります。
提出の方法は、e-Taxによる送信、税務署の窓口への持参、郵送の三つです。方法が変わっても、どの税務署を提出先とするかという判断そのものは変わりません。
制度は改正されることがあります。本稿の記述は、国税庁が令和7年4月1日現在の法令等として公表している内容に基づいています。
所得税の確定申告書は、提出時の納税地を所轄する税務署長に提出することになっています。
基礎知識として整理する納税地と所得税法の関係
基礎知識として押さえたいのは、この用語が申告と納付の両方を規律する概念だという点です。申告書の提出先も、税金を納める先も、この一点から決まります。
国税庁がこの取扱いの根拠として挙げているのは、所得税法15条と16条、所得税基本通達2-1、消費税法21条、国税通則法21条です。
15条が原則を、16条が特例を定めています。原則は住所地、国内に住所がなく居所がある人は居所地という並びです。
特例は、選べる余地を認めるものです。国内に住所のほかに居所がある人は住所地に代えて居所地を、住所や居所のほかに事業所などがある人はその所在地を選べます。
亡くなった人の申告は例外です。相続人の住所地ではなく、亡くなった人の死亡時の納税地が提出先になります。相続人が遠方に住んでいても、この点は変わりません。
基礎知識の段階でよく混同されるのが、法人の申告との違いです。法人は本店あるいは主たる事務所の所在地を基準にするため、個人の住所地とは別の考え方で決まります。
経営者本人の申告書と、会社の申告書が別々の税務署へ向かうことは珍しくありません。自宅と本店が別の市区町村にあれば、その状態が通常です。
次の表は、状況ごとに確定申告の場所がどう決まるかを一覧にしたものです。自社と自分の状況を当てはめて見てください。
表のとおり、確定申告の場所は「国内に住所があるか」「居所があるか」「事業所があるか」の三つの問いで決まります。問う順番を入れ替えないことが基礎知識として重要です。
制度の呼び名にも注意が要ります。国税庁の資料は一貫して「納税地」と書いており、日常語での言い換えは正式な用語ではありません。
正しい用語を使い認識をそろえておけば、税務署に電話で確かめるときも話が早く進みます。窓口では「納税地はどこになりますか」と尋ねるのが最短です。
| 状況 | 納税地(申告書を出す先) | 根拠 |
|---|---|---|
| 国内に住所がある | その住所地 | 所得税法15条 |
| 国内に住所がなく居所がある | その居所地 | 所得税法15条 |
| 国内に住所と居所の両方がある | 住所地に代えて居所地を選べる | 所得税法16条 |
| 住所または居所のほかに事業所などがある | 住所地等に代えてその事業所などの所在地を選べる | 所得税法16条 |
| 亡くなった人の申告 | 亡くなった人の死亡時の納税地 | 国税庁タックスアンサーNo.2029 |
生活の本拠はどこかで判定が変わる、住民票と実態がずれる例

生活の本拠がどこかは、住民票の記載だけで決まるものではありません。国税庁は、生活の本拠かどうかは客観的事実によって判定されると説明しています。
判断が難しくなるのは、住民票を実家に置いたまま別の街で暮らしている状態です。郵便物の届き先、家族の居住地、生活費の支出先などが材料になります。
単身赴任の経営者もこの論点に当たります。家族が住む家と本人が寝起きする部屋が離れていれば、どちらが生活の本拠かを説明できる状態にしておく必要があります。
二拠点で暮らす人も増えました。平日は都心、週末は地方という生活であっても、生活の本拠は一つに定まるという前提は変わりません。
判定を自分で決めつけないことが大切です。迷う状態のまま申告書を出すと、確定申告の場所が違うと後から指摘されたときに説明が難しくなります。
よくある誤解は、住民票を移せば納税地も自動的に変更されると考えてしまうことです。制度は住民票ではなく暮らしの実態を見ています。
反対のパターンもあります。住所変更の届出をしていないが実態としては転居済みという状態であれば、実態のほうが判定の基礎になります。
住民票を移す手続きと、暮らしの実態が移る時期は一致しないことがあります。住所変更の届出が遅れていても、判定の基礎になるのは実態のほうです。
基礎知識の裏付けとなる材料を残しておく方法は単純です。賃貸借契約書、公共料金の請求書、住民票の写しなどを年ごとにまとめておけば足ります。
年商規模が大きくなるほど、税務署からの照会が届いたときの影響も大きくなります。生活の本拠に関する説明は、経営者本人が答えられるようにしておくのが安全です。
例えば、法人の本店を自宅に置いたまま経営者が別の街へ引っ越した場合、法人の提出先と本人の提出先が分かれます。二つを同時に見直す習慣を持つと取り違えが減ります。
判定に自信が持てないときは、確定申告の場所を決める事実関係を書き出したうえで、税務署あるいは関与している専門家に確かめるのが確実です。
居所地を納税地にできる特例と、選ぶときの判断材料

居所地を選べるのは、国内に住所のほかに居所がある人です。国税庁は、住所地に代えて居所地を選ぶことができると説明しています。
居所は、ある程度の期間続けて住んでいるものの、生活の本拠と言えるほどの結び付きはない住まいを指します。住所と居所は同じものではありません。
具体例としては、単身赴任先の社宅や、長期の出張で借りている部屋が挙げられます。生活の本拠は自宅のままだが、平日はそこで暮らしているという状態です。
基礎知識として押さえたいのは、選ぶかどうかが任意だという点です。原則どおり住所地のままにしておいてもよく、特例を使わなければならない場面はありません。
判断材料の一つ目は、税務署からの文書がどこへ届くと都合がよいかです。文書は原則として納税地あてに送られるため、受け取りやすい住まいを選ぶ意味があります。
二つ目は、窓口へ出向く回数です。相談や書類の受け取りで足を運ぶことが多いなら、通いやすい税務署が確定申告の場所になるよう選ぶ考え方もあります。
三つ目は、家族との情報共有です。自宅に文書が届くほうが確実であれば、居所地を選ばないという判断のほうが合理的です。
特例を使う手続きは簡単です。変更後の納税地を記載した所得税か消費税の申告書を提出することで変更できます。
年の途中で変更し、国税当局からの各種文書の送付先を変更後の場所にしたい意思があるときは、「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」を提出することができます。
申出書は義務ではありません。出さなくても、申告書へ変更後の内容を書けば変更そのものは成立します。
迷ったときは、原則の住所地のままにしておくのが無難です。特例は選べる制度であり、選ばないことによる不利益はありません。
経理担当者を置いている会社では、担当者の入れ替わりのたびに文書の届き先が話題になります。確定申告の場所を動かすより、社内の受け渡し手順を整えるほうが早いこともあります。
事業所の所在地を納税地にする特例と、あとで戻すときの扱い
事業所の所在地を選べるのは、国内に住所か居所のいずれかがある人で、その住所や居所のほかに事業所などがある場合です。
国税庁は、住所地等に代えてその事業所などの所在地を選ぶことができると説明しています。店舗、工場、営業所などが当てはまります。
この特例が使われるのは、自宅と事業の拠点が離れているときです。日中は拠点にいるため、そこへ文書が届くほうが実務に合うという理由が多くを占めます。
手続は居所地の特例と同じです。変更後の所在地を記載した申告書を出せば足り、別途の届出書を用意する必要はありません。
注意したいのは、戻すときの扱いです。国税庁は、事業所等の所在地を納税地へ変更した後に住所地を納税地とする申告書を出したときは、その変更について取りやめたものとして取り扱うとしています。
言い換えると、申告書にどこを書くかが、そのまま選択の意思表示になります。書き間違いがそのまま変更として扱われる点に注意が要ります。
拠点を移転したときも同じ考え方です。移転後の所在地を申告書に書けば、確定申告の場所はそこへ移ります。
拠点の移転と経営者本人の住所変更が同じ年に重なることもあります。二つは別々に判断するものなので、それぞれの提出先を確かめてください。
拠点が複数ある会社では、どこを選ぶかを社内で決めておく必要があります。年ごとに記載が変わると、税務署側の記録も揺れます。
次の一覧は、特例を使う前に確かめておきたい項目です。書き始める前に判断できるものだけを並べました。
一覧の項目は、いずれも基礎知識の範囲で答えが出せます。書き始めてから迷うと、期限の直前に慌てることになります。
年商規模が大きい会社ほど、拠点の増減が起きます。拠点を増やした年に確定申告の場所を見直す、という運用にしておくと漏れが出にくくなります。
経営者本人の申告と会社の申告を同じ税務署にそろえたい、という要望もあります。要件を満たせば可能ですが、そろえること自体が目的にならないよう注意してください。
- 住所または居所のほかに事業所などが国内にあるか
- その事業所などで実際に事業を行っているか
- 税務署からの文書をその所在地で確実に受け取れるか
- 選んだ所在地を毎年の申告書に同じように記載できるか
- 移転や閉鎖の予定が近い時期にないか
住所変更があった年に申告書へ書く内容と、届出書が不要になった経緯

住所変更があった年に何をすればよいかという基礎知識は、令和5年1月1日を境に大きく変わりました。それ以前は届出書を出すことが求められていました。
従来は、納税地に異動があった場合、その後遅滞なく、異動前の税務署長へ「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を提出することとされていました。
令和4年度税制改正でこの取扱いが見直されました。異動後および変更後の納税地は、提出された申告書等に記載された内容等から把握できることを踏まえたものです。
結果として、令和5年1月1日以後は、納税地の異動に関する届出書と、その変更に関する届出書について、その提出が不要とされました。
現在の手続はこうです。住所変更で確定申告の場所が動いた場合は、異動後の納税地を所得税か消費税の申告書に記載します。それだけで足ります。
もっとも、国税当局からの各種送付文書の送付先を年の途中で変えたい意思があるときは、先に触れた申出書を出すことができます。
出す先は、異動後あるいは変更後の納税地を所轄する税務署長です。以前のように、移転前の税務署へ出すのではない点に注意してください。
国税庁は具体例も示しています。1月20日にA市からB市へ転勤した給与所得者が前年分の申告をする場合、出す先はB市を管轄する税務署です。
理由は単純で、申告書は提出の際における納税地を所轄する税務署長に対して出すこととされているためです。基準になるのは提出時点の住所です。
住所変更があった年に迷いやすいのは、源泉徴収票に旧住所が書かれている場合です。源泉徴収票の記載は、確定申告の場所の判断を左右しません。
住所変更があった年は、次の手順で確かめると間違えにくくなります。順番を守ることが要点です。
手順のうち最も落としやすいのが、家族分の申告です。住所変更を本人だけ反映し、配偶者や親族の申告書に旧住所を書いてしまう例があります。
届出書が不要とされたのは令和5年1月1日以後です。それより前に生じた住所変更には、当時の取扱いが適用されていました。
年の途中で住所変更が二度以上あった年も考え方は同じです。提出する時点の住所地が基準になります。
- 提出する時点でどこに住んでいるかを確かめる
- その住所を管轄する税務署を国税庁のページで調べる
- 申告書の住所欄に異動後の住所を記載する
- 年の途中で文書の送付先を変えたい場合のみ申出書を検討する
- 家族分の申告書にも同じ住所が記載されているかを見直す
所轄税務署の調べ方と、郵便番号から管轄を確認する手順

所轄税務署は、国税庁のサイトで調べられます。「税務署の所在地などを知りたい方」というページに、郵便番号か住所から探す仕組みが用意されています。
同じページには地図からたどる方法と、一覧からたどる方法もあります。国税局名をクリックすると管轄する都道府県が表示され、都道府県名をクリックすると税務署の一覧が出ます。
全国の組織は、札幌・仙台・関東信越・東京・金沢・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・熊本の11の国税局と、沖縄国税事務所で構成されています。
市区町村と税務署は一対一ではありません。一つの税務署が複数の市町村を受け持つこともあれば、大きな市が複数の税務署に分かれていることもあります。
同じ市内の住所変更だから所轄は変わらない、と決めつけないでください。政令指定都市では区をまたぐと所轄が変わることがあります。
郵便番号から探すときは、住所変更の後の番号を使ってください。前の番号のままで調べると、以前の税務署が出てきます。
基礎知識として、調べた結果は印刷するか画面を保存しておくと確実です。翌年に同じ作業を繰り返す手間が省けます。
提出の方法は三つあります。e-Taxで送信する、税務署の窓口へ持参する、郵送するという選択肢です。
窓口の開庁時間は8時30分から17時までです。土日祝日は受付を行っていませんが、送付か時間外収受箱への投函で出すことはできます。
郵送を選ぶ場合も、宛先は所轄税務署です。近所の税務署へ持ち込めば済むというものではありません。
e-Taxを使うと所轄の判定そのものが不要になる、というわけではありません。利用者情報に登録した住所が誤っていれば、確定申告の場所も誤ったまま送信されます。
年に一度しか触らない画面であるため、登録内容の確認は申告の作業を始める前に済ませておくのが効率的です。
会社と経営者本人で所轄が異なる場合は、二つの税務署名を並べて記録しておくと社内での確認が早くなります。確定申告の場所を毎年ゼロから調べ直す必要はありません。
国外転出をする年の申告と、出国前に済ませておく手続

国外転出をして海外で暮らすことになった年は、確定申告の場所の判断が一段複雑になります。最初に、自分が居住者と非居住者のどちらに当たるかを確かめる必要があります。
国税庁は、日本国内の会社に勤めている給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となると説明しています。
非居住者になっても、日本国内で発生した一定の所得については引き続き日本の所得税が課税されます。申告が必要になる場合があるのはこのためです。
国税庁が挙げているのは、国内にある資産の運用や保有により生じる所得、国内にある資産の譲渡により生じる所得、国内にある不動産等の貸付けにより受け取る対価、国内にある営業所等を通じて締結した保険契約等に基づく一時金です。
経営者の場合、国内に残した収益不動産の家賃がこれに当たることが多いです。海外に住んでいても、日本での申告が続く状態になります。
国内に住所も居所もなくなった人の納税地は、順番に当てはめて決まります。国税庁は六つの段階を示しており、上から順に見ていく形です。
国外転出の前に済ませることは二つのうちどちらかです。納税管理人を定めて届け出るか、出国の時までに申告と納付を終えるかを選びます。
届出を出さないまま国外転出する場合は、その時までに申告書の提出と納付を完了させる必要があります。期限が前倒しになる点が実務上の負担になります。
納税管理人を定めておけば、翌年の通常の申告期間に、その人を通じて申告と納付を行うことができます。急いで前倒しする必要はなくなります。
国外転出の予定が決まった段階で税務の担当者へ伝えることが大切です。渡航の直前になってからでは、選択できる手段が限られてしまいます。
家族が日本に残る場合は、住まいの扱いも整理しておく必要があります。誰が住み続けるかによって、次に示す順位のどこに当たるかが変わります。
確定申告の場所は、国外転出の年と帰国の年に動く可能性があります。この二つの年だけは前もって確かめておくと安全です。
- 国内で行う事業に係る事務所等がある場合は、その事務所等の所在地
- それ以外で、納税地とされていた住所または居所に親族等が居住している場合などは、その住所または居所
- いずれにも当たらず、国内にある不動産の貸付け等の対価を受ける場合は、その対価に係る資産の所在地(資産が二つ以上あるときは主たる資産の所在地)
- 上記により納税地を定めていた人が、そのいずれにも当たらなくなった場合は、その直前に納税地であった場所
- 以上に当たらず、新たに国税に関する法律の規定に基づく申告や請求等を行う場合は、その人が選択した場所
- いずれにも当たらない場合は、麹町税務署の管轄区域内の場所
納税管理人を定めた場合の書類の届き先と申告書の提出先
納税管理人は、本人に代わって納税義務を果たすために定める人です。国税庁は、申告書を出すこと、税務署からの文書を受け取ること、税金を納めることや還付金を受け取ることのために定める必要があると説明しています。
届出は「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」で行います。出す先は、その非居住者の納税地を所轄する税務署長です。
根拠は国税通則法117条です。国税庁のタックスアンサーは、根拠法令等として所得税法の各条と国税通則法12条・117条などを挙げています。
行き違いが多いのは、文書の届き先と確定申告の場所が別だという点です。この二つを同じものとして考えると、書類が届かない事態が起きます。
届出書を出した以後、税務署が発送する書類は納税管理人あてに送付されますが、申告書そのものは非居住者の納税地を所轄する税務署長に対して提出します。
基礎知識として押さえたいのは、納税管理人が法人でも個人でも構わない点です。国内に住んでいる親族や、関与している事務所に依頼する例が一般的です。
帰国して居住者に戻る場合など、先に選任していた納税管理人を解任するときも、同じ届出書を所轄税務署長へ出します。
納税管理人を交代させる場合は、二つの手順を踏む必要があります。すでに届け出ている人を届出書で解任したうえで、あらためて届出書を出して新しい納税管理人を選任します。
実務で困るのは、依頼した相手が海外へ転居してしまう場合です。国内にいなくなると、確定申告の場所は変わらないまま書類の受け取りだけが滞ります。
依頼する相手には、書類が届いたときに何をするかまで伝えておく必要があります。開封して内容を読み、期限を確かめ、本人へ連絡するという流れです。
海外との時差がある状態では、書類を受け取ってから対応するまでに数日かかります。期限の直前に届く文書ほど、この遅れが響きます。
依頼先を専門家にするかどうかは、国内に残す資産の規模で判断するのが現実的です。収益不動産や株式が残るなら、専門家に任せたほうが確実です。
非居住者の方が、確定申告書の提出、税務署等からの書類の受け取り、税金の納付や還付金の受け取り等、納税義務を果たすために納税管理人を定める必要があります。
場所を間違えて提出したときに起きることと、その後の対応
間違えて別の税務署へ出した場合、まず行われるのは本来の所轄税務署書類の回送です。届いた申告書は通常、所轄の税務署へ回されます。
もっとも、回送には日数がかかります。手続き完了までにどのくらい時間を要するかは、税務署の繁忙期などの時期によっても異なります。
影響が出やすいのは還付です。還付申告の処理は所轄の税務署で行われるため、回送の分だけ入金が遅れます。
期限の直前に誤った税務署へ出すと、到達が期限の後になる懸念も生じます。期限に近い時期ほど、所轄税務署の確認を先に済ませておくべきです。
電子で送信した場合は、利用者情報の住所が誤っていると所轄の判定も誤ります。送信の前に登録内容を見る習慣を持ってください。
過去の年分について取り違えていたと気付いたときは、いまの住所地を所轄する税務署へ相談するのが早道です。
修正申告や更正の請求を出す先も、その時点の納税地を所轄する税務署です。当時の税務署ではありません。
社内で起きやすいのは、前年の控えをそのまま写す運用です。控えに書かれた税務署名を疑わずに使うと、住所変更のあった年に取り違えが生まれます。
住所変更のあった年は、控えの写しではなく、その年に自分で調べた結果を使ってください。前年と同じ税務署とは限りません。
防ぐ方法は基礎知識の範囲にあります。申告書を書き始める前に税務署をその年ごとに調べ直す、という手順を一つ入れるだけで足ります。
経理担当者が複数いる会社では、確かめた人の名前と確認日を残しておくと、翌年の引き継ぎが楽になります。
取り違えが続く場合は、手順ではなく体制の問題であることが多いです。誰が最終確認をするかが決まっていない状態が背景にあります。
確定申告の場所を間違えたこと自体で罰則が科されるわけではありません。問題になるのは、回送の間に期限を過ぎてしまう場合です。
期限の後の提出になると、無申告加算税や延滞税の対象になり得ます。確定申告の場所の確認は、この入口の部分に効いてきます。
確定申告の場所の判断に迷ったときに専門家へ相談する目安

ここまでの基礎知識を自分で当てはめられるなら、専門家に頼らず判断できます。迷いが残るのは、住所変更をしたのに実態が伴わない年と、国外に生活の拠点がある年です。
確定申告の場所について相談する目安は三つあります。生活の本拠が一つに定まらない、国内外にわたる所得がある、国外転出の予定がある、のいずれかに当たるときです。
相談先を選ぶときは、いま関与している事務所で足りるかを先に考えます。基本的な確認に答えられない状態が続くなら、見直しの時期に来ています。
代表・山下の著書『税理士に顧問料を払う本当の理由』は、決算書から事務所の仕事ぶりを見分ける観点を挙げています(p.97)。
期末時点の通帳残高と決算書の普通預金残高がずれていないか、内訳の不明確な仮受金と仮払金が多く残っていないか、といった観点です。
会社の実態と決算書の売掛金・買掛金が大きく異なる場合や、社長への短期貸付金が多い場合も、注意しましょう。
出す先の確認のような基本的な作業でつまずく事務所は、こうした処理でも同じことが起きている可能性があります。
多くの現場を見てきた実感として、資格に忠実であっても経営に無関心な事務所と付き合う場合、漠然とした不満を抱えたまま長い付き合いが続いてしまう例が少なくありません(p.92)。
期待の置き方も整理が要ります。実のところ、事務所を替えても売上が直接上がるわけではありません(p.82)。
見直しの目的は、売上ではなく判断の速さと正確さです。確定申告の場所のような基本的な論点で毎年迷う状態を終わらせることが、実務上の効果になります。
実際に見直しを考える段階になったら、税理士の変更で実際に何が起きるのかを先に知っておくと判断が早くなります。
また、変更をためらう理由として、嫌がらせを心配する声も耳にします。この点については、次のように整理できます。
適正に報酬を支払っていて、公にできないようなことをしていなければ、税理士を変えたからといって嫌がらせを心配する必要は特にないでしょう。
税理士コンシェルジュ事務局からのコメント
確定申告の場所は、制度としては住所地という一点で決まります。実務で迷いが出るのは、住民票と暮らしの実態がずれた年と、国外へ拠点を移した年です。この二つの年だけでも、確定申告の場所を早い時期に確かめる時間を取ってください。材料が足りないと感じたら、事実関係を書き出したうえで相談する順序が確実です。