所得税とは?知っておくべき住民税との関係
毎月の給与から自動的に天引きされている「所得税」と「住民税」は、似ている要素がありながら計算方法は異なっています。しかし、両者には深い関係があります。今回は誰もが知っておくべき所得税の基礎知識と、住民税との関係について解説していきます。
目次
所得税とは?
所得税は、毎月の給与から天引きされている税金です。所得とは、収入から経費や控除額を差し引いた残りの金額のことです。そして所得税は、その所得金額にかかる1年分の税金のことで、所得に税率をかけて所得税を計算します。税率は所得に応じて5%~45%の範囲でかけていきます。「累進課税」を採用することで、所得金額が高くなればなるほど、それに応じて税率も高くなっていきます。
所得には給与のほかに、事業、配当、不動産、譲渡、一時、雑の7つの総合課税される所得と、退職、利子、土地の譲渡、株式譲渡等、山林の5つの分離課税される所得の合計12種類に区分されています。
総合課税される所得
所得 | 概要 |
給与所得 | 雇用主から支給される給与や賞与など |
事業所得 | 事業から得る所得 |
配当所得 | 株式や出資などの配当から得る所得 |
不動産所得 | 地代、家賃など不動産から生じる所得 |
譲渡所得 | 土地や建物など財産を売った際に得た所得 |
一時所得 | 生命保険の満期や宝くじに当たるなど営利を目的としないことで得た所得 |
雑所得 | 上記に当てはまらない所得 |
分離課税される所得
所得 | 概要 |
退職所得 | 退職金や一時恩給などの退職を理由とした所得 |
利子所得 | 公債や社債などから得た利子 |
土地の譲渡所得 | 土地や建物を売った際に得た所得 |
株式譲渡所得 | 株式を譲渡した際に得た所得 |
山林所得 | 山林を伐採したり、売ったりした際に得た所得 |
住民税とは?
住民税には、個人住民税と法人住民税の2種類ありますが、一般に市町村民税(特別区民税も含む)や道府県民税(都民税も含む)などの総称を「住民税」と呼んでいます。住民税は、地方自治体による教育や福祉、行政サービス等に使用されています。住んでいる地域や収入によって住民税の額が決められます。
「所得割」と「均等割」と2通りの計算方法がある住民税ですが、所得割の場合は所得税同様、課税所得に税率をかけて算出されます。しかし当年の納税する所得税とは違い、前年の所得によって決定された納税額を翌年に支払うことになっています。
均等割で計算する場合、住民税は一律10%になります。市町村民税(所得割)が一律6%、都道府県民税(所得割)が一律4%の割合となっています。また、住民税は所得税と違い、調整控除が設けられています。
雇用形態によって変わる所得税と住民税の関係
一般的な会社員の場合、毎月の給与から所得税と住民税が天引きされていいますが、パートやアルバイト、個人事業主などはどのように所得税と住民税を納めるのでしょうか?
(会社員の場合)
通常、会社員の場合は、毎月の給与から所得税と住民税を徴収し、会社側が従業員の代わりに納付をしています。そのため、個人で所得税や住民税を支払う必要はありません。ただし、稀に会社の中には、個人で住民税を納付する必要がある場合もあります。
(パートやアルバイトの場合)
パートやアルバイトの場合、収入が一定の金額を超えると納税しなければいけません。住民税は、年間の総所得から給与所得控除65万円と、基礎控除38万円(自治体によって額が変わる)を差引いた所得が、住民税の課税対象となります。つまり、逆を言うなら、年間所得が103万円以内であれば、住民税の納付は不要となります。
一方、所得税の場合、パートやアルバイトだとしても所得税控除という制度を利用することが可能です。所得性控除は、基礎控除が38万円、給与所得控除が65万円あるので、年収103万円(月収8,800円未満)以内であれば、所得税の対象外となります。
パートやアルバイトの場合でも、会社側が給与から所得税を天引きし、毎月の給与を支払うこともあります。しかし、年収が103万円以内であれば所得税は課税されません。会社側が年末調整をしてくれるのであれば、12月の給与に納め過ぎた所得税が還付されます。
しかし、会社側が年末調整をしてくれなかったり、12月前に会社を辞めてしまっているなら、確定申告をすることで還付されます。払いすぎた所得税が還付されるようであれば、忘れずに確定申告をするようにしましょう。
(学生の場合)
学生のアルバイトの方は、「勤労学生控除」を申請すれば、基礎控除38万円と給与所得控除65万円に加え、さらに27万円の控除を受けることができます。つまり、年収130万円以内まで所得税がかかりません。
(個人事業主やフリーランスの場合)
個人事業主やフリーランスの場合、所得税や住民税は個人で納付する必要があります。
その年の所得税は、翌年の2月16日から3月15日までに確定申告期間に、申告と納税をすべて済ませる必要があります。
住民税は、前年の総所得に基づいて算出された金額を翌年の6月から支払います。支払い方法は、一括、もしくは年4回の分割の2通りから選べます。一括の場合は6月、分割の場合は第1期の納付期限が6月末、第2期は8月末、第3期は10月末、そして第4期は1月末となっています。
個人事業主やフリーランスには、10万円や65万円を控除できる「青色申告制度控除」と呼ばれる青色申告制度を受けられます。この制度を受けるためには、開業時に青色申告承認申請をすることが必要です。その他にも節税できる様々な種類の控除を受けることが可能です。
青色申告制度とは?
青色申告とは、確定申告をする際、複式簿記などの方法で記帳する日本税制報告書に基づいて施行された申告制度です。青色申告をするためには、管轄地区の税務署に「青色申告承認申請書」を提出し、承認を得る必要があります。青色申告の申請が認められたら、複式簿記で帳簿を記帳することが義務付けられます。
もし義務を守らなかったり、申告書を期限内に提出しなかったり等違反行為が見られる場合は、青色申告の承認が抹消される可能性もあります。
上記でも触れましたが、個人事業主やフリーランスの方は、開業時に青色申告承認申請書を提出することができます。また、会社員やパートなど給与所得者だとしても、不動産所得や山林所得、事業所得などがあれば、青色申告の対象となります。
青色申告承認申請書の提出期限について
すでに事業を行っている方の中で、新たに青色申告を申請したいと検討している方は、その承認を受けようとする年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を、管轄地区の税務署に提出する必要があります。
一方、新たにその年の1月16日以降に事業を開始した場合は、その開始日から2ヶ月以内であれば書類を提出することが可能です。
必要な書類
青色申告の承認を受けることができた方は、帳簿書類に業務に関する取引の内容を、正規簿記の原則に基づいた複式簿記で帳簿することが義務となっています。そして、確定申告の際には、確定申告書に「貸借対照表」と「損益計算書」の2つの書類を添付することが求められています。
ただし、現金出納帳、買掛帳、売掛帳、固定資産台帳、経費帳の5種類の補助簿は、簡易的な帳簿が認められています。また、帳簿類は、7年間保存しておくよう定められています。
青色申告特別控除とは?
「青色申告特別控除」とは、青色申告者として承認され、複式簿記で記帳し、確定申告の際に貸借対照表と損益計算書を添付した書類を期限内に提出した場合に、総所得金額から最高65万円を控除できます。
また、青色申告をしている場合は、複式簿記で帳簿をつけていなくても、不動産所得や山林所得、事業所得等から最高10万円控除することが可能です。
さらに青色申告特別制度を利用するメリットとして、損失を繰り越すことができる点が挙げられます。通常、損失が発生した場合は、その損失を翌年に繰り越すことは原則できません。しかし、青色申告の場合は、損失を3年間繰り越すことが可能です。
青色申告と白色申告、どちらを選べばいい?
個人でも法人でも、事業を行う際の確定申告は、白色申告が原則的な申告方法となっています。しかし、一定の要件を満たし、税務署長から承認を受けた場合のみ、青色申告制度が認められ、様々な優遇を得ることができます。
ここまで見てきたように青色申告制度には、数々の特典があります。これから個人で事業を始めることを検討している方は、確定申告のために青色申告と白色申告のどちらかを選ばなければいけません。どちらがよいかは個々の状況も関係しているので個人で判断することですが、本格的な事業を始めるなら青色申告をされることをおすすめします。
青色申告は税務署へ申請することからはじまり、複式簿記などいくつかの義務はありますが、取引を把握することは経営するうえでも大切なことです。もし事務手続きや作業が難しい場合は、税理士に相談や依頼することもひとつの方法です。
一方、事務手続きや作業が簡単なほうがいい場合は、白色申告を選ぶことができるでしょう。白色申告は、税務署に承認の申請をする必要はないので、開業のための手続きは特に必要ではありません。青色申告のような特典もありません。
もちろん、開業後、青色申告を選択したけど会計処理が難しい場合は、白色申告へと切り替えることもできますし、その逆で白色申告から青色申告へと切り替えることも可能です。
どちらにしようか悩んでいたり、少しでも節税することを考えているなら、青色申告を検討してみましょう。
所得控除を活用して節税を!
給与所得をしている方であれば誰でも、経費をきちんと計上するなら節税につながります。特に個人事業主やフリーランスの場合、所得控除を活用することは大きな節税となります。
所得控除とは、所得税額を計算する前に、各納税者の個人事情を把握し、公平な納税になるよう国が定めたしくみです。次のような条件に当てはまるなら、所得の合計金額から各種控除を差引けます。
所得控除には、全部で14種類あります。
・「基礎控除」
対象者:すべての人
控除額:38万円
・「医療費控除」
対象者:一定額以上(10万円以上)の医療費を支払った人(生計を同一にしている配偶者や親族も含む)
控除額:実際に支払った医療費から受け取った保険金や給付金などを差引いた額に10万円を差し引いた金額、もしくは、所得金額に5%を乗じた金額、のいずれか少ない方が控除額となる
・「雑損控除」
対象者:災害や盗難、横領など何かしらの損害を被った人
控除額:損失額を基に一定の方法で算出した金額
・「寄附金控除」
対象者:ふるさと納税や認定NPO法人などに寄附した人
控除額:寄附金支出合計額、もしくは、所得×40%、のいずれか少ない方に2,000を差し引いた額
・「生命保険料控除」
対象者:生命保険や介護医療保険、個人年金保険等、何かしらの保険料を支払った人
控除額:一定の方法で算出した金額
・「社会保険料控除」
対象者:健康保険料、国民健康保険料、国民年金保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料、国民年金基金の掛金、厚生年金保険料などを支払った人(生計を同一にしている配偶者や親族も含む)
控除額:支払った保険料の合計から算出した額
・「地震保険料控除」
対象者:地震保険料を支払った人
控除額:一定の方法で算出した金額(最高5万円まで)
・「小規模企業共済掛金控除」
対象者:小規模企業共済の掛金を支払った人
控除額:支払った掛金の合計金額
・「障害者控除」
対象者:納税者や控除対象配偶者、扶養親族に障害者である人
控除額:障害者1人につき27万円、特別障害者1人につき40万円、同居特別障害者1人につき75万円
・「配偶者控除」
対象者:配偶者の合計所得金額が38万円以下の人
控除額:一般控除対象配偶者は最大38万円、老人控除対象配偶者(年齢が70歳以上)は最大48万円
・「配偶者寡婦控除(寡夫控除)」
対象者:納税者の合計所得が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が38万円以上123万円未満の人
控除額:配偶者の所得金額によって異なる。最大38万円まで
・「扶養控除」
対象者:配偶者と死別、もしくは離婚をして扶養家族がいる人
控除額:一定の要件を満たしていれば27万円(もしくは35万円)
・「勤労学生控除」
対象者:指定された学校に通いながら働いている人
控除額:27万円
これらの各種控除が当てはまるのであれば、積極的に活用することで合計所得金額が少なくなり、結果として所得税だけでなく、住民税も少なくなり節税につながります。
■まとめ
所得税と住民税の違いや、節税につながる所得控除などについての基礎的な知識についてみてきました。一般的な会社員の場合は、毎月の給与から所得税と住民税が天引きされ、会社側が代わりに納めてくれます。一方、個人事業主やフリーランスの場合は、それぞれ個人で納税する必要があるので、納付期限を守って納めましょう。その際、所得税と住民税は、納付期限が異なっていますので気をつけてください。
また、青色申告制度や所得控除を上手に活用すれば、節税につながります。ただ、複式簿記で帳簿を付けることが条件となっています。複式簿記が複雑と感じるなら、会計や簿記を専門とする税理士に相談したり、依頼したりすることもひとつの方法です。確定申告のために、会計ソフトを利用することもできるでしょう。
いずれにせよ、各種控除や青色申告特別制度が条件に当てはまるなら、上手に活用していきましょう。
税理士コンシェルジュは、2008年サービス開始より株式会社タックスコムが運営する税理士専門の紹介サイトです。会計の実務経験を活かし、これまで1000名以上の税理士と面談し、1万件以上の相談実績がある税理士選びの専門家です。
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