年末調整で「医療費控除」を受けることができる?医療費控除の申請方法
勤務先で行われる年末調整は、毎月の給与から天引きした所得税と、本来支払うべき年間の所得税の差額を清算する手続きです。では、その際、医療費を控除してもらうことはできるのでしょうか?本記事では、医療費控除を受けるために必要な手続きについて解説します。
目次
医療費控除とは?
そもそも「医療費控除」とは何でしょうか?医療費控除とは、1年で支払った医療費が一定額を超えた場合に受けることができる所得税の控除のひとつです。納税者本人だけでなく、扶養家族(離れている家族も含む)がかかった医療費も対象となります。(詳細については後述します)
医療費控除は年末調整「対象外」
では、年末調整で医療費控除を受けることはできるのでしょうか?結論から述べるなら、年末調整で医療費控除を受けることはできません。つまり、個人で確定申告をし、医療費控除を受ける必要があります。では、年末調整で受けることができる控除とは何でしょうか?
年末調整で受けられる控除とは?
勤務先が年末調整で手続が可能な所得控除とは、以下の通りです。
・基礎控除
・社会保険料控除
・生命保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・地震保険料控除
・障害者控除
・ひとり親控除
・勤労学生控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・住宅借入金等特別控除(2年目以降 / 初年度のみ確定申告)
なお、年末調整で手続きができない所得控除は、「医療費控除」の他に「雑損控除」「寄附金控除」があります。
「医療費控除」の対象と対象外になる医療費
「医療費控除」には、どのような医療費が控除の対象となるのでしょうか?
医療費控除の対象となる医療費
・医師(歯科医師含む)による診療や治癒の費用
・治療や療養に必要な医薬品の購入費
・通信費、入院中の食費など
・医師による診療や治療を受けるために必要な松葉杖、義歯、義足、義手などの購入費
・重大な疾患が見つかり、治療を受けることになった場合の人間ドック、健康診断費用
・あん摩マッサージ指圧師、はり師、柔道整復師などによる施術の費用
・保健師、看護師、准看護師などによる療養上の世話にかかった費用
・不妊治療にかかった費用
・出産費用や助産師による分娩の介助費用
・病院までにかかった交通費(自家用車除く)
医療費控除の対象外となる医療費
・医師や看護師に対する謝礼金
・病気が発見されない場合の人間ドック、健康診断費用
・美容整形費用(インプラント、美容目的の歯科矯正など)
・疾病予防費用
・健康増進目的のサプリや漢方薬などの購入費
・未払いの医療費
・自己都合で利用する差額のベッド代
・病院まで自家用車で行ったときにかかったガソリン代と駐車料金
新型コロナウイルス感染症のPCR検査費用は医療費の控除対象か?
医師などの判断により、新型コロナウイルス感染症のPCR検査を受けた場合は、医療費控除の対象となります。
しかし、自己判断でPCR検査を受けた場合は、医療費控除の対象とはなりません。ただし、PCR検査の結果が陽性で治療を行なった場合の検査費用は、医療費控除の対象となります。
医療費控除額の計算方法
医療費控除額は、以下の計算式で求めます。
・総所得が200万円以上で、1年間の医療費が10万円を超えた場合
「医療費控除額=(医療費の金額−保険金等で補填された金額)−10万円)」
上限200万円までとなっています。
・総所得が200万円未満の場合
総所得が200万円未満の場合は、「総所得金額等×5%」を超えるなら医療費控除を受けられます。
医療費控除を受ける方法
前述したように、年末調整で医療費控除を受けることはできないため、個人で確定申告を行う必要があります。医療費控除を受けるための手続きと必要書類についてみていきましょう。
対象となる期間
確定申告を行う前年の1月1日から12月31日までの1年間が、医療費控除の対象となります。なお、確定申告は毎年2月16日から3月15日までです。なお、2021年の確定申告新型コロナウイルス感染症の影響で確定申告期間が延長されました。
【確定申告期間を過ぎた場合】
医療費控除の申告し忘れがあった場合は、その年の翌年1月1日から5年間遡って申告することが可能です。つまり、還付申告は、確定申告期間とは関係なく申告できます。
【未払分の医療費がある場合】
医療費控除の対象となる費用の支払いが翌年になる場合は、次回の確定申告の医療費控除の対象となります。
必要な書類
医療費控除を受けるには、以下の書類が必要です。
・確定申告書A
確定申告書にはAとBの2種類の書式があります。申告する所得が給与所得である会社員の場合は、確定申告書Aになります。なお、確定申告書Bは自営業者など誰でも使用することができます。以下のサイトからダウンロードできます。
参照:国税庁「確定申告書A」
・医療費控除の明細書
医療費控除の申告には、医療費控除の明細書が必要です。以下のサイトからダウンロードできます。
・源泉徴収票
確定申告書の項目には、源泉徴収票から転記する項目があります。
・医療費通知
医療費通知とは、加入している健康保険組合などから送付される書類です。医療費控除申請で提出する場合は、健康保険の加入者の名前、療養を受けた年月、療養を受けた人の名前、療養を受けた病院や薬局などの名称、支払った医療費の金額、健康保険組合などの名称、が記載されている必要があります。
・医療費の領収書
医療費の合計額を計算する際に必要となります。
・銀行の通帳
還付金額を受け取る銀行の口座が必要となります。
申請手続の方法
①医療費控除の対象に該当するかを確認する。
1年間の医療費が10万円を超えた場合は、医療費控除を受けられます。よって、まず医療費にどのくらい支払ったかを確認しましょう。
健康保険組合などから送付される「医療費通知」などには、実際に支払った医療費が記載されています。また、医薬品など医療費控除の対象で、医療費通知に記載されていない費用も医療費に含めて計算しましょう。
②医療費控除額と還付額を計算する。
前述した計算式を使って、医療費控除額を求めましょう。還付額は、医療費控除額分に所得税率をかけて求めます。
③確定申告書と医療費控除の明細書を作成する。
確定申告書と医療費控除の明細書に記載されている必要事項を記載します。医療費の領収書の提出は不要です。ただし、自宅などで5年間保管する必要があります。
④確定申告書と医療費控除の明細書を提出する。
確定申告書と医療費控除の明細書の作成が終わったら、管轄地区の税務署に提出します。
⑤還付金の受け取り。
医療費控除申請後(確定申告後)、約1ヶ月〜1ヶ月半後に指定した振込口座に還付金が振り込まれます。
所得税の税率
手続き②還付金額を計算する際の所得税率は、以下の通りです。
・所得金額195万円以下
税率:5%
控除額:0円
・所得金額195万円超〜330万円以下
税率:10%
控除額:97,500円
・所得金額330万円超〜695万円以下
税率:20%
控除額:427,500円
・所得金額695万円超〜900万円以下
税率:23%
控除額:636,000円
・所得金額900万円超〜1,800万円以下
税率:33%
控除額:1,536,000円
・所得金額1,800万円超〜4,000万円以下
税率:40%
控除額:2,796,000円
・所得金額4,000万円超
税率:45%
控除額:4,796,000円
参照:国税庁「所得税の税率」
まとめ
医療費控除は、年末調整で手続きすることができないため、個人で確定申告をする必要があります。医療費が10万円を超えるかどうかは年末まで分かりません。万が一に備え、医療費にかかった領収書は保管しておくようにしましょう。
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