顧問税理士への不満を感じ始めたときに、経営者が最初に確認すべき5点
顧問税理士への不満は、はっきりした事故があって生まれるとは限りません。返事が遅い、こちらから聞かないと何も出てこない、そうした小さな引っかかりが積み上がって、ある日ふと言葉になります。その引っかかりは、たいてい正しいものです。
この記事では、動く前に確かめたい5つの確認点を示したうえで、変更を検討するタイミング、伝え方から引き継ぎまでの対処法、踏み切れない状態が続く理由までを、書籍の分類と実務の手順に沿って順に解説していき並べます。

顧問税理士への不満は、事実と感情に切り分けるところから始まる
顧問税理士への不満を口にする社長の多くは、決定的な事故を経験したわけではありません。返信が遅い、聞けば答えるが聞かなければ何も出てこない、そうした小さな引っかかりが積み上がった状態です。
この時期に多いのは、何が嫌なのか自分でもうまく言えない状態です。言葉にできないから動けず、動けないまま次の決算期が来ます。
最初に着手するのは、頭の中にあるものを紙へ出す作業です。真ん中に線を引き、左に起きた事実、右にそのとき感じた感情を分けて書き出してください。
左側には、決算の3週間前に初めて連絡が来た、質問への返信に4日かかった、と書きます。右側には、後回しにされている気がした、相談しづらい、と書きます。
左側は税理士と共有できる材料で、右側は共有しづらい材料です。話が噛み合わない場面では、右側だけを渡している例が少なくありません。
左側が5つも並べば、相性ではなく仕事の進め方の問題だと切り分けられます。左側がほとんど埋まらないなら、依頼の出し方を先に変えたほうが早い局面もあります。
書き出しは30分で終わるでしょう ります。年商5,000万円を超えた会社ほど、この30分を後回しにしたまま数年が過ぎている例が目立ちます。
並べ替えの途中で、自社側の落ち度が見つかる場面もあります。資料の提出が毎月遅れていたなら、返信の遅さは相手だけの問題ではありません。
以下の5点は、この書き出しを済ませた社長が順に確かめる項目です。これらを順に確認していくことで上から見ていけば、替えるべきかどうかの材料と、選べる対処法の幅を一通り把握できが一通りそろいます。
こうした違和感は、放置すると金額の話だけに縮んでいきます。中身の議論へ戻すために、まず客観的な事実の側を可視化する手順から入ってください。
- 抱えているものを、起きた事実と、そのとき感じたことに分けて書き出す
- 決算書の残高・仮受金・売掛金・社長への貸付金に、ズレや放置がないかを見る
- 月額で払っている顧問料と、実際に受けている支援の中身が釣り合っているかを並べる
- 提案が出てこない背景に、自社の年商規模や情報開示の薄さがないかを確かめる
- 替えれば解ける問題か、替えても残る問題かを切り分ける
この段階の税理士と付き合っている場合、「なんか不満があるんだよね」「こちらから聞かないと何も教えてくれない」と、漠然とした不満がある経営者が多い印象を受けます。
決算書の残高のズレと仮受金の中身に、日々の仕事の丁寧さが表れる
事実関係の整理が済んだら事実の側が並んだら、続いて見るのは決算書です。書籍は、いまの税理士が変更を検討したほうがよいレベルなのかを見分ける方法として、決算書を見て判断するやり方を挙げています。
直近の決算書と期末日の通帳を用意し、期末の通帳残高と普通預金残高が一致するかを突き合わせてください。
書籍は、期末の通帳残高が300万円なのに普通預金残高が320万円になっている例を挙げ、本来ここがずれるのはあり得ない話だと述べています。ずれていれば、ほかの箇所もずれていると想定されます。
続いて貸借対照表の仮受金と仮払金を見ます。内訳の分からない金額が多く残っているなら、売掛金の入金や経費が未処理のまま決算を締めている可能性があります。
この放置が最も深刻な影響を及ぼすいちばん重く効くのは、融資審査の場面です。銀行員は決算書を額面どおりには読まず、回収が見込めない資産を差し引いた実質の純資産に引き直して評価します。
役員貸付金はその筆頭です。社長個人への資金の流出とみなされ、返済の裏づけを説明できなければ資産から丸ごと控除されます。長年動いていない売掛金も同じ扱いです。
内訳の説明がつかない仮受金も、負債の実在性を疑わせます。銀行員の目には、数字で会話できない会社と映ります。
下の表は、仮の数字で減点の効き方を示したものです。帳簿上は自己資本比率20%でも、控除後は9%前後まで下がり、格付けの区分がひとつ落ちる水準に届きます。
比率が下がれば、金利の上乗せや融資枠の縮小として跳ね返ります。放置の代償は、決算書の見た目ではなく調達条件に出ます。
この4項目は、専門知識がなくても数字を突き合わせるだけで確かめられます。現在の税理士に対する不信感が漠然としたままの社長ほど、この突き合わせを一度もしていないものです。
2つ以上に当てはまるなら、抱いていた違和感には客観的な根拠があると言えます引っかかりには裏づけがありました。ゼロなら日々の処理は丁寧で、原因は別にあります。
当てはまった項目は、そのまま面談で税理士に聞く材料になります。感想ではなく残高のズレとして示せば、相手も具体的に応じざるを得ません。この作業は決算のたびに繰り返し、2期続けて同じズレが出るなら事務所側の管理体制の問題として判断の癖として読み取ってください。
| 項目(仮の数字による例示) | 帳簿上の決算書 | 銀行員が引き直した実質 |
|---|---|---|
| 総資産 | 5,000万円 | 4,400万円 |
| うち役員貸付金 | 400万円(資産計上) | 0円(全額控除) |
| うち回収見込みのない売掛金 | 200万円(資産計上) | 0円(全額控除) |
| 純資産 | 1,000万円 | 400万円 |
| 自己資本比率 | 20% | 約9% |
顧問料の水準と受けている支援の中身が釣り合っているかを並べて見る

3つ目の確認点は顧問料です。書籍は、年商5,000万円規模の会社を前提に、税理士のレベル別のおおよその月額報酬を示しています。
分け方はレベル1から5までの5区分です。レベル1と2は変更を考えたほうがよい層、レベル3と4は付き合い続けるとよい層、レベル5は貴重な層と整理されています。
金額の目安は下の表のとおりです。目を引くのは、レベル2の月額がレベル4と同じ水準に並ぶ点です。
年額に直すと差の性質が見えます。レベル2の月4万〜5万円は年48万〜60万円、レベル4の月4万円は年48万円で、支出はほぼ変わりません。
変わるのは中身です。前者から返るのは期日どおりの申告書だけで、後者からは人脈を使った具体的な打ち手が返ってきます。同じ年50万円前後で、受け取る成果物の量がまるで違います。
5年続ければ、差は250万円分の機会損失に積み上がります。金額を下げる交渉より、同じ支出で何を受け取るかの見直しのほうが効き目は大きくなります。
払っているのに何もしてくれないという感覚は、この位置でいちばん濃くなります。金額と中身の落差が、そのまま不完全燃焼として残るからです。
ここで起きやすい失敗が、安いほうがよいと考えてレベル1に替える動きです。書籍は、その結果ミスが増えたと感じ、税理士なんてろくな人がいないと結論づけてしまう流れを指摘しています。
自社の顧問料が月いくらで、そのうち記帳代行がいくら、決算料がいくらかを分けて書き出してください。年1回の申告だけなら、月額換算と支援の量の釣り合いが見えます。
見直しを申し入れる時期は、契約の更新月か申告の直後です。年度の途中では、相手も金額を動かしにくいものです。
書籍は、レベル1と2が全体の6〜7割、レベル3と4が3割ぐらいという見方も示しています。普通に探すとレベル1か2に当たりやすい構造が、ここにあります。
担当税理士個人の資質を責めるより、探し方の側に偏りがあると理解したほうが実態に近いはずです。下げるか上げるかを決める前に、何にいくら払っているのかを分解してください。
| 書籍のレベル区分 | 仕事の特徴 | 月額報酬の目安(年商5,000万円規模) | 年額換算 |
|---|---|---|---|
| レベル1 | 基本的な税務処理が雑でミスが多い | 1万5千〜2万円ぐらい | 18万〜24万円 |
| レベル2 | 期日どおりの申告はするが経営に無関心 | 4万〜5万円ぐらい | 48万〜60万円 |
| レベル3 | サービス業として対等な目線で相談に乗る | 2万円ぐらい | 24万円 |
| レベル4 | 自分の人脈を使って悩みの解決に動く | 4万円ぐらい | 48万円 |
| レベル5 | 事業計画と現場の行動を連動させる | 最低でも10万円ぐらい | 120万円〜 |
提案がないと感じる背景には、自社の年商規模という別の事情もある
4つ目は提案の有無です。書籍には、税理士が何も提案してくれないという相談は多いが、どんな提案が欲しいのかを聞くと言葉を返せなくなる社長も多い、という記述があります。
年商1,000万円から2,000万円の規模なら、提案を待つより売上を上げるほうが優先順位は高い、というのが書籍の見方です。この規模では担当者による差が出にくいとも書かれています。
他方で年商5,000万円ほどになり、情報を開示したうえで相談が明確になっているのに反応が薄いなら、話は変わります。
書籍は、この規模なら、今これをやっておいたほうがよい、今すぐ必要でなくても先々のために融資を受けておいたほうがよい、といった提案をもらえる相手を選ぶべきだと述べています。
提案が出てこない背景には、この職業の成り立ちもあります。書籍は、変化が苦手であるからこそ安定した資格を活かした仕事に就こうとしている人が多い、と説明しています。
これは個人の怠慢というより、職業選択の傾向という構造の話です。責めても提案は出てきませんし、求める側が何を欲しいのかを言葉にしない限り、状況は動きません。
確かめ方は単純です。直近1年で自社から開示した情報を書き出し、それに対して返ってきた指摘を横に並べてください。
開示が薄いのに提案だけを待っていたなら、先に開示を厚くする余地があります。開示は十分なのに指摘がゼロなら、抱えている不服は税理士側の課題として整理できます。
提案という言葉は幅が広いので、欲しい中身を3つに絞ると精度が上がります。資金繰り、税負担、金融機関への見せ方のどれを求めているのかを決める作業です。
絞った3つを、期限をつけて依頼してみてください。次の月次までに翌期の資金繰り表を一緒に見てほしい、という頼み方なら、応じられるかどうかがはっきり出ます。
依頼書は1枚に収めます。目的、必要な資料、いつまでに、この3行を並べるだけで相手は動きやすくなります。口頭で伝えた要望は、たいてい翌月には流れて消えます。
この段階で消える不服は、依頼の解像度が低かっただけの部分です。消えなかった部分こそ、相手を替えて解くべき本体だと判断できます。
理由を書き出すと、相手を替えて解ける問題かどうかが見分けられる
5つ目は、替えれば解ける問題かどうかの切り分けです。ここを飛ばすと、替えたのに何も変わらなかったという結果になりやすくなります。
書籍には、税理士を変えれば売上は上がりますかという質問への答えが載っています。直接的には上がらないが、上がるきっかけになる場合はある、という答えです。
売上拡大こそ経営者の責任であり役割で、自社の客をいちばんよく知っているのは外部の専門家ではない、というのがその理由です。期待値の置きどころとして押さえておいてください。
税理士の変更によって解消される替えて解けるのは、処理の正確さ、返信の速さ、質問への答え方、金額と中身の釣り合いです。いずれも相手の仕事の進め方に属する部分です。
替えても残るのは、売上そのもの、事業の意思決定の結果、社内に記帳の担い手がいない状態です。これらは税理士が替わっても手つかずのまま残ります。
自分が抱えている理由がどちらに寄っているかを数えてください。前者が多ければ見直しは効きますし、後者が多ければ、その前に打つべき手があります。
書籍は、経営の結果責任は経営者にあり、税理士に経営の責任を問うことはできないとも述べています。もっとも、提出した申告書に明らかな計算間違いがあれば、それは税理士相手の責任です。
責任の線引きをはっきりさせておくと、面談の場でも要望を具体的に出せます。何を任せ、何を自分で持つのかが決まっていない状態が、いちばん引っかかりを長引かせます。
切り分けの理由は紙に残してください。半年後に読み返して同じ理由が残っていれば、それは一時の感情ではないという証拠になります。
替えて解ける側が3つ以上あるなら、次の段落からの対処法に進んでください。1つか2つなら、伝え方を変えるだけで収まる公算が高くなります。
理由を言葉にする作業は、次に選ぶ税理士の条件表をつくる作業でもあります。書き出した理由の裏返しが、そのまま求める中身になります。
- 替えて解ける:記帳と決算処理の正確さ、返信までの日数、質問への説明のしかた、払っている額と中身の釣り合い
- 替えても残る:売上高そのもの/事業の意思決定の結果/数字を扱える人が社内にいない状態/資料を渡す手間
タイミングは決算期・事業承継・担当者の交代という3つの節目で測る

タイミングの話に移ります。多くの社長が迷うのは、思い立った時期と、動きやすい時期がずれるからです。
実務でいちばん負担が軽いのは、決算と申告が終わった直後です。1事業年度分の資料が完結しているため、引き継ぎの範囲が前期までと当期からで自然に切れます。
3月決算なら、申告を終えた6月から7月に動くのが基本形です。期の途中で替えると、月次の資料と会計データを月単位でそろえて渡す手間が加わります。
2つ目の節目は事業承継や世代交代の時期です。書籍も、このタイミングで変更を検討するのもよいと述べています。
先代から続く税理士との付き合いは、断りにくさが理由で残っている場合があります。代が替わる時期であれば、関係を壊さずに見直しの話を切り出せます。
3つ目は担当者の交代です。書籍は、所長が昔ながらのワンマンな事務所ほど、担当スタッフがよく替わると指摘しています。
担当が替わったあと引き継ぎが行われず、同じ説明を最初からやり直す羽目になったなら、それは相性ではなく事務所側の体制の問題です。
この局面は、こちらから条件を出しやすい場面でもあります。担当を戻してほしい、体制を説明してほしいと申し入れ、その返答で判断する進め方ができます。
反対に、税務調査の通知が来ている時期や、融資の申込みが進行中のタイミングは避けてください。調査対応と融資審査は、直前までの経緯を知っている税理士のほうが早く進みます。
担当者への引っかかりが強いときほど、いますぐ動きたくなります。この2つの時期だけは、着地を見届けてから動くほうが結果として損が小さくなります。
補助金の申請中も同じ考え方です。提出済みの数字を作った相手が替わると、確認の往復が増え、手が止まる時間が延びます。
3つの節目のどれにも当てはまらない場合は、次の決算月から逆算して3か月前を目安にしてください。候補を探し、面談を重ね、引き継ぎを終えるのに、それくらいの期間が要ります。
いつ動きに変えるかは、感情の高まりではなく暦上のスケジュールをもとにの側から決めたほうが失敗しません。動く時期を先に決めると、準備の順番も自動的に決まります。
対処法は伝える・比べる・替えるの3段階に分けると失敗が減る
ここからが対処法です。いきなり替えるのではなく、伝える、比べる、替えるの順に分けると、決めるための材料がそろっていきます。
第一の対処法は伝える段階です。書籍は、経営に関する情報をすべて伝えたうえで、起こりうるリスクを指摘してもらいながら決めていくのが上手な付き合い方だと述べています。
報酬をしっかり払う、嘘をつかない、約束を守る。この3つが大前提だとも書かれています。
伝え方は具体的にします。もっと提案してほしい、ではなく、翌期に設備を1,000万円で入れたいので資金の出し方を3案で比べたい、と依頼する形です。
書籍は、何も言わなければ教えてくれないもので、頼らずして相手から協力してくれるケースはまずない、と書いています。この一手で動く税理士なら、対処法は伝える段階で完結します。
第二の対処法は比べる段階です。税理士1人だけを見て決めるのは避け、2〜3人を比べて選ぶのがよい、というのが書籍の推奨です。
比べる相手が1人もいなければ、いまの金額や対応が高いのか低いのかを測る物差しがありません。地域によっては候補の数が多くないため、安易に動かず、いまの関係を立て直す道も残ります。
第三の対処法が替える段階です。ここまでの2つを踏んでいれば、替える理由も、次に求める中身も、すでに言葉になっているはずです。
3つを順に踏むと、乗り換えそのものが目的化しません。伝えて動いた税理士なら残す、動かなければ比べる、比べて差がはっきりすれば替える、という順序です。
期間の目安も持っておいてください。伝えて反応を見るのに1か月、候補を比べるのに1か月から2か月、引き継ぎに1か月というのが標準的な組み方です。
3つの対処法を順に踏むと、早くて3か月、余裕を見て半年かかります。決算月から逆算すれば、いつ動き出せばよいかが決まります。
途中で止めてもかまいません。伝える段階で解決したなら、そこで打ち切るのがいちばん安い対処法です。この種のもやもやは、必ずしも契約の解消でしか解けないものではありません。
面談で確かめたい5つの問いと、返ってきた答えの読み取り方

比べる段階に入ったら、面談の中身を先に設計しておきます。書籍は、最初の面談では耳障りのいいことしか言わない相手もいるため、悩みを投げかけて対応を比べるよう勧めています。
1つ目の問いは、書籍が挙げている見極めの基準そのものです。新たに何々をやろうと思っているが、どう思いますか、と聞いてみてください。
無関心な返事や、説明のないまま頭ごなしに反対する返事は、レベル1・2の型として書かれています。想定されるリスクを挙げ、結論は言わずに社長の決断を優先するのがレベル3以上の型です。
2つ目は、決算書の見方についての問いです。税務署は損益計算書を見て、金融機関は貸借対照表を重視する、という違いに触れてくるかどうかを聞きます。
3つ目は担当税理士についての問いです。実際に自社を受け持つ人に、契約する前に必ず一度会わせてもらってください。所長がよい人でも、担当と合わない事態は起こります。
4つ目は時間の余裕です。人柄がよく知識があっても、多忙でレスポンスが遅ければ困ります。いま何件を受け持ち、自社に月どれだけ割けるのかを聞いておきます。
5つ目は、自社と同じ年商規模・同じ業種の関与先がどれくらいあるかです。数を尋ねるだけで、経験の厚みと、話が通じる速さの見当がつきます。
書籍は、最も重要視すべきはその人の人間性だと述べています。知識や経験は武器だが、それを上手に使う意思がなければ宝の持ち腐れになる、という言い方です。
5つの問いへの答えは、その場でメモに残してください。手元に書き出した引っかかりの項目と並べると、どこが埋まり、どこが埋まらないのかが一目で分かります。
面談の日程は、2人目以降を1週間以内にまとめてください。間が空くと印象が薄れ、比べにくくなります。
料金の説明ばかりする税理士や、いきなり契約書を出してくる相手には、書籍も注意を促しています。ビジネスの相棒ではなく財布として見られている可能性がある、という指摘です。
抱えているものを面談で全部ぶつける必要はありません。事実の側だけを2つか3つ示し、同じ場面で自分ならどう動くかを聞けば、比べる材料としては十分です。
税務調査の対応実績と書面添付制度の有無は、比較材料としてよく効く
面談の5つの問いに、もう1本足したい論点があります。いざというときに前へ出てくれる相手かどうか、です。
平時のやり取りが穏やかでも、税務調査で急に頼りなくなる相手はいます。抱えている不服の正体が、この一点への不安だった社長も少なくありません。
調査は数年に一度ですが、立ち回りの差はいちばん大きく出ます。比べる段階で必ず確認しておきたい材料です。
聞き方は数字からです。直近3年で何件立ち会ったか、どんな論点が争われ、どう着地したかを順に尋ねてください。
件数がゼロなら経験の裏づけがなく、多すぎれば1件に割ける時間が読めません。数字より、具体的に答えられるかを見ます。
次に姿勢を聞きます。指摘を受けたらすぐ修正申告に応じるのか、根拠を示して主張する場面もあるのか、という質問です。
どちらが正しいかではなく、自社の考え方と噛み合うかが判断の軸です。
もう1つの比較材料が書面添付制度です。税理士法第33条の2にもとづき、申告書の作成にあたって計算し整理した事項を記載した書面を添付する仕組みを指します。
添付された申告書について税務署が調査を行おうとする場合、事前通知の前に税理士へ意見を述べる機会を与える手続きが税理士法第35条に定められています。
国税庁も、意見聴取で疑義が解消し調査の必要がないと認められた場合には実地の調査に至らないことがあり得る、と説明しています。一定の割合で調査に至らない実績が出ている制度です。
ただし同庁は、書面添付は調査の省略を前提とした制度ではない、とも明言しています。添付すれば調査が来ないと期待するのは行き過ぎです。
普及度は高くありません。国税庁が公表した令和4事務年度の実績評価書では、書面添付割合は法人税10.0%、所得税1.5%、相続税23.4%とされています。
法人で1割前後という水準は、手間がかかるため対応しない税理士事務所が相当数あることの裏返しです。対応の可否を聞くだけで、自社の申告にどこまで責任を負う構えかが見えてきます。
属性で選ぶ危うさも押さえてください。税務署OBなら調査に強いのかは、税務署OBの税理士が本当に安全かを検証した記事で扱っています。
契約書の解約条項と引き継ぎ資料の範囲を、動く前に押さえておく

替えると決めたら、動く前にいまの契約書を出してください。書籍は、一度契約すると1年間解約できないという縛りがある例や、そもそも契約書を取り交わさない例に注意を促しています。
見るのは3か所です。契約期間と更新の条件、終わりの申し出をいつまでに出す決まりか、中途で終える場合の報酬の扱いです。
実務で揉めやすいのは3つ目です。年間報酬を12分割して毎月受け取る契約では、決算料の相当分が月額に含まれています。期の途中で解約すると、未経過分の決算料を精算で請求される展開になります。
自動更新の条項も見落とされがちです。解約の申し出を3か月前までと定めていれば、期限を1日過ぎただけで次の1年分の支払い義務が残ります。違約金という名前でなくても、支出としては同じ重さです。
契約書が手元にないなら、事務所へ写しの提供を求めてください。締結の記録が双方にない状態は、解約の交渉でこちらが不利になります。
そもそも契約書がないなら、口頭の合意がそのまま条件になります。この場合は、次の決算と申告の区切りを終わりの目安に置くと、双方が納得しやすくなります。
引き継ぎで受け取るものも先に決めます。総勘定元帳、決算書と申告書の控え、固定資産台帳、会計ソフトのデータ、各種届出の控えが基本の一式です。
クラウド会計を使っている場合は、権限の移譲が最大の関門になります。マネーフォワードやfreeeは、事業所の管理者権限を持つ側がデータの主導権を握る設計だからです。
管理者が事務所側になっていると、解約と同時に閲覧できなくなる場合があります。過去の仕訳を見られなくなれば、税務調査の対応も次の担当者への説明も滞ってしまいかねません止まります。
解約を切り出す前に、自社アカウントが管理者権限を持っているかを画面で確かめてください。持っていなければ移譲を先に依頼します。操作は数分で終わりますが、関係がこじれてからでは応じてもらいにくくなるため注意が必要でります。
銀行やカードの連携設定も、事務所の担当者が登録している場合があります。誰の権限で連携しているかを一覧にしておくと、移行後に同期が止まる事故を防げます。
紹介で始まった関係は、終わりを切り出しにくい形になりがちです。書籍も、知人の紹介では合わないと感じても解約しづらく、金融機関の紹介では融資を受けている間はまず解約できないと指摘しています。
断りの伝え方は、短く、理由を1つに絞ります。社内で経理の体制を見直すため何月の申告をもって契約を終えたい、と書面で伝えれば十分です。
積み重なった不服を並べ立てる必要はありません。関係を荒らさずに終える配慮は、引き継ぎ資料を滞りなく受け取るための実務でもあります。
伝える時期は、次の税理士が決まってからにしてください。空白の期間ができると、変更後の月次処理が滞るという実務上の支障が出ます。
順序としては、候補を決める、引き継ぎ資料の範囲を新しい相手と確認する、そのうえで現在の相手に申し出る、という流れが安全です。
受け取り漏れが出ると、あとから頼みにくくなります。渡してもらう一覧を先につくり、受領のたびに消し込む形にしておくと確実です。
- 契約書で見る3か所:期間と自動更新の有無/終わりの申し出期限/中途で終える場合の報酬の精算
- 受け取る書類:元帳、直近3期分の申告書控え、償却資産の台帳、会計データ、税務署へ出した届出の写し
- 名義と権限の確認:会計ソフトの契約者、クラウド会計の管理者権限、銀行・カードの連携登録者、電子申告の利用者識別番号の管理者
経理担当者への説明と業務のフォローは、決断と同じ日に組み立てる
ここで抜けやすいのが社内です。契約を替える決断は社長が下しますが、日々の資料を作り、質問に答え、締めを回すのは経理担当者だからです。
社長が新しい税理士に満足していても、経理が疲弊して辞めてしまえば差し引きは赤字になります。社内への伝達は、決断と同じ日に段取りを組んでください。
伝える順序は、現在の税理士へ申し出るより先です。外から先に伝わると、担当者は自分が信用されていないと受け取ります。
伝える中身は3点に絞ります。替える理由、いつ切り替わるか、日々の業務がどう変わるかです。
理由を語るときは、前任者の能力を否定する言い方を避けてください。会社の規模が変わり、求める体制が変わった、という説明で十分に通ります。
担当者が抱く不安は、たいてい具体的です。仕訳のやり方が変わるのか、過去のデータを入力し直すのか、繁忙期に二重作業が発生するのか。この3つに先に答えてください。
顔合わせは、社長を交えた挨拶の場と、実務の打ち合わせを分けます。前者は30分で足り、後者には1時間から2時間かけます。
実務の打ち合わせでは、勘定科目の使い分け、月次の締め日、資料の受け渡し方法、質問の窓口と返答の目安を、その場で紙に落とします。
自社の仕訳の癖は、担当者しか知りません。前任の事務所の指示でそうしていた処理があれば、新しい税理士に理由ごと伝えてもらってください。
最初の3か月は、社長も月次に同席する価値があります。担当者と新しい税理士の間で解釈がずれたとき、その場で決められる人がいると手戻りが減ります。
切り替え直後の1か月は、担当者の負荷が2割ほど増える前提で予定を組んでください。決算期や繁忙期に重ねると、退職の引き金になりかねません。
社内の体制まで見て初めて、見直しは完了します。伝え方と段取りを設計しないまま替えると、社長の不服が担当者の不服に置き換わるだけです。
顧問税理士への不満を抱えたまま動けない状態は、構造の側に原因がある

ここでは、不満を感じつつもなぜ多くの経営者が変更に踏み切れないのか、その背景について整理します動けない状態そのものを扱います。書籍は、レベル2の税理士と付き合う会社について、長い付き合いの事務所も多く、不満はあっても変更に踏み切れない経営者が多いのも事実だと書いています。
踏み切れない理由は3つに分けられます。長年の関係を壊したくないという気持ち、引き継ぎの手間、そして変更後の月次処理が滞るのではないかという実務上の不安です。
3つ目の不安の中身として、書籍は、税理士を変えると嫌がらせをされるのではないかと考える人がいる、と紹介しています。
そう心配する場合には粉飾や脱税を抱えている例が結構あり、秘密をばらされるのではないかと心配になるのだ、というのが書籍の説明です。やましい点がない会社でも同じ心配をする人はいる、とも書かれています。
答えははっきり示されています。適正に報酬を払い、公にできない処理をしていなければ、心配は要らないという整理です。
手間の不安は、実際の作業量を数えるのが早道です。資料の受け渡しと初回の面談を合わせて、社長側の実働は半日から1日というのが目安になります。
関係を壊したくないという気持ちは、いちばん扱いが難しい部分です。書籍のあとがきにも、長年の付き合いだからと我慢している経営者は多く、歩み寄っても関係が改善しないケースは多々あると書かれています。
我慢が悪いという話ではありません。会社の状況は変わり続けるので、その変化を踏まえて決め直す判断も経営者の役割だ、という整理のほうが現実的です。
この状態のまま数年が過ぎると、比べる相手を持たないまま金額だけが上がっていきます。動けなさは性格ではなく、比べる材料を持たない構造から来ています。
だからこそ、対処法の第二段階に置いた、比べる作業に意味があります。比べた結果いまの税理士が良いと分かれば、それも立派な結論です。
放置した年数と、動いたあとの負担は比例しません。3年抱えても10年抱えても、引き継ぐ資料の量が増えるだけで、手順そのものは変わらないからです。
動くタイミングを決められないときは、期限を1つ置いてください。次の決算までに比べる相手を2人つくる、という約束で前へ進みます。
適正に報酬を支払っていて、公にできないようなことをしていなければ、税理士を変えたからといって嫌がらせを心配する必要は特にないでしょう。
対処法を実行したあとに、最初の3か月で見ておきたい確認項目
替えたあとの3か月は、再選定が適正だったかを測る期間です。ここを放置すると、同じ引っかかりを数年後にもう一度抱える羽目になります。
初回の月次で見るのは2点です。質問への返信が何日で来るか、その返信に理由の説明がついているかどうかです。
2か月目は、こちらから聞いていない論点について指摘が来るかを見ます。前期の決算書を読んだうえでの指摘が1つでもあれば、数字を読んでいる税理士だと分かります。
3か月目は、次の決算に向けた段取りの提示があるかを見ます。いつまでに何を渡せばよいかの一覧が出てくるなら、進め方は整っています。
期待値の調整もここで行います。売上が直接上がるわけではない点は、最初に確かめたとおりです。変わるのは、決められる速さと、決めたあとの落ち着きです。
こうした見直しは、探し物を明確にするところで大半が決まります。書籍も、探し物が明確でないと見つからないと述べています。
どの経路から候補を集めるかで、出会える層は変わります。知人、金融機関、商工会議所、ネットやダイレクトメール、友人という5つの経路には、それぞれ別の落とし穴があります。
経路ごとの向き不向きは、税理士の探し方を経路別に整理した記事にまとめています。比べる相手を2〜3人そろえる前に目を通しておくと、選ぶ軸がぶれません。
3か月の確認を終えて、4つの項目のうち3つが満たされていれば、再選定は成功しています。満たされないなら、面談で聞いた内容と実際の対応がずれています。
ずれていた場合の対処法は、最初と同じです。事実の側を書き出し、期限をつけて伝え、それでも動かなければ比べ直す。この順序は何度でも使えます。
次に見直す時期も、いまのうちに決めておいてください。年商が1段上がったとき、事業を1つ増やしたとき、代が替わるときが、付き合い方を点検する自然な節目です。
顧問税理士への不満は、悪者を見つけるための感覚ではありません。会社の段階が変わったと教えてくれる合図として扱えば、対処法はいつでも組み直せます。
顧問契約の見直しに使う、現状の課題チェックリスト(まとめ)
最後に、ここまでの内容を自己点検の形にまとめます。上から順に読み、当てはまる項目に印をつけてください。
事実の確認側から始めます。直近1年で、返信に3日以上かかった質問が3件以上あったか。決算の資料依頼が締切の3週間前を切ってから届いたか。担当者が2年以内に替わり、引き継ぎの説明がなかったか。
次に数字です。期末の通帳残高と普通預金の残高は一致しているか。内訳の説明がつかない仮受金や仮払金が残っていないか。回収の見込みがない売掛金を2期以上そのままにしていないか。社長への貸付金について、残すリスクの説明を受けたことがあるか。
金額の項目に進みます。自社の顧問料が月いくらで、そのうち記帳代行と決算料がそれぞれいくらかを、いま即答できるか。年額に直した支出に対して、返ってきた成果物を3つ挙げられるか。
提案の有無も点検します。直近1年で、こちらが聞いていない論点について指摘を受けたか。その指摘は資金繰り、税負担、金融機関への見せ方のいずれかに触れていたか。そもそも、欲しい提案の中身を言葉にして渡したか。
いざというときの備えも入れます。税務調査の立会い経験を具体的に聞いたことがあるか。書面添付制度に対応しているかを確認したか。
体制面の側も見ます。契約書の現物が手元にあるか。解約の申し出期限と中途解約時の精算の定めを読んだか。クラウド会計の管理者権限が自社アカウントにあるか。銀行やカードの連携を誰が登録しているか把握しているか。
最後に社内です。経理担当者に切り替えの段取りを説明できる状態か。切り替え時期が決算期や繁忙期と重なっていないか。
印が3つ以下なら、いまの税理士との関係は伝える段階で立て直せます。4つから8つなら、比べる段階まで進めてください。9つ以上なら、替える前提で暦から逆算する局面です。
印の数そのものより、どの領域に偏っているかを見てください。数字の項目に集中していれば処理の精度、提案の項目に集中していれば関与の姿勢が課題です。
点検は毎期の申告後に繰り返します。印の数が年々増えているなら、会社の段階と付き合い方のずれが開いている合図として読み取れます。
- 事実:返信の遅れ/資料依頼の遅さ/担当交代と引き継ぎの有無
- 数字:通帳と普通預金の一致/仮受金・仮払金の内訳/滞留した売掛金/社長への貸付金の説明
- 金額:顧問料の内訳を即答できるか/年額に対して挙げられる成果物の数
- 提案:聞いていない論点への指摘/資金繰り・税負担・金融機関への見せ方への言及/要望を渡したか
- 備え:税務調査の立会い経験/書面添付制度への対応可否
- 体制:契約書の現物/解約期限と精算条項/クラウド会計の管理者権限/連携の登録者
- 社内:経理担当者への説明の準備/切り替え時期と繁忙期の重なり
税理士コンシェルジュ事務局からのコメント
顧問税理士への不満は、相手の能力の話として語られがちですが、実際には会社の規模が変わったのに付き合い方だけが据え置かれている、という場面が多く見られます。1,600名の経営者との面談でも、通帳と決算の数字を突き合わせるところまで進むと、話が一気に具体的になります。紙とペンを用意して、事実の側だけを並べるところから始めてみてください。