扶養控除等申告書とは?事業主が知っておくべき基礎知識と注意点!
「扶養控除等申告書」は、年末調整時に労働者が提出する書類のひとつです。令和2年分から様式の一部が変更されますので、間違いのないように従業員に記入してもらわなければいけません。この記事では、扶養控除等申告書の概要と書き方、注意すべきポイントなどについて解説していきます。
目次
扶養控除申告書とは?
扶養控除申告書は、年末調整の際に必要となる書類のひとつです。正式な名称は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」といいます。給与所得者は、扶養控除申告書を提出することで、扶養している配偶者が家族がいることを勤務先に申告することになり、控除を受けることが可能となります。
提出する人は?
扶養控除申告書を勤務先に提出する人は、会社員や公務員などが一般的ですが、パートやアルバイトなどの非正規従業員も提出することができます。事業主は労働者に今年と翌年分の2枚を渡し、両方の書類を記載して提出してもらいます。
提出期限はいつまで?
扶養控除申告書の提出期限は、継続して働いているなら年末調整のときに、また、新しい勤務先に就職したなら最初の給与が支払われる前までに提出するよう求められています。
なお、年度の途中で申告内容に変更が生じた場合は、異動として申告書に追記をしなければいけません。追記が必要となるのは、以下のケースに該当する場合です。
・転職により、主たる給与の支払者が変更となった場合
・出産や介護により、扶養親族が増えた場合
・結婚や就職により、扶養親族の要件から外れた家族がでた場合
扶養控除の対象範囲について
扶養控除の対象範囲は、配偶者と扶養親族と決められています。扶養控除の対象となる人は、その年の12月31日時点で以下の要件を満たしている必要があります。
配偶者の場合
・民法の規定に基づく婚姻関係にあること。
・納税者と同一生計であること。
・給与所得者の年間所得の見積額が900万円以下であること。
・配偶者の年間所得の見積額が95万円以下であること。
・青色申告者の事業専従者(家族従業員)として一度も給与の支払いを受けていない、もしくは白色申告者の事業専従者でないこと。
扶養親族の場合
・配偶者以外の親族(6親等内の血族もしくは3親等内の姻族)であること。または都道府県知事から養育を委託された児童(里子)や市町村から用語を委託された老人であること。
・納税者と同一生計であること。
・年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
・青色申告者の事業専従者(家族従業員)として一度も給与の支払いを受けていない、もしくは白色申告者の事業専従者でないこと。
・年齢が16歳以上であること。
扶養控除申告書の書き方について
提出された書類に間違いがないかを確認するためにも、担当者は扶養控除等申告書の書き方についてしっかり理解しておく必要があります。扶養控除申告書は、年末調整を受ける全員が記載する欄と、扶養家族の情報を内訳別に記載する欄の大きく2つの分野で構成されています。
なお、扶養家族の年齢記入欄は、提出する年の1年後の年末時点での年齢を記載します。例えば、2021年12月に提出する場合は、2022年12月31日時点の年齢を記入します。
【全員が記入する欄】
扶養控除申告書は、勤務先で年末調整をする際に必要となる書類です。ですから、独身の方でも記入して提出しなければいけません。用紙最上部のブロックが、すべての人が記入する項目です。
そこには自分自身の氏名、個人番号、住所、生年月日、世帯主の氏名、あなたとの続柄、配偶者の有無などを記載し、シャチハタではない印鑑で押印します。扶養対象者の配偶者や親族がいない場合は、これで完成です。
【本人・扶養親族の情報を内訳別に記入する欄】
次のA~Dの4つの区分の中から、該当する扶養家族の情報を記入してもらいます。
A:源泉控除対象配偶者
源泉控除対象配偶者の条件は、給与所得者と一緒に生計をしている配偶者で、所得の見積額が95万円(給与所得者だけの場合は収入合計金額が150万円)でなければいけません。
これに該当する場合は、この欄に氏名、年収、同居の有無、住所を記入します。ただし、年収が150万円以上の場合は、「配偶者控除等申告書」に記載する必要があるので、この欄を記入する必要はありません。
B:控除対象扶養親族
控除対象扶養親族は、上記の扶養控除対象範囲でみた条件にすべて該当する人が記入します。控除対象扶養親族が70歳以上の場合、「老人扶養親族」に該当しますので、同居している場合は「同居老親等」、老人ホームなどに入居している場合は、「その他」にチェックします。
また、19~23歳未満の子どもは特定扶養親族に該当するので「特定扶養親族」にチェックしましょう。留学など国外で別居している扶養親族がいる場合は、「非居住者欄」に〇を付け、合計送金額、親族関係書類、送金関係書類などを添付する必要があります。
16歳未満の扶養親族がいる場合は、申告書の下部に別途記載欄が設けられていますので、1人ずつ分けて記載します。
C:障害者、寡婦、寡夫または勤労学生
「障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生」欄は、障害者控除、寡婦控除(寡夫控除)、勤労学生控除を受けたい人が、必要事項を記載する欄です。扶養親族だけでなく、提出者本人が該当する場合も記入する必要があります。
・障害者控除の対象と記入する際に注意したいこと
提出者本人や同一生計配偶者、扶養親族等が所得税法上の障害者に該当する場合、該当者と障害の区分、つまり等級を記入する必要があります。障害者控除は、扶養控除が適用対象外の16歳未満の扶養親族も適用対象となります。障害の重度によって、記入すべき欄が違いますので注意してください。
また、重度の精神障害や知的障害、身体障害者があると判定された「特別障害者」の場合は、障害者手帳の種類や障害の等級などを「左記の内容」という欄に記入します。
・寡婦や寡夫の場合
寡婦の場合、所得者本人が、2020年中の所得の見込みが48万円以下の扶養親族、もしくは同居の子どもがいることに加え、夫と死別した後婚姻していない人、夫と離婚した後婚姻していない人、夫の生死が明らかでない人、のいずれかに該当していなければいけません。
寡夫の場合は、所得社本人が、2020年中の所得の見込みが48万円以下の同居の子どもがいて、本人の2020年中の所得の見積額が500万円以下であることが要件となっています。それに加え、妻と死別した後婚姻していない人、妻と離婚した後婚姻していない人、妻の生死が明らかでない人、のいずれかに該当している必要があります。
・勤労学生の場合
所得本人が大学、高等学校、専修学校などの各種学校に通う学生、もしくは職業訓練法人の行う認定職業訓練を受けている訓練生に該当する場合、記入する必要があります。勤労学生である条件は、2020年中の所得の見積額が75万円以下で、給与所得等以外の所得が10万円以下であること、となっています。
・D:他の所得者が控除を受ける扶養親族等
同居している家族に2人以上の所得者がいる場合は、1人しか扶養控除を受けることができません。例えば、共働きをしている夫婦の場合、扶養している子どもの情報は、どちらかの扶養控除申告書の「控除対象扶養親族」」として記入する必要があります。
そして、扶養しない親の扶養控除申告書の「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」の欄に、対象となっている子どもの名前と、扶養控除を受ける配偶者の名前などを記入します。
扶養控除等申告書を提出しなかったら?
もしも扶養控除等申告書を提出しないとどうなるのでしょうか?労働者が提出しない場合は、年末調整をすることができません。ですから、提出しなかった労働者は自分で確定申告をすることになります。
扶養控除申告書は年末調整に欠かすことができない大切な書類のひとつですので、事業者側は、提出期限までに必ず扶養控除等申告書を提出するよう伝えましょう。
2020年以降の申告書は「見積額」の計算に要注意!
2020年1月から源泉所得税が改正されます。これにより、給与所得控除が10万円引き下がるため、扶養親族の合計所得金額も変わってきます。扶養控除申告書の扶養親族の「所得の見積額」を記入する欄は、2020年中の年収から給与所得控除を引いた金額を記載します。
計算間違いが発生しやすいので、扶養親族の年収を把握したり、扶養親族の条件を改めて確認されておくことをおすすめします。また、申告書には、扶養親族の年収から給与所得控除になる55万円を差し引いた金額を記載してください。
これらの注意点を踏まえ、従業員側は訂正や追記がないよう早目に提出するように心がけ、事業者側は従業員に早めに提出してもらうようにしましょう。
まとめ
年末調整の際に労働者から提出してもらう「扶養控除等申告書」には、多くの記入欄があることに加え、年齢やその人の状況などに応じて区分が異なります。
また、扶養控除には、所得制限の要件があります。そのため、記入漏れや書き間違いなどもみられるのも事実です。ですから、書類を渡すときに記載ミスをしないよう指導することができるでしょう。
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