2021年度の確定申告も期限延長!~LINEで申告相談する方法
目次
コロナ禍における確定申告は、二年連続の期限延長へ
「確定申告といえば年度末に行うもの」というイメージをお持ちの方が多いと思います。しかし、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、4月17日(金)以降も申告が可能となり、大きなインパクトを与えました。
2021年の確定申告の期間は、2021年2月16日(火)から3月15日(月)までとされていました。しかし、2021年1月25日の衆院予算委員会では、確定申告の期限延長検討をしているとの発言がありました。新型コロナウイルス感染予防にあたり、いわゆる「三密」を避けるためです。
そして、2021年2月2日、政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、確定申告期間を延長すると発表しました。2020年に続き2021年の確定申告も期限が延長され、2年連続の期限延長となります。これは初めてのことです。
期限は4月15日までとされているので、首都圏を中心に緊急事態宣言の延長も発表されるなか、この報道に安心したという方も少なくないでしょう。また、昨年に引き続き、一層のオンラインでの申請が推奨されているので、オンライン申請を利用していない方は、これを機に利用を検討してみてもよいでしょう。
昨年は、数度に渡り期限延長がされましたが、今年どのようになるかは不明瞭です。まずは最新情報をチェックし、期限ギリギリになって慌てないように準備を進めることが大切です。
コロナ禍においては、確定申告に関する様々なことの変更が行われています。例えば、税理士会等で行われていた確定申告の無料相談会は中止となっているところもあります。
また、国税庁としても確定申告会場への来場者の削減・分散を図るために、一部の税務署で確定申告の受付を日曜日も行うこととする、来庁時の事前予約を呼びかける等、様々な取組みがなされています。
確定申告会場の混雑を避けるため、会場の設営は工夫されています。また、申告者に対しては、入所時には検温やマスクの着用や手指消毒等を求めることとしています。
参考:国税庁ホームページ
令和2年分確定申告における感染症対策について
国税庁LINEアカウントの使い方
特に画期的と思われるのは、2020年12月15日に国税庁のLINE公式アカウントが開設され、確定申告会場に入場するための入場整理券を事前発行ができるようになったことです。LINEでの予約取得は、メッセージ欄から希望の税務署の場所や日時を選択して手続きを行います。
日曜日の開庁が数日実施されますが、週末等は予約が集中する可能性もあるため、早めにチェックしてみることをお薦めします。
具体的な国税庁LINEアカウントの使い方ですが、最も多く使われているのは申告相談の申込みではないでしょうか。ここで、具体的に使い方をご紹介します。
まず、LINEで国税庁と友だちになることから始めます。ホーム画面から、検索ウィンドに「国税庁」と入力するとアイコンが表示されるのでタップし友だち登録をしましょう。
すると、国税庁からメッセージが届きます。そのメッセージ内には【令和2年分確定申告】とし、「申告書を作る」「チャットボットに聞く」「動画で見る」「電話で聞く」「相談を申し込む」という選択肢が示されます。
「相談を申し込む」をを選択すると、具体的な相談日時や場所を選ぶことができます。
まずは、希望する相談場所を選ぶことになります。地域を選ぶと、税務署や合同庁舎等が示されるので、希望する会場を選びます。
会場を選ぶと、その会場で選択できる日時がカレンダー状に示されます。時間帯は細かく区切られており、あと何人その時間帯で受け付けることができるかも示されます。
確定申告の会場では、来庁者へのマスクの着用依頼や検温等、感染症対策については行われていますが、例えば、混雑を避け気にするのであれば人数の枠を参考にすることも選択肢の1つでしょう。
申し込みが完了すると、その旨を知らせるメッセージが国税庁から届きます。日付、会場、時間の枠、申込み番号が記されていて、このメッセージが示された画面を見せることが、会場への入場の必須事項として案内されています。
したがって、スマートフォンやタブレット等、普段のLINE利用時に用いているものを忘れずに持っていくようにしましょう。また、指定された時間に遅れた場合は、入場できない場合があるので注意が必要です。
続けて、会場場所の案内地図や、来場前の確認事項が記されたURLが載ったメッセージが送信されます。事前に、きちんと確認し、求められている対応をしっかりしてから会場に向かいましょう。
なお、日時や場所の変更も可能です。その場合、LINE上で申込みをキャンセルし、新たに希望する日時と場所を申し込むことになります。
確定申告は、申告用紙は税務署に行けば入手できますし、オンラインでの申請が推奨されています。しかし、それでも確定申告について、不安があったり、相談しながら作成したいというニーズは高いままです。
こうしたニーズに応えるため、従来の来庁の後、整理番号を受け取り、建物の中にあるベンチ等で長時間待つといったかたちから、事前予約制にし、混雑を避けるようにしたという国税庁の対応は、申告者側にとっても非常にありがたいことといえます。
感染症拡大予防の意図から設けられた仕組みといえますが、感染が収束した後も、混雑対策やスムーズな対応のために続けられるかもしれません。確定申告の新たなスタイルとして、定着すると助かると思う人も多いでしょう。
なお、申告相談は1人につき1枠申し込む必要があります。例えば、夫婦で申告する場合は、それぞれが1枠ずつ申し込むことになります。また、新型コロナウイルス対策や、その他災害の発生等、やむを得ず申告会場が一時閉鎖された場合、申込みは無効となり再度の申込みが必要となります。
その他、LINEでは、所得税に関する確定申告の情報を得られたり、チャットによる税務相談等もできるので、色々と有効活用できそうです。
このような情報は、国税庁のホームページにアップされていますので、事前に参考にしてから会場に行きましょう。
参考:国税庁ホームページ 申告相談の申込をオンライン(LINE)で行った方へ
参考:国税庁ホームページ 令和2年分確定申告特集
今年ならではの確定申告の疑問「マスクは、医療費控除になる?」
また、確定申告で医療費控除を行う場合も少なくありませんが、コロナ禍ならではの疑問として「マスクの購入費は、医療費控除になるのだろうか?」というものがあります。
2020年春先に顕著だったマスクの入手難は記憶に新しく、その後の新型コロナウイルスの感染拡大予防に備えるためにも大量にマスクを購入した人は少なくありません。
また、人が多い場所や対面して会話する場合、公共施設や電車等を利用する場合等にはマスク着用が望ましいとされていることもあり、マスクにかかる費用は小さくありません。「これは医療費控除の対象になるのでは?」という疑問が浮かぶのも無理はありません。
この件に関しては、国税庁が「医療費控除の対象となる医療費には該当しないため、医療費控除の対象にはならない」と回答をしています。
参考:国税庁ホームページ
国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ(
問12)(pdf)
また、「特別定額給付金は、確定申告しなくてはならないのか」「特別定額給付金を加えると扶養控除の枠を超えてしまうのだが」といった疑問もよく目にするものです。
この点については、新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律第4条により、非課税と定められています。
マスクやPCR検査、オンライン診療等、また、各種給付金等が税務上の取扱いではどうなるのか、という疑問は、コロナ禍ならではといえます。上記のマスクや特別定額給付金のように一律で取扱いが定められているものもあれば、場合分けをして定められているものもあります。
申告の準備を進める際には、国税庁の発表を参照したり、顧問税理士に相談する等、最新の情報を得るようにすることをお薦めします。
「脱はんこ」に象徴される、確定申告のデジタル化加速
また、特徴的なこととして考えられるのは、デジタル化の加速や、不況や先行きへの不安も影響してのことか投資や副業による確定申告の増加です。
参考記事:配当金は確定申告をすべき?納め過ぎた税金を取り戻す3つの方法
参考記事:副業の雑所得はどこまでが必要経費?雑所得の経費の範囲と確定申告書の書き方
特に「脱はんこ」というトピックが大きな話題となっていますが、確定申告においても例外ではなさそうです。
たしかに「確定申告で押印を忘れてしまったが、どうしたらよいのか」「確定申告で用いるはんこは、実印でなくてはいけないのか」といった疑問は、年度末の風物詩のように話題となります。忙しい年度末に、こうしたことが発生しないというだけでも、実務担当の方にとっては助かる変化になるといえるでしょう。
「脱はんこ」は、あくまで一例であり、確定申告では様々な準備が必要です。そして、それが負担増となっています。オンライン化により、確定申告をする側も、行政側も負担が軽減されるのであれば、歓迎される流れではあります。
確定申告会場の混雑回避―2021年も一層デジタル化の推進?
2020年の確定申告では、申告期限を1か月延長した後、さらに期限を設けずに再延長されました。東日本大震災の後に、被災者等に限り延長されたことはありますが、一律に延長となったことは前例がなく、極めて珍しい措置でした。
また、現在、国税庁のホームページでは、「税務署の執務状況について」というコンテンツを設け、随時更新されています。ここでは、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、一時的に閉所している税務署や、執務停止後再開している税務署について等が、一覧となって公開されています。随時更新されているため、税務署に足を運ぶ際には事前に確認するとよいでしょう。
参考:国税庁ホームページ 税務署の執務状況(新型コロナウイルス感染症関連)(pdf)
混雑緩和が感染拡大を防ぐ対策の一つですから、毎年の税務署の混雑を思い浮かべれば、この対応も納得できるものといえるでしょう。また、こうした措置は続くと予想されるので、オンラインでの確定申告が一層推進されるでしょう。例えば、近年ではスマートフォンを利用した申告が呼びかけられています。
しかし、どうしても税務署に行かなくてはならない場合もあるでしょう。そのような場合は、事前に上記のような情報を国税庁のホームページ等で確認してから足を運ぶようにすることをお薦めします。
また、転居や海外在住の場合等、確定申告の場所を確認する必要があるときも、予め調べておくとスムーズに進めることができます。
参考記事:確定申告の場所ってどこ?住所変更・海外居住期間中など確定申告場所の基礎知識
次の確定申告の時期は、通常からすると2021年の2月16日~3月15日となりますが、こちらについてもどのように定められるか注視していきたいところです。
特に、次の確定申告では青色申告特別控除額と基礎控除額に変更が生じます。青色申告特別控除については、従来の要件に加え電子申告が追加要件として加えられる等、事前準備がいつも以上に求められることとなるでしょう(従来の要件でも青色申告特別控除は受けられますが、追加要件を満たすとさらに控除額が増えます)。
「確定申告とは何なのか」を理解し、負担を軽くする
ところで、そもそも確定申告とは何なのでしょうか?
確定申告とは、「1月1日から12月31日までの1年間の所得にかかる税金を自分で計算、申告、納税する手続」のことです。
所得にかかる税金は、所得税及び復興特別所得税と呼ばれています。そして、今年は期限が延長されましたが、通常は2月16日から3月15日の間に、国へ申告します。これが、確定申告です。
なお、収入と所得は勘違いされやすいですが、給与や売上は収入、収入から必要経費を除いたものが所得です。サラリーマン等の場合は給与所得控除が必要経費に該当すると考えて問題ないでしょう。
例年の確定申告では、この期限に間に合わせるために年度末は多くの企業や個人事業主の方が負担感を覚えているものです。しかし、事前に確定申告で必要なことや、確定申告において定められていることを把握しておけば、負担はぐっと軽減されるものです。
以下で、具体的にみていきましょう。
確定申告が必要な人
確定申告は、どのような形であれ所得を得ているすべての人が該当者になります。ただし、サラリーマンや公務員等の給与所得者の場合、会社の経理担当者が年末調整をすることで確定申告も行われるため、個人で行う必要はありません。
大きく分けると、以下のような場合は確定申告が必要になります。
①事業所得があった人→確定申告が必要
法人組織に属していない自営業者やフリーランス等の個人事業者の場合、仕事をすることで事業所得を得ています。したがって、確定申告をする必要があります。基礎控除や医療費控除等の控除額を差し引いた所得額が、納税の対象となります。
②公的年金を受けている人→確定申告が必要
公的年金を受けている人も、確定申告をする必要があります。受給額から生命保険や扶養等の所得を控除した額が、所得とみなされます。
③不動産収入や株取引等の所得がある人→確定申告が必要
不動産の譲渡や家賃収入、株取引き等での利益等による収入を得た場合、源泉徴収されていないなら所得が課税の対象になり、確定申告が必要となります。ただし、株式による所得は、「株式譲渡益課税制度」が適用されます。
④山林所得や、副業による一定の所得がある人は、確定申告が必要
山林所得があった人や、副業による雑所得を得た人も確定申告をする必要があります(所得額によっては必要のない場合もあります)。
③せどりや、フリーマーケット等での所得がある人→金額によっては、確定申告が必要
副業というと就業時間外で行うアルバイト等がイメージされますが、最近増えてきているのが「せどり」です。もともと「せどり」とは古本の転売により利益を得ることを指す言葉でしたが、いまは書籍に限らず、さまざまな物の転売が行われています。
また、シェアリングエコノミーによる所得にも注目が集まっています。シェアリングエコノミーとは、その人の所有するものや場所技術といった資産を多くの人と共有したり交換したりすることによる経済活動のことです。インターネットやアプリを通じて、空き部屋や使っていない車等をレンタルするサービスは、インバウンド需要の高まりにおいても注目されました。
例えば、家事や育児の代行等も技術を用いて行う経済活動といえるでしょう。有名なのは、自分の空き部屋や、空き家を貸すことで収入を得るAirbnb(エアビーアンドビー)が有名です。
また、昨今非常に利用者も提供者も増えているUber Eats(ウーバーイーツ)も同様のサービスといえるでしょう。お店としては配達用のスタッフは外注し、配達する人は好きな時間に好きな場所で配達の仕事ができるというメリットが、このサービスを拡大してきたといえます。そして、もちろん注文する人にとっては、好きな場所で注文し受け取ることができることが最大のメリットです。
こうした「自分の都合のよいときに労働をし、収入を得る」という新しい仕事のかたちによる収入においても「申告しなくてはならない」という意識が希薄になり、結果申告漏れに繋がっています。
例えば、シェアリングエコノミーで収入を得た人が正しく申告しているかどうかを調べた調査が話題となっています(2021年2月)。国税庁の調査により、合計約174億円の申告漏れが明らかになった、というものです。
従来の「副業」という言葉からイメージされる「朝から夕方までは会社勤めをし、夕方から夜は飲食店等でアルバイトをする」といった副業のイメージを持っている人は少なくありません。そして、シェアリングエコノミーで得た収入を確定申告することを忘れてしまう人や、確定申告しなくても問題ないと思い込んでいる人が多いというのが、この調査結果の背景といえるでしょう。
2020年春に起きた、マスクや消毒液の転売行為が話題となり悪い印象も持たれている一方、手軽に副収入を得られるということで、せどりやネットオークション等を始める人は増えています。手軽さゆえに確定申告の必要性が意識されづらい副業ですが、こうしたやり取りで得た収入も金額によっては確定申告が必要となるので注意が必要です。
申告漏れの傾向としては、特にフリーマーケット等を含む通販サイト上の収入が申告漏れの規模として大きいようです。国税庁としては、申告が必要な収入かどうか判断がつかない場合は、問合せをしてほしいとのことです。
折しも、LINEで確定申告の予約ができるようになっている等、国税庁のサービスのオンライン化が大きく進化を見せているところです。このような疑問を持った際にも、国税庁の展開しているチャットサービスに相談する等、疑問を抱えたまま申告漏れとなってしまうことのないように、問合せをしてみることをお薦めします。
また、こうしたインターネットを用いたビジネスでのやり取りや、それに伴う会計処理を得意としている税理士もいます。副業の規模によっては、一度相談してみるというのも選択肢の一つです。
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参考記事:副業も確定申告は必要?副業確定申告の方法について詳しく解説!
参考記事:【完全マニュアル】せどり確定申告の流れから必要書類まで徹底網羅
給与所得者でも確定申告が必要なケース
上記で触れたようにサラリーマン等給与所得者の多くは、確定申告をする必要はありません。しかし、大まかに挙げると以下のような場合は確定申告が必要です。
・複数の会社から給与を得ている場合
・年間の収入額が2,000万円以上の場合
・給与以外に20万円以上の副収入がある場合
・源泉徴収されていない外国企業から退職金を受け取った場合
・退職をして再就職をしておらず年末調整をしていない場合
このような場合、確定申告が必要となるので注意しましょう。
参考:国税庁ホームページ 給与所得者で確定申告が必要な人
とかく「サラリーマンは確定申告しなくてよい」と言われがちであり、実際に多くのサラリーマンは確定申告は不要です。しかし、最近は、勤めながら副業もしている場合や、「サラリーマン大家さん」という言葉があるように、不動産投資をしている人も増えています。
また、ふるさと納税もワンストップ特例が設けられていますが、1年間で6自治体以上にふるさと納税をした場合等、例外もあります。収入や納税スタイルが多様になっている現在、「自分は確定申告はしなくてよい」と思い込まず、改めて確認してみるとよいでしょう。
特に、今年は新型コロナウイルスや大型災害の被害を受けた様々な地域がふるさと納税による支援を呼びかけており、注目が集まっています。これを機にふるさと納税を行う場合、その後の手続のことまで考えて行うことが大切です。
確定申告をせずとも、ワンストップ特例を利用すれば年末調整で済ませられますが、寄付先の数や特例の対象となっているかについて確認が必要です。また、医療費や保険料等、別の理由で確定申告が必要な場合、ワンストップ特例の申請は無効になります。
寄附金受領証明書を寄付先ごとに交付してもらう必要がありますし(通常は寄付した先の自治体から送付されてきます)、いざ確定申告となったときに慌てずに済むように留意しておきましょう。
参考記事:確定申告が必要なサラリーマンとはどんな人?申告すると税金が戻るかも?!
参考記事:ふるさと納税で税金対策!そのしくみや確定申告の方法を分かりやすく解説
また、ケガ等で入院や治療をした場合、医療費が10万円以上であれば、確定申告をすることで医療費控除の対象になります。
なお、ここ数年、各地で台風や水害の被害が多く発生していますが、このように災害により被った損失を所得控除として一定額控除することもできます。
ただし、こうした控除を受けるためには、領収書や各種証明書が必要になるため、準備期間も必要です。日ごろから気にかけておくとよいでしょう。
参考:国税庁ホームページ 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)
参考記事:確定申告で所得に適用される控除とは?
確定申告の必要がないケース
収入があったとしても、確定申告を必要としないケースもあります。代表的な例として次のようなケースが挙げられます。
①会社が年末調整を行っている場合→確定申告の必要なし
サラリーマンや公務員等の給与所得者の場合、会社側が年末調整を行っているため、個人で確定申告をする必要はありません。
②所得が38万円以下の場合→確定申告の必要なし
確定申告には医療や保険等さまざまな控除項目がありますが、基本的な控除である「基礎控除」という項目があります。
基礎控除は、1年の合計所得から一律で差し引かれる控除額で、その額は38万円です。つまり、所得が38万円以下の人の場合は、この基礎控除を差し引くと0円になるので、確定申告をする必要はありません。
ただし、所得が38万円以下の人で源泉徴収を差し引かれる仕事をしている場合は、確定申告をすることで差し引かれた源泉徴収分を取り戻すことができます。
③副収入が20万円以下の人→確定申告の必要なし
サラリーマン等の給与所得者だとしても副業をして副収入を得ている場合は、確定申告をする必要がありますが、副収入の合計金額が年間20万円以下の場合は確定申告をする必要はありません。
④公的年金400万円以下で源泉徴収を受けている人→確定申告の必要なし
公的年金受給者は確定申告をすることが求められていますが、公的年金が源泉徴収を受けています。そのため、年額が400万円以下であるなら確定申告をする必要はありません。
確定申告をすることが、得になる場合
確定申告をする必要がない場合でも、確定申告をすることが得になることはあります。例えば、払いすぎた税金が戻ってきたり、税額が下がることにより負担が軽減されたりします。確定申告にかかる手間を考えてもなお、得られるメリットとしては小さいものではありません。確認しておいたほうがよいでしょう。
①勤務先が複数ある人→確定申告すると得
複数の勤務先から給与を得ている場合、それぞれの勤務先から源泉徴収されている可能性があり、税金を多く払っている可能性があります。確定申告をすることで、払い過ぎた税金が還付されることがあります。
②医療費が10万円以上だった人→確定申告すると得
医療費が年間10万円を超えると医療費控除が適用されるので、課税額が下がります。ただし、医療費控除自体は10万円以下でも可能なので、有利な選択となるよう確認することをお薦めします。
参考記事:【10万円以下も可】医療費控除のポイント
③住宅ローン控除を初めて受ける人→確定申告すると得
サラリーマンや公務員等の給与所得者でも、確定申告の際に住宅ローン控除を受けることで課税額が下がります。2年目以降は、会社の年末調整で行うことができます。
④年末調整を受けていない人→確定申告すると得
中途退職をし、新しい会社に就職せずに無職でいる場合やアルバイトをしている場合は、年末調整が行われていません。確定申告をすることで、税金が還付される場合があります。
⑤災害や盗難等の被害を受けた人→確定申告すると得
災害や盗難等、何かの被害を受けて損害を被った場合は、雑損控除の対象になります。課税額が下がる可能性があります。
⑥寄付をした人→確定申告すると得をする
寄付やふるさと納税等を行った場合は、雑損控除の対象となり、課税額が下がる可能性があります。
確定申告の方法と、それぞれのメリット・デメリット
確定申告は、以下の3つの方法から選べます。いずれもメリットとデメリットがあるので、ご自身に合った方法を選ぶとよいでしょう。
①手書きでの確定申告
手書きで確定申告書を作成する場合、まず申告の際の住所地を所轄する税務署で確定申告書をもらうか、国税庁のホームページから「確定申告書」をダウンロードします。確定申告書を手元に用意できたら、記入していきます。
手書きのメリットは、自宅や事務所で各種必要書類を広げてじっくりと取り組めることです。漫然と納税を済ませるのではなく、金銭の流れを掴めます。また、マイナンバーカードも不要です(マイナンバーは通知カードや住民票で把握できるので、それを記入すれば問題ありません)。
ただしデメリットとして、記入の手間や郵送あるいは持参しなくてはならないことがあります。感染症の流行時や、被災地等ではまさにこの点が問題になることは、広く知られるところとなりました。
②e-Taxでの確定申告
e-Taxは国税庁による、電子申告サービスです。画面の案内に沿って項目を埋めていくだけで、書類を作成できます。2019年からはパソコンだけでなくスマートフォンでも利用可能になりました。
メリットとしては、何といっても手軽であることです。画面の案内にしたがって入力していけば、申告書が完成します。また、税務署に出向かずとも、パソコンやスマートフォンを用いれば申告可能なので負担が大幅に軽減されます。
デメリットとしては、マイナンバーカード等の電子証明書及びICカードリーダーの準備が必要であることです(税務署の確定申告作成コーナーで入力すれば、カードリーダーは不要です)。また、スマートフォンの利用では還付や収入の内容によっては、対象外になっているので、事前に確認することが必要です。
なお、マイナンバーカードと通知カードは混同されがちですが、通知カードはマイナンバーを通知するために発送されるもので、マイナンバーカードの交付を受けるためのものです。
マイナンバーを把握するためには通知カードのみでも問題ありませんが、あくまで通知のためのものであり顔写真もないため、証明書としての機能は持ちません。一方、マイナンバーカードは顔写真とICチップがついており、これにより電子申告が可能になります。
また、2020年5月にマイナンバー通知カードは廃止されました。最近では、給付金申請にマイナンバーカードが用いられること等を背景として交付申請が増えていますが、発行には一定の時間がかかるので留意が必要です。
参考記事:e-tax申告】e-taxでスマホ確定申告も簡単に!申告の手順を解説
③確定申告ソフトでの確定申告
確定申告ソフトは、市販もされています。画面に沿って情報を入力していくだけでソフトが自動計算をし、書類を作成してくれます。
メリットとしては、税務署に行ったりカードリーダー等がなくても、書類を作成できることです。また、ソフトに記録を重ねていくことで、長いスパンでの金銭管理ができるので、経営情報の一つとしてとても参考になるでしょう。
デメリットとしては、ソフトの導入や使いこなせるようになるための負担がかかることです。金銭的にも時間的にもかかるので、ある程度余裕があるときに導入するとよいでしょう。
確定申告の期間
確定申告は1月1日から12月31日までに1年間を計算期間とします。必要な書類をそろえて、翌年の2月15日から3月15日までに提出と納税をする必要があります。
なお、冒頭で挙げたように、2020年は申告期限が延長されました。2021年の期間はどのように設けられるのか注視する必要があります。
個人事業主が、確定申告の手続を簡単に行う方法
ここまで見てきたように、サラリーマン等の給与所得者にとって確定申告は「原則不要だが、場合によっては必要」というものです。しかし、個人事業主の方にとって、確定申告は必須です。
日々の業務に加え、確定申告の準備を進めることは個人事業主の方にとっては毎年頭を悩ませる大きな負担となっているのではないでしょうか。そこで、個人事業主の方にとって、確定申告の負担が軽くなる方法を挙げます。
①会計ソフトを利用して確定申告をする
会計ソフトを利用すると、確定申告の手間は減ります。ソフトの指示に従って項目を入力し、項目を仕分けるだけで確定申告の用紙を完成させることができます。多くのソフト・サービスがありますが、例えばレシートをスマートフォンで撮影するだけで、データを取り込むことも可能なものもあります。
参考記事:「mf(マネーフォワード)クラウド経費」が選ばれている理由と6つのメリット
確定申告はもちろん、毎月の収支や支出を見直せるのも便利です。日頃からソフトを用いて金銭の流れを把握することは、経営にとってもプラスに働きます。確定申告の手間を軽減するのみならず、その他のメリットも大きいので導入の検討をお薦めします。
②確定申告に備え、経費をクレジットカード払いにする
経費をクレジットカード払いにすると、履歴の管理がしやすくなります。会計ソフトと併用し、クレジットカードの履歴をそのまま連携することも可能なので、確定申告の負担軽減になります。
従業員の数によっては難しいかもしれませんが、小規模である場合や、ある決まった分野の経費のみをクレジットカード払いにするという方法もあります。
個人事業主が確定申告で節税する方法
個人事業主の方は、課税される所得の金額を少なくすることが節税につながります。
経費の合計額や控除は、売上総額から差し引かれます。売上総額が小さくなればなるほど課税される金額は下がります。例えば、家賃や光熱費等を経費に計上することで、売上から家事按分として一部を差し引くことで節税になります。
節税するポイントとしては、事業に関わりのある経費を必ず計上することと、控除を上手に活用することです。確定申告を機会に、節税できないか改めて検討するとよいでしょう。事業の内容にもよりますが、日頃の管理が節税につながることもあるので、検討してみましょう。
なお、いわゆる「経費で落とす」ということについて、何が「経費」に含まれるのかは、細かい定めがあります。ときどき著名人の脱税がニュースになることがありますが、「事業に関係のない出費を経費に含んでいた」という場合が少なくありません。
典型的なものは、個人的な旅行や事業と関係のない美容等にかかった出費を経費に計上していた、という方法です。現在(2020年10月)、米国のトランプ大統領の脱税疑惑が話題となっていますが、まさにこの手法ではないかという報道がされています(不動産や美容費の経費化等)。国内でも、芸能人や有名な経営者等の脱税において、この方法が度々報じられています。
たしかに、節税は経営において欠かせない視点ではあります。しかし、一歩間違えると「脱税」になり、大きなペナルティを受ける可能性もあります。延滞税、追徴金といった金銭的なものもあれば、レピュテーションリスクのような信用に関わるようなものもあります。税理士等、プロの力を借りることもお薦めします。
参考:国税庁ホームページ やさしい必要経費の知識
参考記事:経費とは?経営者であれば知っておくべき経費と税金の深い関係
まとめ
確定申告は、期限、作成方法、提出方法が定められています。そして、確定申告が必要か否か、また、確定申告をしたほうがよいか、しなくてもよいのかは自分自身で判断するしかありません。「あなたは確定申告が必要です。この日までに申告してください」等いったお知らせは来ないのです。
そして、提出方法には選択肢がありますし、事前に揃えておかなくてはならない資料もあります。予めチェックしておくとよいでしょう。
特に近年では、スマートフォンでの確定申告という選択肢に注目が集まっています。これまでは、対象となる所得控除に限りがある等の不便な点も多かったのですが、利用対象者もかなり広げられています。国税庁のホームページには、利用方法の解説動画等もあり、かなり力が入れられているようです。
ただし、この場合でも事前準備は必須です。例えば、2020年の春には、オンライン申請の需要増に伴いカードリーダーが入手困難になったこともありました。どんな方法を選択するにせよ、時間に余裕を持って、準備を進めておいたほうがよいことは間違いありません。
参照:国税庁ホームページ「スマートフォンでの申告が更に便利に!」
参考記事:【最新版】確定申告で必要な書類一覧まとめ
年に一度のこととなると、期限ギリギリまで放置してしまいがちですが、選択によっては手続がスムーズになりますし、還付金や節税等のメリットを得られる場合もあります。また、必要資料の洩れや、申請ミス等の予防にもなるでしょう。
特に2020年同様、2021年の申告期限や申告方法は例年と異なる可能性もありますし、何より次回の確定申告では、青色申告特別控除と基礎控除の金額に変更があります。青色申告特別控除に関しては申告の要件を満たすか否かで金額も変わってくるので、注意が必要です。
参考:国税庁ホームページ 青色申告特別控除額・基礎控除額が変わります!!(pdf)
時間に余裕のあるときに、確定申告について改めて見直し、準備を進めておくことをお薦めします。
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