個人事業主が税理士に依頼するタイミングと値段
個人事業主として仕事を進めていくと、ある段階で「税理士に仕事を依頼したほうがよいのだろうか?」という考えが、頭をよぎるのではないでしょうか。
それは例えば、創業時かもしれませんし、申告が近づいてきたときかもしれません。或いは、業務が拡大していくにつれ、会計業務が複雑化するなかで感じることもあるでしょう。
しかし、税理士に仕事を依頼するということは、コストが発生するということです。経営者の方であれば、具体的な費用が気にかかるのは無理もありませんし、仕事を依頼するのであれば大きな効果を得たいと考えるのも当然のことです。
したがって、税理士を仕事を依頼するにあたっての適切なタイミングと相場観をつかめれば、判断もしやすいのではないでしょうか。
ここでは「税理士に依頼するタイミング」と、税理士に依頼した場合の「価格」について取り上げていきます。つまり「何を依頼すると、いくらかかるのか」という相場観です。
目次
個人事業主が税理士に依頼するタイミングは、いつ?
まず、税理士に仕事を依頼するタイミングについてですが、比較的事業規模が小さい場合は、税理士に依頼するべきタイミングは売上高と納税額を判断基準とします。
「事業がどのレベルにあるのか」から、「税理士に依頼したほうがよいのか、その必要はないのか」を図ることをお薦めします。具体的には以下の2つのタイミングになります。
1、売上高が1,000万円を超えたとき
売上が1,000万円を超えると、既定の時期から消費税の課税事業者として扱われます。すると、途端に経理業務が煩雑なものになります。
関連する法律も多いので、多大な労力を払って自力でやろうとするよりも税理士に任せたほうが無難です。売上が1,000万円を超えたときは、税理士に依頼する適切なタイミングといえるでしょう。
2、課税所得が600万円を超えたとき
このレベルに達すると、法人化したほうが税率で優位になる等、個人事業というスタイルを見直す転機になります。会社の税務となると専門的な知識が欠かせなくなるので、税理士に依頼する時期に到達したといえるでしょう。
ただし、税務処理についてさほど負担と感じない状態ならば、税理士はまだ必要ではないかもしれません。また、国税庁では記帳指導の機会を設けています。こうしたサービスを利用して、検討してみるのもよいでしょう。
参照:国税庁ホームページ 記帳の仕方がわからない方へ
一方、税額の負担が増え、青色申告の特典に魅力を感じるようになったら、税理士に税務を依頼するタイミングだといえるでしょう。青色申告にあたっては、本格的な会計業務の履行が求められるからです。
税理士に仕事を依頼すれば、税務会計業務を税理士に任せることができるので労力は軽くなりますが、コストがかかります。「税務会計は、必ず税理士が行わなければいけない」というわけではありません。まずは事業がどの段階なのかを把握し、税理士に依頼するべきかを検討しましょう。
個人事業主は税理士に会社設立手続を依頼すべき?
上記のように、事業が軌道に乗るよりも前に、税理士に仕事を依頼するタイミングもあります。それは、会社設立時です。
会社設立にあたっては、様々な手続が必要になりますが、これら「法人設立業務」を請け負っている税理士もいます。
設立時の各種登記や許認可、また、設立後の決算実務や税務申告等を業務内容とし、法人設立の手助けをするというものです。
たしかに法人設立業務には専門知識が必要ですし、複数の省庁をまたいだ申請等もあることから労力もかかります。設立後に税務会計もアウトソーシングすることを見据え、会社設立時から税理士に仕事を依頼する個人事業主の方もいます。
ただし「会社設立代行0円」等と謳い文句を挙げ、顧問業務までをセットにした契約を結ばせようとする税理士もいるので注意が必要です。もちろん、顧問業務もしっかりと行える税理士なら問題はありませんが「会社設立代行の経験は豊富でも、顧問税理士としては頼りない」という税理士がいることも事実です。
税理士に会社設立代行を依頼する際には、契約内容をよく確認しましょう。また、設立後に顧問契約を結ぶ契約内容になっている場合は、顧問業務においても有能な税理士に仕事を依頼するとよいでしょう。
個人事業主が税理士に依頼する場合、費用の相場は?
1、顧問契約の場合の相場観
では、税理士に仕事を依頼した場合、かかる費用はどれくらいなのでしょうか。また、どのように値段はつけられているのでしょうか。
一般に、依頼する業務の量と質によって値段は変わります。例えば、継続的に帳簿のチェックを依頼するために顧問契約を結ぶとします。帳簿のチェックの際に、税理士に来てもらうのか、自分が税理士事務所に行くのか。この違いも値段に影響します。
また、地域によっても値段は違います。過当競争が激しい地域であれば、かなり低額で業務を引き受ける税理士や、一風変わった価格設定をしている税理士もいるでしょう。一方、昔からある税理士事務所が多い地域であれば、極端な価格設定はしていないかもしれません。
したがって、税理士費用は一概にはいえないものではありますが、目安として以下のような設定が一般的です。
・顧問料として毎月1万円前後
・会計ソフトへの入力を代行してもらうならばプラス1万円前後
・確定申告時の代行料として約10万円前後
これらを合計すると、年間で30万円前後です。相場観の1つとして参考にしてみてください。
2、税理士費用を下げる方法もあるが、注意も必要
相場観としては上記のとおりですが、「申告だけ依頼する」といったスポット依頼をすることもできますし、「月次報告の回数を減らしてもらう」「自計化する」等、税理士に依頼する仕事の頻度や量を下げることにより、費用を調整することも可能です。
また、「格安」を看板に掲げ、低価格でサービスを提供している税理士もいます。税理士に仕事を依頼したいが価格面で折り合いがつかない、という場合の選択肢としては一考に値するでしょう。
ただし、価格を下げる場合には、それ相応のデメリットもあります。「安かろう悪かろう」という場合もありますし、自社のニーズと税理士のサービスのミスマッチもあります。
こうしたことを避けるため、税理士紹介サービスを利用するという方法もあります。税理士紹介サービスは、第三者的な立場から税理士を紹介するので「自社に税理士が必要な状態か」や「必要な場合、どのような税理士が適しているか」についてフラットにアドバイスをします。
また、税理士紹介サービスの利用により自社のニーズが明確になり、より適切な税理士に巡り会えるかもしれません。税理士が必要なタイミングが訪れた際、自力でネット検索等で探すよりも労力をかけずに、有能な税理士に巡り会えるでしょう。
参考記事:税理士費用の金額を下げる3つの方法
税理士に依頼するメリット
税理士費用を支払うということは、事業で利益が出ていることが前提となります。つまり、「利益と納税額と税理士費用」を天秤にかけることになります。
もちろん費用対効果で考えることになるわけですが、この「効果」には「税務を請け負ってもらう以外のメリット」も含めて検討することをお薦めします。
例えば、税理士は、複数の会社を顧問先に持っています。自社と同業種の顧問先を持っているのであれば、業界の動向も教えてもらえるでしょう。また優秀な税理士であれば、ただ税務を行うだけではなく経営へのアドバイスも期待できます。
事業が拡大して人を雇ったとしても、一人で事業を続けていくとしても、経営者とは孤独なものです。経営について悩みを相談したり、信頼できる税理士がいれば、どんなに不安が軽減されることでしょう。
もちろん、税理士は経営に直接関わるわけではありませんが、効果的な節税対策や冷静な提言で力になってくれます。
税理士に依頼するか否かを検討するときに、値段はもちろんのこと、こうしたメリットも検討材料の1つとしてみてはいかがでしょうか。
株式会社タックスコム:代表取締役
会計の実務経験を活かし、これまで1000名以上の税理士と面談を行い、相談実績は1万件を超える。2017年に執筆した書籍「税理士に顧問料を払う本当の理由」は、出版から半年にわたりAmazonカテゴリ「税理士」で1位を獲得。2021年に実施した日本コンシューマーリサーチの調査では、税理士紹介サービスで顧客満足No.1を獲得。
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