3月決算の会社は税理士に断られることがある?
昔の名残で、決算月を3月に設定している企業は今でも多いようです。
根拠や目的があって3月決算にしているのであればよいのですが、「何となく3月決算にしている」「普通は3月決算だろう」等と曖昧な理由で設定している場合は、注意が必要です。
税理士の繁忙期と重なるため、思いもよらないリスクや、そもそも仕事の依頼を税理士から断られてしまうこともあります。
目次
3月決算は税理士の繁忙期に重なり、不利益を被ることもある
税理士業界は、過当競争といわれています。そんな状況で仕事を断るというのは、よほどのことです。また、仕事を引き受けてもらったとしても、通常時とは異なるリスクも存在します。これらには、以下のような理由があります。
1、税理士事務所のマンパワーにも限界がある
3~5月は、税理士の繁忙期です。確定申告業務に追われるのと、3月決算の会社が多いためです。
まだ開業間もない税理士なら、どんな依頼にも積極的に対応していくでしょうが、すでに一定の顧問先を抱えている税理士の場合、3月決算の会社であるということで仕事を引き受けることを敬遠することもあります。
現実問題として、引き受けられる仕事量には限界があります。無闇に引き受けた結果、思わぬミスが生じる可能性も高くなります。責任も持てないのに、安易に仕事を引き受ける税理士よりも、むしろ誠実であるかもしれません。
どの時期に入金が多いのか、いつなら支払い少ないのか等、資金繰りのタイミングから決算期を決めた結果、どうしても3月にせざるを得ない、ということであれば他の税理士を探すしかありません。
しかし、「何となく」3月決算にしているのであれば、決算期について再考するよい機会かもしれません。税理士に仕事を頼みたいと思ったのに、3月決算を理由に依頼を断られたのならば、「決算期をずらせば引き受けてもらえるのか」ということを考えてもよいでしょう。
2、税理士が多忙なため、業務が疎かになる可能性がある
税理士は顧問先の不安や疑問に寄り添うことが求められるものですが、繁忙期には顧問先への対応に細やかさが欠けてしまうこともあります。
例えば、レスポンスがいつもより遅くなったり、質問への答えがいつもより粗くなったりする可能性があります。
会社としては、日頃の税務会計に加え、経営にプラスに働くような節税対策を税理しにはしてほしいところですが、それを繁忙期に求めるのは酷といえます。
また、無理やり求めても、質のよいものは出てこないかもしれません。ひどい場合には、ずさんな節税対策を税務調査で指摘され、追徴金等のペナルティを負うこともあります。
参考記事:税理士は節税提案があると同時に税務調査の対策が重要
しかし、節税対策はある程度の時間をかけて行うものです。会社としても税理士としても落ち着いた時期に取り組むことをお薦めします。
また、社内としても、何かと忙しい年度末と決算が重なっていると従業員の負担も増えますし、ミスが誘発されることもあります。大切な決算だからこそ、社内も税理士も落ち着いて取り組める時期に設定するとよいでしょう。
税理士の力を最大限活用するために、3月決算について再検討を
決算期は、後から変更することもできます。当初、あまり深く考えずに3月決算にしていたが、より適切な時期に変えたいと考えた場合、株主総会の決議により定款を変更し、届出をすれば決算期を変えられます。
参照:国税庁ホームページ 申告期限の延長の特例の申請
決算期を変えることにより、納税額や減価償却資産の償却限度額が変わる等の手間もかかるので注意が必要ですが、税理士の本来の力を活用しやすくなることは大きなメリットです。
税理士は、その仕事を通して顧問先の経営状況を冷静に見ることのできる立場です。専門家ならではの視点に立ったアドバイスが期待できますし、会社に寄り添った節税提案であれば、納税コストを下げられるという実際的なメリットを得ることもできます。
長い目で考えたときに、漠然と3月決算にしておくよりは経営にとってプラスになるともいえるでしょう。
株式会社タックスコム:代表取締役
会計の実務経験を活かし、これまで1000名以上の税理士と面談を行い、相談実績は1万件を超える。2017年に執筆した書籍「税理士に顧問料を払う本当の理由」は、出版から半年にわたりAmazonカテゴリ「税理士」で1位を獲得。2021年に実施した日本コンシューマーリサーチの調査では、税理士紹介サービスで顧客満足No.1を獲得。
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